≪短信:7.12硫化水素流出事故の情報公開顛末記 その7≫

☆“最後の悪あがき?”その1:5.27浜岡罰則会合への規制委質問

『鳴り砂№319別冊』の「顛末記その6 1.13追記」で、今年(2026年)1月5日に発覚した中部電力浜岡原発での基準地震動データ不正問題に言及しましたが、5月27日の規制委会合で、「現行の原子炉等規制法においては、設置(変更)許可等の申請書類に係る虚偽についての罰則規定は設けられていないため、設置(変更)許可等の申請書類等に係る不正行為の抑止を目的とし、申請書類等に係る虚偽に対する罰則の導入を検討する」<資料1の4~5頁>ことが表明されました。要するに、規制委・規制庁としては、「審査の目的は、申請書類等に基づき規制基準の適合性を判断することであり、仮に科学的に適切な方針・方法・条件に基づき基準地震動が策定されているような説明がなされた場合、審査で不正を発見することは技術的に困難」なので、「このような不正に対しては抑止効果を高めることが重要」<同:下線筆者>だとして、罰則導入(恫喝・威嚇)による不正抑止・規制強化を図るようです(規制庁役人のメンツ・優位性を保持するため?)。さらに、「行政処分を講じた上で、悪質性があると判断した場合に刑事告発ができるようにする」<5.28河北>とのことですので、事業者と規制委の“蜜月関係”は転換期を迎えるのかもしれません。
それを受け、筆者は6.4付で規制委に質問したところ、6.26に回答がありました。まず、現行炉規法ではやはり申請書類・内容の虚偽に対するペナルティーはなく(だから今回の罰則検討)、次に、規制委が虚偽に気付かず合格させた場合(筆者は女川2「有毒ガス防護」が該当すると考えています)、炉規法第43条の3の23第1項により「施設の使用の停止等」を命ずることができることが再確認できました。
ただ、事業者の虚偽を“第三者”が規制委に訴える制度・窓口を尋ねたところ、「申告制度」(浜岡不正で利用された内部告発制度)を紹介されましたが、同制度は従業員や協力会社作業員等の関係者だけが利用できるものです。まあ、最後の手段として、今回の紹介を口実に、無理やり「申告」してみてもいいのかもしれません。

☆“最後の悪あがき?”その2:炉規法(罰則)に関する規制委質問
7.12事故では被災者7名中2名が入院していますが、東北電力は『炉規法報告』<*:詳細は『鳴り砂№316~318別冊』の「顛末記その4~6」ご参照>をしていません。一方、規制委も、『実用炉規則第134条の解釈』の「例外規定」(2つのいずれか?)に該当するとして、東北電力の「炉規法報告なし」を擁護しています。でも、筆者は、7.12事故は「例外規定」には該当せず、『炉規法報告』をしていない東北電力は、炉規法(罰則)第78条1項26の2号「第62条の3(…)の報告をせず、又は虚偽の報告をした者」に該当すると考えています。
そのため、‘7.12事故が『炉規法報告』を要するものか否か’を詳細に解明・確認するため、3つの論点から規制委に6.19付で質問しました。
主な内容は、まず、上記炉規法(罰則)を念頭に、そもそも事業者が炉規法報告しない=事故の詳細情報が規制委の手元に届いていない状態で、どのような情報を基に「報告の要否」を規制委が判断し、「報告せず」の結論を出すのか、同じく、前稿の浜岡不正とも関係しますが、『炉規法報告』が虚偽だったとしても、どのような情報を基に事業者が「虚偽報告した」と規制委が認定するのか、ということです。
また、前稿「その1」の6.4浜岡質問と重複しますが、「報告をせず、又は虚偽の報告をした」事実を把握・認定する「正しい情報」を規制委が第三者から受け付ける(内部告発以外の)制度・窓口についても尋ねました(やはり6.26回答のとおり「申告制度」の紹介だけと予想されます)。
そして、7.12事故が具体的に『解釈』記載の2つの「例外規定」のうちどちらに該当すると規制委が認識しているのかについても質問しました(開示窓口の話では、回答を作成中とのことで、楽しみに待ちたいと思います)。
東北電力の「炉規法報告なし」を正式に問題視(罰則適用)できるか、また、それを擁護する規制委も正すことができるか、回答を待ちたいと思います。
<*『炉規法報告』:原子炉等規制法(炉規法)第62条の3で、発電用原子炉設置者は原子力規制委員会に対し「原子力施設等に関し人の障害が発生した事故(人の障害が発生するおそれのある事故を含む。)…が生じたときは、…遅滞なく、事象の状況その他の主務省令で定める事項を…報告しなければならない」とされており、実用炉規則第134条で「法第62条の3の規定により、発電用原子炉設置者…は、次の各号のいずれかに該当するときは、その旨を直ちに、その状況及びそれに対する処置を遅滞なく、原子力規制委員会に報告しなければならない」として、その第14号で「…発電用原子炉施設に関し人の障害(放射線障害以外の障害であって入院治療を必要としないものを除く。)が発生し、又は発生するおそれがあるとき」と規定されています。>

☆“最後の悪あがき?”その3:規制委への文書開示請求
東北電力から『炉規法報告』がされていなくても、7.12事故発生の連絡が規制委・規制庁になされないことはあり得ないので(2025.9.1にも一度請求しましたが、不存在・非開示)、まず‘炉規法報告ではない事故発生の連絡文書’と限定して、6.19に開示請求しました。さらに、その後いろいろ調べたところ、原子力規制検査に係る『基本検査運用ガイド 事象発生時の初動対応』(2020.4.1)に、事業者または原子力検査官が規制庁の関係部署へ事故発生の報告(第一報)を連絡する旨の記載があったので、それに該当する文書を(念のため)7.2にも請求しました。
また、5.18に請求した7.12事故の再発防止対策の実施状況を確認できる文書については、「原子力規制検査報告書」に記載されているとの連絡がありました(それを受けて請求取下げ)。そして、示された報告書を見直したところ、原子力検査官が検査のため「現状の施設の運用や保安に関する事項、保安活動の状況、リスク情報等」の事前資料を入手したり、立入検査で「活動状況を確認」することが明記されていました。また、「R5-4(令和5年度第4四半期)、R6-4報告書」には「1号機ランドリ系沈降分離槽の廃スラッジ生詰め作業」との記載が<*教示されなかった「R4-1、R4-2」にも「生詰め・充填作業」との記載あり>、「R7-1報告書」には「1号機放射性廃棄物処理系配管(ランドリドレン系)修繕工事」との記載がありました。
そこで、7.12事故後の最初の「R3-3報告書」も含め、報告書作成のため「原子力検査官が事前入手した文書や立会検査関係の文書」を7.2に請求しました。ただし、以前にも「R3-3報告書」の立会検査「確認資料」を請求しましたが、資料は全て返却して保管していない<*>とのことで不存在・非開示となり、また、同R3-3立会検査の開始前と終了後の東北電力との打合せメモ・資料も不存在・非開示でしたので、あまり期待はできません。<*「共通事項に係る検査運用ガイド」付録2の(5)注意事項において、「b. 検査官は、検査に必要なものとして事業者等から貸与を受けた資料については、当該検査が終了した時点で、原則として、事業者等に返却する。」(下線筆者)とありました。一方、「c. 検査において作成し、又は取得した行政文書は、その取扱いを特別に定めたものでない限り、文書管理規則に従って保存・管理を行う。」とあることから、検査官は敢えて東北電力から‘文書等を取得しないようにしている(チラ見するだけ)’のかもしれません。>
ただし、これまでの「規制委は保有していない=文書不存在・非開示」については“ある意味仕方なし(文書特定や請求の仕方が悪かった。財務省の「赤木文書」(国が不開示方針)とは違う?)”と諦めていましたが、今回は、存在していないと報告書が書けないと思われる文書に限定して請求したので(つもり)、不存在(保管期間切れで廃棄済みの可能性はあり)なら、何らかの形で争うことも検討したいと思います。

☆“最後の悪あがき?”その4:東北電力への公開質問(予定)
上記のとおり、規制行政を担う規制委からの情報入手をいろいろと行なってきましたが、そもそも原発の安全性は事業者に第一義的責任があり、「炉規法報告しない」との判断も東北電力の責任ですので、(規制委への間接確認だけでなく)真正面から問い質すことも必要だと思い、約2年ぶりに東北電力に直接「公開質問」することにしました(詳細は風の会ホームページをご覧下さい)。硫化水素濃度の徹底非公開など東北電力の情報隠しの姿勢は変わっていないと思いますが、7.12事故の再発防止対策の実施状況(同社ホームページでは公表なし)などは、回答せざるを得ないのではないでしょうか(回答を拒否するなら、手間ですが、立地自治体を通じて明らかにさせる必要もあり)。

以上の一連の”悪あがき”は、東北電力の7.12事故に対する虚偽説明・詭弁に基づく女川2「有毒ガス防護」申請と、それを鵜呑みにして(虚偽を見抜けず)合格させた規制委審査の“デタラメさ”を暴く、最後のチャンスだと思っています。
<2026.7.6了 仙台原子力問題研究グループI>