◇12.15公開学習会以降に分かったこと!◇<2019.1.19記>
昨年末の12.15“少数精鋭”学習会では、1号機事故初期の運転操作問題や手順書問題について“オリジナル検証の集大成”を提示したつもりですが、その後の今年1.12「もっかい事故調 オープンセミナー」用資料を準備する過程で、さらにいくつかの新発見がありましたので、本稿でそれらを「追完」したいと思います。
まず、BWR3(F1-1や敦賀1)特有の非常用復水器ICが、その後のBWR4(F1-2~5や女川1~3等)で採用されなかった(代わりに隔離時冷却系RCIC)のは、BWR3に追設された「高圧注水系HPCI」により‘安全性が向上’したとしてBWR4以降の原発が高出力化されたものの、それに見合う性能のICの冷却タンク(F1-1で100tタンク2基)は巨大化が必要で、それを原子炉建屋上層階に設置(水の重力落下を利用)すると、建屋の強度や耐震性などに大きな問題(不経済)が生じることから、小型のRCICに“代替・駆逐”されたようでした。でも、RCICはサプレッションプールに熱を「一時的に移動」させるだけで、その後のプール除熱(や格納容器ベント)が不可欠ですが、ICは熱を直接大気(最終ヒートシンク)に放出し原子炉水位も保持するという利点を有しており、最近は見直されているようです(でも、そのような“安全性が向上”した原発も、もちろん不要)。
次に、BWR4が主流となった福島第一原発では、運転員の訓練用シミュレーターもBWR4対応だったため、ICの操作訓練は全く実施されていなかったのに対し、敦賀1(2はPWR)ではICを模擬したシミュレーターによる訓練が定期的に行われていたようです<日本学術会議・分科会「事故事象の検討」p.61,2014.9.30>。
ICによる強力な冷却を恐れたような1号機運転員の手動停止に関しては、BWRでは圧力容器の急冷時は炉圧も急低下するため、急冷・高圧下で懸念される「加圧熱衝撃PTSは生じない」との見解が、同じBWRである島根2の高経年化報告にありました<中国電力「島根2 高経年化技術評価」資料1-10、2018.12.19>。情報源は平成4年の論文ですので、それを東電が把握していれば(保安規定77条3・4項で温度降下率遵守規定はスクラム時には適用外だったことも教育訓練していれば)、運転員は安心してICによる冷却を継続したのではないでしょうか。
さらに、東電は2009年新潟県に、主蒸気逃がし安全弁SRVによる急速減圧で「スクラム後1.5時間で冷温停止可能」と説明しており<新潟県・設備小委資料17-2-4、2009.3.27>、そのような緊急時対処法を十分に周知徹底・教育訓練していれば、1号機でも自動起動したICの継続作動で冷温停止させるような操作ができたはずです。
このように、調べれば調べるほど、ますます1号機での初期事故対応・運転操作の不適切性が明らかになってきており(2・3号機でも)、東電の運転操作・教育訓練・保安管理の責任を(それを容認・見逃してきた国の責任も)、キチンと問うべきだと思います。 <了>