会報「鳴り砂」2021年7月20日号が発行されました

会報「鳴り砂」2-113号(通巻292号)2021.7.20
会報「鳴り砂」2-113号(通巻292号)別冊2021.7.20

一一面論文です>

どこから見ても住民の安全確保など望めない
避難計画の下での 女川原発再稼働はあり得ない!
再度、司法の場でトコトン審理を! 

女川原発再稼働差止訴訟原告団・原伸雄

[1].何故、ふたたび、避難計画を争点に、裁判を起こしたのか!
 
 5月28日、私達石巻市民17名は東北電力を相手に、女川原発2号機の再稼働を差止めるため、仙台地裁に提訴しました。提訴後の記者会見で、小野寺信一弁護団長は「実効性のない避難計画が第三者の審議を受けないまま再稼働に突き進むのは危険。裁判所の審理を」(『河北新報』21.5.29)と今回の提訴の意義を端的に述べています。
 避難計画の実効性の有無を争点にした仮処分裁判では、仙台地裁、高裁は「住民の被害の危険は、あくまで東北電力が原発を再稼働することを直接の原因として生ずる」として我々の「知事や市長は、実効性のない避難計画の下での再稼働へ同意してはならない」との求めに対し、実効性の有無については全く審理しないまま、「棄却」の決定を下してしまいました。
 これに先立ち、原子力規制委員会は、女川原発2号炉について2020年2月26日に審査の終了を発表しましたが、そこでは深層防護第5層『避難計画』については全く審議しておりません。
またこの間、県議会はじめ立地自治体などにおいて、再稼働問題が様々な角度から長期にわたって議論されて来ましたが、避難計画自体が議題となり、その是非をめぐり集中的に審議され、採決に付されたことはありませんでした。
 行政の側では、避難計画についてその策定に中核的役割を果たして来たのが、2013年設置の女川地域原子力防災協議会(以下、防災協議会)とその作業部会です。この組織は数十回にわたり会議を重ね、2020年6月17日に計画が「合理的」「具体的」であることを「確認」して、総理大臣が議長を務める国の原子力防災会議に上げてやり、5日後の6月22日にそこで「了承」されました。この最終段階は、仮処分裁判の真最中でした。村井知事は「これで避難計画については国のお墨付きが得られた」と、秋の「再稼働同意表明」に突っ走ることとなりました。
 この避難計画策定に中核的役割を果たした防災協議会こそが「避難計画の実効性を仮装」した組織ですが、我々が公開質問状を繰り返し提出していた段階から指摘し、裁判の申立書で論証した諸問題や、その後県が実施した『避難経路阻害要因調査結果』などについても、全く審議しないままに、避難計画は「合理的」「具体的」との「確認」をしてしまっています。
 この防災協議会は、内閣府が主催する行政機関内の組織です。しかも石巻・女川始めUPZ自治体はオブザーバー扱いと言った代物です。ですから、冒頭に引用した小野寺団長の言う「第三者」では全くありません。こうしてみると、あの福島の大惨事を教訓に策定が義務づけられた避難計画は、責任ある第三者の審議を全く経ていません。
 だからこそ、小野寺団長が、改めて「裁判所の審理を」強く求めている所以です。

[2].避難計画は命を守る最後の砦!その「仮装」を暴くのは、司法の役割!

 村井知事まで「原発はゼロが望ましい」と言いながら再稼働に同意し、原子力ムラとその代弁者たちは、地球温暖化対策には原発が必要とばかりに、美浜の老朽原発の再稼働を容認し、規制委員会は島根原発の審査終了を発表し、次々と原発の再稼働を目論み、原発の新増設などまでも狙うなど、あの福島第一原発事故も、水戸地裁の「避難計画の現状では東海第2原発は稼働してはならない」との判決なども全くなかったような振る舞いです。「脱原発と脱炭素社会」の実現は、持続可能な地球のための人類史的課題です。「地球温暖化対策のためには原発が必要」論者には、「人類が到達している科学に反する」ものとして断固として退け、強く非難しなくてはなりません。そしてこうした世論の醸成へ、私たちも大いに努力しなくてはなりません。
 避難計画は、どの角度から見ても実効性が無いことは明らかです。避難計画があること自体が、避難する住民を窮地に追いやる可能性すら有り得る代物です。そのことは、『訴状』において余すところなく立証しています。
 そもそも私たちが、3年前に避難計画に疑問を抱いたきっかけは、自分たちで石巻市の示す避難計画に基づき、指定された避難路を、自分の居住地から「退域検査所」「受付ステーション」「最終避難場所」まで実際に走ってみたことから始まっています。その時の共通した感想は、「交通渋滞や駐車場の問題などで何時間かかっても最終避難所へたどり着けないのではないか」「まったくの机上プランでしかない」と言うものでした、
 以来、再三にわたり、県・市当局や防災協議会へ、時には内閣府へと質問を繰り返し、その間には、情報公開請求を60回余も行うなどしましたが、一向に実効性が確保されたとの心証も証拠も得られませんでした。一方、行政側は、再稼働に向けた手続きを着々と進めており、これを止めるには司法の力を借りる以外ないと判断し、仮処分を申し立てましたが、残念ながら、司法も全く避難計画の実効性についての審理を行わないまま、先に述べたように「訴えるべきは知事や市長ではなく、東北電力ではないか」との趣旨の決定へ逃げて、肩透かしを食らったことから、今回の東北電力を提訴することに至っています。
 それだけに、今回の訴訟での裁判所の責務は極めて大きく、正に「住民の命と健康、故郷を守る最後の砦」としての役割が課されています。
 我々が裁判所に期待するのは、『訴状』で指摘している避難計画の9つの実効性の欠如について、1つ1つ、証拠書類をも吟味して、しっかりと検討を加えることです。
 そして、この計画策定過程で、防災協議会(作業部会)が、これらについての審議を全くしないまま、「合理的」「具体的」と言って避難計画の「確認」を「仮装」した実態を認定することです。
 そのことを通じて、裁判所が、われわれと同様に、避難計画が住民の命も健康も守れない全くの「仮装」であることを看破するならば、一私企業のために多大な人員と財政を投じてこのような行政事務を行っていることへの大きな疑問を抱かざるを得なくなるでしょう。
 この間の様々な経過の中で大変心配なのは、計画策定の当事者の方々が、「UPZ20万人の一斉避難などと言う事態は起こらない」(住民説明会での内閣府職員の発言)との前提で、「新しい安全神話」の下で避難計画を作っていると言わざるを得ないことです。
 原発事故の被害の広がりは、事故の規模、その時の気象条件等により大きく左右されますが、そのことは誰であっても予測は不可能です。
 策定される避難計画は、最大限の人々の避難を可能にするものでなくてはならないことからすると、最悪の事態に備えた計画でなくてはなりませんが、少なくとも東電福一事故の規模には耐えられるものでなくてはならないことは、裁判所を始め本訴訟に関わる者のみならず、国民の共通認識ではないでしょうか。内閣府はじめ当局者たちの事故の規模の過小評価はとんでもない誤りです。

[3].「避難計画に終わりはなく、今後も見直されていくもの」との言い訳は許されない!

 避難計画についての議論で、当局が最後に行ってくるのが「訓練などを通じて見直しを図っていく」と言うものです。また、仙台高裁の仮処分決定でも、避難計画の実効性について「現状ではなお相当の課題が残されている」との認識を示しながら、「当局は今後訓練などを通じて改善を図っていく」と表明しているとして、実効性のない計画を容認してしまっています。
 一般論として、計画や事業を実行しながら見直しを図ることは必要であり有効な手法です。
 しかし、ことこの避難計画についてのこの間の我々の到達した結論として、「石巻市の避難計画は、検証以前の状態にあり、訓練などを通じて見直しても、決して住民の命と健康を守る機能は果たせるものではない」ことを、『訴状』を通じて余すところなく論証しています。
 仮処分ではそのことを「この計画は土台からの設計ミスがある」と指摘しました。そのことは検査所の設置場所や数の問題に加えて「避難受付ステーション」の設置の誤りなどに象徴的です。準PAZの避難の円滑化のためにUPZは「屋内退避」との方針も、全く非現実的です。これらのことは県が行った避難経路阻害要因調査結果でも裏付けられています。
 こうした根本的問題への指摘にメスを入れないままに、いくら「合理的」「具体的」計画と言っても、それは計画の「仮装」を糊塗することにしかならず、避難訓練以前の問題です。

[4].今度こそ、裁判所に避難計画の実態を明らかにさせるためご支援を!

 〇第一回公判については、目下、裁判所において調整中ですが、10月中・下旬が濃厚です。
 〇多くの支援者による傍聴を期待して、弁護団は一番大きな法廷を確保しました。
 原子力ムラとその代弁者たちの活動が活発化する中、また宮城では「知事が同意表明してしまったではないか」との空気が広がる中、「女川原発再稼働を許さない」闘いにとって、また秋の知事選挙、総選挙を控えて、反転攻勢から勝利に向かうための、極めて大事な裁判になっています。
 河北新報社が、先ごろ『揺れる司法』との特集を組みました。いま、沖縄の辺野古裁判で、負けはしましたが、最高裁で2対3だったことが注目されています。原発の賠償裁判でも、国や電力の責任を認める判決が主流となりつつあります。水戸地裁で原発運転差し止めの画期的判決を出した前田英子裁判官の前任地は仙台地裁だったとのことです。あの福一の原発事故の衝撃は、間違いなく裁判官の心証にも大きな影響を与えていることは確かです。
 私たちの裁判でも、道理はこちら側にあります。「風の会」のお力添えを頂いて、普及版『訴状』も出来ました。私たちは、これらを武器に石巻での8月1日の「裁判報告会」を始め、多くの皆さんのご支援を頂けるように全力で頑張ります。
 「勝つ秘訣は諦めないこと」は、沖縄の皆さんの辺野古新基地を許さない闘いの合言葉です。原発の闘いも全く同じです。ご一緒に再稼働を止めるため頑張り抜きましよう!

●女川原子力発電所運転差止請求事件 『訴状』普及版(A4判70頁)カンパ:300円
発行:女川原発再稼働差止訴訟原告団
連絡先:庄司・松浦法律事務所
TEL 0225-96-5131 FAX 0225-94-0474
E-mail saikadouno@gmail.com
※風の会でも取り扱っています。なお、風の会HPに『訴状』掲載中