(1面論文です)
10-11月 女川原発2号機再稼働に波状的な抗議行動を貫徹!
ありえない「ナットの緩み」! 発電再開してもトラブルは必至、再稼働中止・廃炉を!
10月29日夜19時、東北電力は多くの反対の声を押し切り、13年7ヶ月ぶりに原子炉を起動した。そして11月3日に発電再開するとした。しかし、その舌の根も乾かない3日夜、緊急記者会見で「原子炉停止」することを発表、翌4日朝8時36分、原子炉は再起動から5日半で停止した。
このドタバタの原因は、「中性子を計測する検出器を校正する移動式炉心内計装系の検出器(TIP)の引き抜き動作時に1台が途中で動かなくなる事象が発生した」ことによる。その原因について東北電力は11日、機器を原子炉内に送り込む「案内管」のナットの締め付け不足により、ナットが緩んで原子炉格納容器内の案内管が外れたためだと発表した。
被災や老朽化、あるいは13年ものブランクによるものではないかと考えていた我々にとっては、「そんな初歩的なミスとは!?」と驚き、他にも原因があるのではないかと疑ったほどだった。いつもは東北電力の肩を持つ村井知事でさえ、「非常に遺憾。凡ミスで見過ごせない」と苦言を呈し厳重注意を発したほどだ。
もし東北電力の説明通りだとすれば、協力会社も含めいかに技能が低下しているかを如実に示すものだ。「ナットの緩みや配管接続の不具合が、他でも起きる可能性を問われた遠藤原子力設備課長は『水や油、気体など厳格な密閉性が求められる配管は手順が細かく定められ、厳密に管理されている。今回のようなことは起きない』と否定した」(11.12「河北」)とのことだが、今回の当該TIPの作業手順に締め付け方法や緩みの対策について明記されていなかったように、いわゆる「安全系」以外の作業の点検をすべてカバーするのは現実には不可能であり、「起きない」と断言できないのではないか。また、作業ミス以前に、そもそも緩みが生じてしまう設計に問題があるのではないか。
東北電力はHPで「長期の停止期間を経て状態が変化する設備があること、また、新たに設置した設備があることから、様々な警報や不具合等が発生する可能性があります」として様々な想定をしていたが、今回のトラブルは「想定外」だった。
にもかかわらず、「229ヶ所のナットの点検が終了した」として11月13日9時に再起動に踏み切った。11日の段階では再起動は「未定」としていたにもかかわらず、このだまし討ち的なやり方に、市民の怒りが爆発した(後述)。その後15日には発電再開を強行した。
「12月の営業運転再開には変更がない」としているが、原子炉起動が10月29日から11月13日まで2週間も遅れているにもかかわらず変更がないとすれば、どこかの工程を端折るのか? いずれにしても今後もトラブルは必至だ。
女川―仙台を貫く圧倒的な抗議の声
10月29日の原子炉起動に対しては、女川-仙台を貫いて、多数の住民・市民が結集して抗議の声を上げた。
女川では、女川町民や石巻市民、さらには県内各地や福島から参加した35名が、女川原発ゲート前で抗議の申入れ行動を行った。が、ゲートを閉じ警備会社の警備員を配置するものものしい体制での東北電力の対応に対し、その場で「申入書」を読み上げ再稼働を中止するよう声を上げた(申入れ書は別稿)。その後小屋取浜に移動して、原発に向けて抗議のシュプレヒコールを上げた。
仙台の東北電力本店前では、午前10時から有志の呼びかけでスタンディングを行った。横断幕やプラカードを掲げ、マイクを握り、口々に「再稼働をやめて」と訴えた。
そして16時から抗議の申し入れを行った。緊急の呼びかけにもかかわらず50名もの市民が集まった。再稼働にあたって本店1階ロビーが市民で一杯になる事態は前代未聞で、驚いた電力側は、マスコミに取材しないよう要請し、これに抗議する市民と押し問答になった。読み上げた抗議文を受け取った担当者は、「電力の安定的確保とカーボンニュートラルに貢献していく」というのが精一杯で、女川原発をなんとしても止めたい!という市民の切実な思いに完全に圧倒され、混乱した姿を露呈した。
雨の中400名が東北電力本店前を怒りの行進
11月2日には「動かすな!女川原発11.2全国集会」が、仙台市花京院緑地公園で開催され(主催:さようなら原発みやぎ実行委員会 協賛:さようなら原発1000万人アクション)、400名もの市民が集まった。10月29日原子炉起動に対し、怒りを胸に、今後の再稼働プロセスをなんとしても止めたいとの思いで、初冬の寒空の雨の中、多くの市民が集会開始後も続々と集まり、最後は公園が傘で一杯になるほどだった。(当日の動画はこちら http://www.youtube.com/watch?v=wyAmhDrHhJ8)
司会から、「今日の集会には福島の生業訴訟の方が20名、また山形からも参加されています。北海道からはアピールを頂いています」と紹介があった。
初めに篠原さんが主催者挨拶に立つ。「女川原発の再稼働には多くの問題点があります。圧力容器設計技術者の田中三彦さんも、BWRは圧力容器と格納容器のフランジ部(胴体分と蓋を結合する部分)が近すぎるという構造的な欠陥を持っており、福島原発事故ではそのフランジ部から大量の放射能と水素が噴出したという可能性を指摘しています。」
続いて、福島から駆けつけてくれた武藤類子さんだ(発言全文は別稿)。「私は今年帰還困難区域に入りました。13年前には確かにここには人がいて、暮らしがあった。でも、今はだあれもいない。止まった時の上に、何かがしんしんと降り積もっていました。圧倒的力のためには多少の犠牲はためらわない、という犠牲と差別の思想が、脈々と息づいています。今、地球に生きるすべての命と、未来に生きる命のために、すべての原発を止め、地球の破壊と汚染を少しでも食い止めなければなりません」。語りかけるように訴える武藤さんの声に会場は聞き耳をたて、その静かだけれども重く力強い言葉に心を揺さぶられる。
次に、青森から中道雅史さん(核燃料廃棄物搬入阻止実行委員会事務局長)が発言に立つ。「米軍と自衛隊の軍事施設、大間原発、むつ中間貯蔵施設、東通原発、核燃サイクル施設といった核施設がひしめき合う下北半島は、災害や戦争で過酷を極めることは目に見えています。六ヶ所再処理工場は27回目の完工延期のアナウンスが9月末になされましたが、絶対に動かせてはなりません。むつ中間貯蔵施設に、9月26日柏崎刈羽原発から使用済核燃料搬入が強行されましたが、新潟県-首都圏-フクシマ-青森が連携して闘いを繰り広げました。」
続いて県内外からのリレースピーチだ。まずは岩手から、赤間妃史(ひふみ)さん(さようなら原発岩手県集会実行委員会)。「岩手では9月に女川原発反対集会を開きまして、みんなで盛岡の街なかを行進し、東北電力に反対の声を訴えました。3.11には子供に何を食べさせていいのか分からない日々が続きました。東北の豊かな地というものが奪われた悲しい事故でした。同じ過ちを繰り返してはなりません。」
女川からは阿部美紀子さん(女川から未来を考える会)。「29日、私たちは原発のゲート前で申入れ書を読み上げ抗議しました。原発ゲート前のそばに32年前父たちが建てた看板があります。その看板に書かれているのは『事故で止まるか みんなで止めるか』です。皆さん、みんなの力で原発を止めましょう。」
次に、斎藤みや子さん(女川原発再稼働差止訴訟原告団)。「福島の事故を女川で繰り返させたくない思いで、避難計画の中身に絞って絞って、裁判を起こしております。11月27日午後2時半に仙台高裁で判決が出されます。お時間を取って駆けつけていただければ幸いです。」
続いて議員の発言だ。まずはひぐちのりこさん(女川原発再稼働ストップ! みやぎ女性議員有志の会・仙台市議会議員)。多くの「女性議員の会」のみなさんも登壇しての発言だ。「みやぎ女性議員有志の会は2020年9月28日から活動しております。今回新しく議員になった仲間も含めて67名の賛同を得ています。11月15日には東北電力に要請行動をいたします。」
次に、ゆさみゆきさん(脱原発をめざす宮城県議の会・宮城県議会議員)。「女性の発言が続きますが、女性の力が社会を変える原動力です。脱原発県議の会は9月六ヶ所村を視察いたしました。原発を動かしたゴミ(放射性廃棄物)をどうするんでしょうか。ドイツではメルケル首相が倫理で原発を止めていますが、そうした国の方向性を私たち市民の力で作っていこう。」
次に、予定にはなかったが、参議院議員岩渕友さんから発言を受ける。「私は福島市に住んでいるのですが、もういてもたってもいられずに駆けつけてまいりました。この2月に東日本大震災復興特別委員会の調査で石巻市の前網に行ってアルプス処理水の影響について漁業者からお話を聞いた際、帰り際に、この地域は原発に向かって避難をしていくことになるんだっていう怒りの訴えを頂いた。この反対の声にも関わらず再稼働を強行させることなど絶対に許されない。」
集会の最後に、「私たちはふるさと宮城の美しい海と大地を守っていくために、粘り強い運動をさらに強めていくことを決意し、ここに宣言します。」との集会宣言を採択し、これを抗議声明として東北電力へ叩きつけていくことを参加者で確認し、アピール行進に移る。
今回は東北電力本店前を通るルートだったが、いざ本店前では車止めによるバリケードが張られ、多数の警備員で警備する、ものものしい状態となっていた。この姿こそ、市民の声を聞こうとしない東北電力の姿勢を象徴するものだ。私たちは整然と抗議の声を上げ、そして市民の共感を得ながら、再稼働反対の声を仙台市目抜き通りで力強く訴え抜いた。
11.5-11.13 波状的に本店抗議行動 再稼働を止める闘いはさらに続く
11月5日、2日の集会で採択された集会宣言を市民の総意として、再び東北電力本店へ抗議の申入れ行動を行った。トラブルの末の原子炉停止直後になったため、「やっぱり何があるか分からない」と思いを募らせた市民が、緊急にもかかわらず、なんと60名集まっての行動となった。東北電力は10.29の抗議行動で懲りたのか、マスコミの取材を了解しつつも、指定した部屋で受け取るとして、人数を制限してきた。代表7名が抗議声明と今回のトラブルに対する質問書を提出した。
さらに11月13日には、11日にトラブルの原因を発表した際「再起動は未定」としながら、抜き打ち的に再起動が強行されたことに対する緊急行動が呼びかけられ、3たび本店に50名以上が集まり、「ナットの緩みは、原子力安全規制の緩み、管理体制の緩みそのものではないのか!」とする抗議声明を手渡した。
いずれの抗議行動でも、本店前で参加者全員でシュプレヒコールをあげ、度重なる抗議を無視して再稼働を強行する東北電力に、怒りをぶつけた。
一連の行動の前には、市民が、10月18日に宮城県、さらに25日には東北電力と交渉した。特に25日の東北電力との交渉では、次のような回答があった(詳しくは風の会HP参照)。
・フィルター付格納容器ベントについて、「(メルトダウンなどの過酷事故時での動作確認を行っているかという質問に対し)原理的にそのような状況を模して実験はできないと思いますので、性能機能が設計書通り設置されているのか、しっかり機能として有効にでるのかどうかを使用前の事業者検査で行い、検査結果を国の使用前確認で確認頂いている。」
・乾式貯蔵施設に関して、「質問などがあれば、個々に勉強会をします。大規模な住民説明会は、現在、当社では計画していない。」
フィルターベントが本当に過酷事故時に機能するのか? 乾式貯蔵施設に関しなぜ住民説明を行わないのか? 29mの防潮堤の安全性は? についてなど、まだまだ疑問が残っている。今後も追及しなければならない。
このように、まさに、「交渉」「抗議行動」「集会-アピール行進」さらに「議会での活動」と、重層的・波状的に再稼働に対する闘いを展開してきたこの間の闘いだが、13年ぶり、しかも被災した原発である女川原発がトラブルを起こすのは、まさに予想通りだ。「TIP」の問題の他にも、「9.13非常用ガス処理系の計画外の作動」(今年2回目)や、「9.19原子炉建屋における水の漏えい」(制御棒駆動水圧系の軸封部から水が漏えい)などのトラブルが続出している(詳しくは別稿「技術会報告」参照)。
今後さらに放射能を排出するような大きなトラブルになる前に、再稼働を中止し、廃炉に向かうべきだ。今後も即応体制を維持し、訴え続けよう。(11.15記 舘脇)