会報「鳴り砂」2025年1月20日号
会報「鳴り砂」2025年1月20日号別冊
(1面論文です)
女川原発2号機の営業運転開始に抗議する!
女川に核のゴミを留め置く「乾式貯蔵計画」を止め、一刻もはやく原発のない女川・宮城を!
昨年12月26日、東北電力はHPで「女川原子力発電所2号機について、本日16時00分に営業運転を再開しました」と発表した。2号機は2010年11月6日から定期点検に入っており、実に14年超のブランクをへて本格運転に入った。私たちは、多くの県内外の反対・疑問を押し切って運転を強行した東北電力に抗議すると共に、これまで私たちが訴えてきた安全上の問題点、避難計画の不備、さらに核のゴミの問題がますます切実な課題として迫り来ることを踏まえ、原発のない女川・宮城の実現に向けて奮闘していかなければならない。
●営業運転開始への抗議行動を果敢に貫徹
営業運転開始の12月26日16時のまさにその時刻に、東北電力本店前で30名もの市民がスタンディングで抗議の意志を示した。10月29日の原子炉起動以降、何度も立ち続けた場所だ。「福島はまだまだ事故の傷跡がたくさん残っています。なぜこんな被害をもたらすような原発を稼働させるのですか! 責任がとれるのですか」「自然エネルギーに大きく舵を切って、みんなが安心できるようにしてください」と代わる代わる声を上げ、シュプレヒコールを叩きつける。
さらに17時からは元鍛冶丁公園で集会を開催。みやぎアクション世話人の多々良さん、女川原発再稼働差止訴訟原告団事務局長の日野さんから発言をうけ、前日の25日に不当判決が下された大崎の放射性廃棄物焼却差し止め裁判について傍聴した立石さんから報告を受ける。その後、師走の仙台の街で抗議の声を上げた。緊急の呼びかけにもかかわらず60名が参加し、怒りを胸に2024年最後のデモを貫徹した。
●11・27女川原発再稼働差止裁判の不当判決に抗議する!
これに先立つ11月27日、女川原発再稼働差止訴訟の控訴審で、仙台高裁は、1審に続いて、住民側の訴えを退ける判決を言い渡した。これに対し、原告団・弁護団は声明を発表した(詳しくは別稿)。「避難計画について、全く踏み込まなかった一審判決とは異なり、避難計画の内容に踏み込んだ点は評価できる」としつつも、「深層防護は独立して考えるべきものにもかかわらず、複数の防護レベルで全体としての効果が期待されればよい旨の判断だ」「放射性物質の異常な放出の具体的な機序や態様を特定することを求めているが、予測不可能な事故が起こりうることを無視している」「避難場所について臨機応変に決定すればよいとの判断であったが証拠を無視している」と、この不当判決を批判している。
このように納得のいかない判決ではあったが、原告団・弁護団は上告を断念した。その理由として、「本判決は一審判決と異なり、避難計画の内容に踏み込み、かつ判断基準まで示して出したことは、他の訴訟にとって有益である」「上告をすれば、一審判決に戻る可能性を否定できない。その場合、避難計画を争点としている他の訴訟に壊滅的な悪影響を与える可能性がある」としているが、原告団・弁護団の無念は推して余りある。
21年5月28日の提訴以来(仮処分申請はさらに遡るが)、3年半にわたる裁判で、原告は余すところなく避難計画の不可能性を暴いてきたが、司法の「安全神話」はまだ崩れず、一部では強まっている。この裁判での様々な成果を私たちが引き継いで行かなければならない。
※裁判の資料は風の会HPにあります。
https://miyagi-kazenokai.com/onagawa-trial/
一方、12月25日には、大崎市の放射性汚染廃棄物焼却住民訴訟の控訴審で、仙台高裁は住民側の控訴を棄却した。松浦健太郎弁護士は「専門家の証人尋問など十分な審理が行われなかった。焼却のリスクをしっかり検討せず正当化している」と批判し、また、ちくりん舎の青木さんは「放射能汚染廃棄物のクリアランスレベル100Bq/kgを80倍にも緩め、8000Bq/kg以下であれば実質的に一般廃棄物と同様な取り扱いで良いとする汚染対処特措法を恒久化させ、それに取り囲まれた生活・被ばくは忍従せよという判決だ」と批判している(ちくりん舎HPより抜粋)。
この不当判決に対して原告は、上告して最高裁で闘うことを決意している。私たちもこの裁判を最後まで支えていこうではないか。
●本格稼働で強まる危険~乾式貯蔵計画を止めよう
11月の「移動式炉心内計装系」のトラブル(原因はナットの緩み)は記憶に新しいが、この間も女川原発では様々なトラブルが起きている。
・7月11日、3号機の原子炉補機冷却海水ポンプ(A) 吐出弁について、モーターのみが回転し当該弁本体が動作しない事象が確認。クラッチ機構の部品の一部折損によるもので、レバー駆動軸の発錆が原因。
・9月13日、2号機で非常用ガス処理系の自動起動を防止するための処置を実施していたところ、非常用ガス処理系が計画外に作動。2024.6.12.にも同様のトラブルが発生。
・9月19日、2号機原子炉建屋地下1階の管理区域において、制御棒駆動水圧系の6つの弁の軸封部から水が漏えいする事象が発生。
これらは微細なトラブルだとして大きく問題視はされていないが、さびが原因ということは他にもあることが考えられるし、制御棒駆動系のトラブルは大きな事故にもつながりかねない。何より、本格稼働したということで(高温・高圧状態が継続)、今後安全系に直結するトラブルが発生する可能性は高まっている。万が一放射能が漏れるトラブルが起こった場合、懸念される避難計画の問題に直面する。まさにこれから危険と隣り合わせの日々が続く中で、女川原発監視の取り組みを強化しなければならない。
さらに大きな課題として、「乾式貯蔵計画」を止める闘いを進めなければならない。そもそもこの乾式貯蔵計画は、「2号機の再稼働に伴い、使用済燃料プールの容量が今後4年程度で管理容量に達するため、使用済燃料を一時的に貯蔵する施設として、空気の自然対流で冷却する『乾式貯蔵』の施設」(東北電力HPより抜粋)と、まさに原発稼働を確実にするためのものだ。そうであるならば、私たちは原発稼働を不可能にするために、乾式貯蔵計画を阻止することが求められている。
この乾式貯蔵の容器が安全か、放射能が万が一漏れた場合どうするのか、など問題性は多々あるが、一番の問題は、この乾式貯蔵による女川での核のゴミの留め置きが一体いつまで続くのか、ということだ。東北電力はHPで以下のように説明している。「女川原発の使用済燃料は、発電所の使用済燃料プールおよび今回設置予定の乾式貯蔵施設で安全に管理していくとともに、再処理事業者に搬出し、再処理(リサイクル)を行うこととしています。」 しかし、「一時保管」と言いながら、東北電力は保管期間を明示せず、住民説明会も拒否しており、このままでは女川が事実上の最終処分場となることは必至だ。乾式貯蔵計画には地元同意が必要であり、宮城県・女川町・石巻市への働きかけを強めなければならない。
最近は、新エネルギー基本計画案に示されるように、「原発の低減」から「最大限の活用」と180度政策の変更がなされようとしているが、そこでは福島原発事故がもたらした悲しみ・苦しみが全く顧みられていないばかりか、「増大する電力需要に安定電源が必要」「コストが安い」「地球温暖化対策」などの理由がまことしやかに示されている。しかしその実は、原発推進勢力の生き残りのための方便に過ぎない。実際、もはや1電力会社単独では新しい原発をつくることはできず、なんとか国の支援に頼ろうとしている(その資金源は税金および電力料金であり、しかも原発を持っていない電力会社のユーザーからも取ろうという代物だ)。
このように、女川原発2号機が再稼働されても、まさに原発との闘いはこれからも続かざるを得ない。そして、私たちが声を上げ行動しなければ、推進勢力はあの手この手で原発を進めようとするだろう。今年も倦まずたゆまず、闘いの歩を進めよう。県内外・国内外の仲間と手を取り合い、未来に思いをはせて、今年も頑張ろう。
(舘脇)