会報「鳴り砂」2026年7月20日号が発行されました

会報「鳴り砂」2-143号(2026.7.20)
会報「鳴り砂」2-143号(2026.7.20)別冊

(1面です)
女川原発2号機特重施設の猶予延長問題をめぐる攻防
安全を後景化させる危険な動きに、今後も楔を打ち込み続けよう!

●特重施設設置の猶予延長問題の経緯

特重施設(特定重大事故等対処施設=いわゆるテロ対策施設)設置の猶予期限が、これまでの本体工事計画認可から5年という規則を、営業運転開始から5年に変更する方針がだされ、これによってもともと今年12月に設置期限を迎えるはずだった女川原発2号機の期限が3年延長されようとしています。
昨年秋、東北電力が女川2号機の特重施設の完成が今年12月に間に合わないことを発表し、マスコミは「2026年女川原発2号機停止へ」と報道したのですが、同じ頃東北電力が他の電力会社などでつくる業界団体「ATENA」ぐるみで規制委員会に乗り込んで、猶予期間を3年延長して8年にしてくれと要請していたのです。これまで同様の申し入れがあっても断って、実際に原発の稼働を止めてきた規制委員会が、まさかこの要請を受けるとは思ってもみませんでした。
ところが今年の2月には規制委員会は期限を先延ばしにする方針だと報じられ、我々は驚愕しました。山中委員長は「これまで12基のうち11基が期限を守れなかったので、現実にあわせて変更する」と言うのですが、守れようが守れまいが、必要なルールを決めたらそれは守れと押し通すのが規制委員会のあるべき姿のはずです。まさに原発を止めたくない電力会社救済のための変更です。優先されているのは東北電力の利益であり、削られているのは地元住民の安全です。あまりにも露骨な「規制の虜」であり、規制委員会ではなく「規制され委員会」になってしまっている。事業者が規制委員会にねじ込めば事業者の言い分が通る、悪しき前例となってしまいます。

●地元への説明責任がある

 さらに言えば、この規制変更は「地元同意」の前提条件の変更にあたります。特重施設の設置は、原子炉設置変更許可を規制委員会から得なければならないと共に、安全協定に基づき地元自治体に事前協議を申入れ、事前了解が必要な案件になります。そういう申し入れを2022年1月5日にしています。規制委員会は翌2023年10月に許可を出し、その2ヶ月後にあっさり宮城県が事前了解をだしています。
でもそこに実は重要な附帯意見が付けられていました。安全協定では周辺30km圏内(UPZ)自治体は意見を出す権利が認められており、美里町が意見をだしていました。「当該施設の設置期限を遵守し、早期の完成に努め可能な範囲で設置工事の進捗状況を関係する地方自治体に報告すること」「また設置工事期間が期限を超えることを認知した際はこれを速やかに公表し原子力規制委員会の指示に従うこと」と、あたかも今回の事態を予見していたような意見をだしています。原子力規制委員会の指示に従うというのは、ちゃんと原発止めろよって言っているんです。このUPZ自治体の声を重く受け止めるべきです。
 立地自治体である女川町・石巻市と宮城県は、規制委員会が規制基準に基づいて女川2号機を審査し、特重施設については「期限内に完成させること」そして「もし間に合わなければ原発を止めること」も含めて「安全性が旦保された」と了解し、地元同意したわけです。にもかかわらず、地元同意の後に、規制委員会がその規制基準を事業者寄りに緩和することは、「後出しのルール変更」であり、地元同意の前提条件が変わったことになります。厳密に言えば「事前了解を取り消して、事前協議からやり直さなければならない」事態であり、規制委員会は、少なくともこの後出しの規則変更を決める前に地元自治体・住民に説明に来るべきです。

●規制委委員長が「説明にいきます」と明言
 
そのことを5月12日に参議院会館で行われた院内集会・規制庁交渉で追及したところ、規制庁の審議官が「自治体から申し出があれば(説明会開催等の)対応を検討する」と回答しました。また翌13日には山中委員長が「ご要望があれば、地元の自治体等には説明に行かなければならないと考えている」と明言しました。つまり規制委員会は呼べば来るんです。だから宮城県から規制委員会による地元住民への説明会を求めて行かなければなりません。緩和される前の規制基準を信じて宮城県は同意しちゃったじゃないか、どうしてくれるんだ、規制委員会はどうしちゃったんだ、ということを言うためにも、少なくともこの地元説明会を実現させるということに一緒に取り組んでいきましょう。

●宮城県に要望書提出

6月11日、宮城県内の住民団体の代表6名が宮城県庁を訪れ、「原発『テロ対策施設』の設置期限を延長する案について原子力規制委員会に地元説明会の開催を求めてください」とする、村井知事宛ての要請書を提出しました。佐々木功悦会長はじめ「脱原発をめざす宮城県議の会」所属の県会議員5名も同席しました。県側は、諸星久美子復興・危機管理部長、千葉宏樹原子力安全対策課長が対応しました。
宮城県として、規制委員会がテロ対策施設の設置期限延長について説明に来るように求めること。県民に対しても説明し質疑応答ができる場(住民説明会)を設けるよう求めること。の2点を要請しました。
これに対して、諸星部長は「要請の内容を確認し精査して、後日回答したい」と答えました。テロ対策施設の設置期限延長については、来週から始まる宮城県議会6月定例会でも、佐々木功悦県議や金田もとる議員に一般質問で取り上げていただく予定です。脱原発県議の会と連携しながら、引き続き追及していきたいと考えています。

●県の「人ごと」のような回答と抗議声明

その後村井知事が、規制委員会を招致して住民説明会を開く考えは「今のところない」などと後ろ向きの発言をしたことに続き、6月30日に宮城県から回答がありました。
しかしこのわずか数行の回答は、住民の安全を守ろうとする姿勢とはほど遠いものでした(以下抜粋)。「県としては、原発の安全規制や関連法令の見直しは、国が責任を持って行うべき事項であると考えております。今回の見直しは、規制の継続的改善の観点から、施設設置に係る経過措置規定を合理的なものに見直す判断を行ったものであることを、改めて原子力規制庁に確認いたしました。さらに、施設や設備に何ら変更を加えるものではないことから、事前協議に対する前提条件の変更には当たらないものと認識しております」

これに対し、市民団体は連名で抗議声明を出すとともに、7月2日記者会見を行いました。
(以下《抗議声明》より抜粋)
「原発のテロ対策施設の設置猶予期間延長の中止と住民説明会開催をあらためて要請する」
・回答は、信頼を失っている原子力規制機関の説明をコピペした、なさけないものである。
県独自の考えがなく、説明会を「開催しない」という結論が先にありきで、県民の安全を守る責務の自覚に乏しいものになっている。
・高市政権では、原子力安全をますます蔑ろにし、原発立地地域に使用済燃料の保管を長期化させる方向性が打ち出されている。
・原発事故の危険、放射能による環境汚染から県民の安全や地域の環境を守るために、立地県の自治体が独自の判断を持つことがますます求められている。
 
 パブコメは7月3日締切で、今後この「改悪」案が法制化されようとしていますが、安全をますます後景化させる危険な動きに、今後も楔を打ち込み続けなければなりません。
(5.23集会の多々良さんの報告および「みやぎアクション」Facebookなどから編集)
(舘脇)