4月28日、脱原発東北電力株主の会(代表 篠原弘典)が東北電力へ株主提案をしました。
以下その内容です。
提案株主数 189名 議決権数 2,967個(296,700株)
「東北電力株式会社第101回定時株主総会 共同株主提案議案」
第1号議案 定款一部変更の件(1)
◎議案内容
以下の章を新設する。
第7章 原子力発電事業からの撤退
第39条 当会社は使用済核燃料を作り出し、被曝労働者を生み出す原子力発電事業から撤退する。
〇提案の理由
当社は昨年12月26日に多くの人々の反対の声を無視して女川原発2号機を再稼働させました。再び処分の見通しの立っていない使用済核燃料が作られ始めたのです。
これまで国が掲げてきた核燃料サイクル政策は完全に破綻しています。その原因は政策の中核である六ヶ所再処理工場の竣工が度重なる延期を繰り返しているからです。当初27年前の1997年に完成する計画だった再処理工場は27回もの延期を繰り返して、操業開始の見通しも立たない状況に立ち至っています。高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉と合わせて、致命的な行き詰まりが見えて来ています。これ以上使用済核燃料を増やすことは将来世代に対する重大な犯罪行為です。
更に原子力発電は核燃料サイクルのウラン採掘から燃料加工、発電所の運転そして放射性廃棄物の処理・処分に至る全工程で、放射線被曝による被曝労働者を生み出し続けています。この様な犠牲者を出しながら運転を続けることは愚かしい選択です。
当社は未来に対して責任を果たす企業として原子力発電事業から撤退します。
第2号議案 定款一部変更の件(2)
◎議案内容
以下の章を新設する。
第8章 グリーンビジネスの主軸事業化
第40条 当会社は、再生可能エネルギーを最大限活用するグリーンビジネスを今後展開する事業領域の主軸と位置づけ、それと相反する原子力発電事業は今後展開する事業区分から削除する。
○提案の理由
当会社は、中長期ビジョン「よりそうnext+PLUS」において、今後展開する事業領域のひとつとして「グリーンビジネス」を掲げています。その要旨は「2030年代早期に200万kW以上の再エネ開発を目指すとともに、多様化する再エネニーズにお応えするサービスを幅広く提供する」というものです。「東北地域の再エネポテンシャルは高い」(石山社長)ことを考えれば、当会社が目指す「ありたい姿」すなわち「東北発のスマート社会」を実現できるエネルギーは再エネをおいて他になく、中長期的に見て、グリーンビジネスを当会社の事業の主軸とすべきことは疑いありません。「カーボンニュートラルへの挑戦」「循環型社会の形成」「生物多様性の保全」「快適・安全・安心な暮らしと地域社会の実現」等の、当会社のマテリアリティ(重要課題)を解決できるのも、再エネによるグリーンビジネスです。
一方、当会社が目指す「ありたい姿」実現にもマテリアリティ解決にも貢献しない原子力発電事業は、今後展開する事業区分から削除すべきです。
第3号議案 定款一部変更の件(3)
◎議案内容
以下の章を新設する。
第9章 放射性廃棄物の責任管理
第41条 当会社は使用済み核燃料の施設内長期保管につながる乾式貯蔵施設の設置を行わない。
○提案の理由
当会社は昨年2月27日に女川原発敷地内に使用済み燃料を貯蔵する乾式貯蔵施設設置計画の協議を、地元自治体(宮城県、女川町、石巻市)に申し入れ、翌28日に原子力規制委員会に申請しました。
女川原発2号機の使用済み燃料プールは管理容量が1680体に対し、昨年2月現在で貯蔵量が1263体、空き容量が417体であり、再稼働すると4年余りで上限に達し、他所に搬出しない限り、2号機の運転が不可能になります。使用済み燃料の搬出先と目されている六ヶ所再処理工場は昨年8月に27回目の完成時期延期を公表し、完成の目途は立っていません。乾式貯蔵施設設置はそのための対応策にすぎません。
また、当会社は3号機の再稼動へ向けて具体的に動き出しました。3号機を再稼働するなら、将来それに伴って乾式貯蔵施設を増設しなければならないことは自明です。女川を「核のゴミ捨て場」にする気なのでしょうか。
乾式貯蔵施設設置計画に際して、住民説明会も開催せず、住民理解も得られぬままの見切り発車が許されるのでしょうか。当会社グループスローガン「より、そう、ちから。」とは真逆です。当会社がステークホルダー、地域により信頼される電力会社になるためには一歩立ち止まる必要があると考え提案します。
第4号議案 定款一部変更の件(4)
◎議案内容
第4章 取締役及び取締役会の(員数)第19条を以下の通り変更する。
(下線は変更部分)
(員数)
第19条 当会社に取締役18名以内を置く。
2 前項の取締役のうち、監査等委員である取締役は、5名以内を置く。
3 ただし女性取締役を30%以上とする。
○提案の理由
内閣府も女性登用推進の取り組みのなかで、国会議員、国家公務員等の管理職の女性割合を30~35%に引き上げる目標を掲げています。ジェンダーギャップを解消するためには、最低30%の構成比率が必要と言われています。東北地方における企業の女性登用については、東北電力が先陣を切っていただきたいという株主提案です。また、役員数の30%を実現するためには、その下部人員となる管理職についても東北電力全体の管理職数に対して30%ないし35%程度の採用率の実現が必要となります。女性の知恵やアイディアを取り入れることで、東北電力における未来のエネルギーのあり方の検討がより多角的に開かれることを期して提案します。
第5号議案 定款一部変更の件(5)
◎議案内容
以下の章を新設する。
第10章 特別顧問等の廃止
第42条 当会社は、経営の透明性及び実効性を向上させ、企業統治(コーポレートガバナンス)の更なる強化・向上を図るため、特別顧問等を廃止する。
○提案の理由
特別顧問制度は、会社法に規定がなく、慣習的に認められてきた日本企業特有のものです。フジテレビの日枝久氏が相談役として長くトップに君臨し問題化したように、会長や社長が退任後に企業に残り実質的な「院政」の形で現経営陣に影響力を行使しているとの批判や、目に見える貢献が乏しいとの指摘がなされ、外国人投資家を中心に透明性等について批判が出ており、企業統治の向上につなげる観点からも見直しの動きが広がっており、すでに、日産やソニー、パナソニック、富士通、資生堂等、多くの国内企業が廃止しています。
当社は、株主の意見に押され、2022年6月に常勤の相談役を廃止しましたが、八島俊章氏や高橋宏明氏が名誉顧問、海輪誠氏と原田宏哉氏が特別顧問に、さらに増子次郎氏が特別顧問に就任します。彼らは、電力全面自由化が進展する中、事故を起こせば福島原発に見られるように住民の故郷を奪う、危険で不安定な電源、コスト高で経済性のない原発に固執し、当社の経営を危うくしてきました。
当社が、再生可能エネルギーを基盤とする脱原発の新たな経営に一刻も早く舵を切るためにも、悪しき慣習でしかない特別顧問制度は廃止すべきです。
(この議案は、昨年も、株主の28%の賛同を得たので再提案します。)
第6号議案 定款一部変更の件(6)
◎議案内容
以下の章を新設する。
第11章 日本原子力発電株式会社への支援中止
第43条 当会社は、電力自由化に対応し財務の健全性を確保するため、日本原子力発電株式会社への資金支援を行なわない。
2 当会社は、日本原子力発電株式会社へ支払い済みの前払い電気代の債権を回収する。
3 日本原子力発電株式会社との間の「電力受給契約」を2025年度末までの早い時期に終了する。
4 当会社は、日本原子力発電株式会社への債務保証を停止し、今後も行わない。
○提案の理由
日本原子力発電は、卸電気事業者でありながら発電できない設備だけ持つ稀有な会社です。保有するのは、原子力規制委員会から再稼働不可と判断された敦賀第二原発や避難計画不備で運転差止めとなった東海第二原発(「被災」し運転期限40年を超える「老朽」原発)など、座礁資産のみという有様。この状況では、日本原電の信用が落ちるのも当然です。現に、みずほ銀行は日本原電へ直接の資金投入を拒否し、貸し渋りを始めています。
ところが当社は、電気を受け取っていないのに震災以降14年間、株主中間配当金と同額の約100億円近くを毎年支払ってきました。更に2023年度末時点で約421億円の債務保証を行っています。
当社もみずほ銀行を見習って、資金回収に動くべきです。当社が「財政基盤の回復が必要な状況」というのであれば、他社へ支援・債務保証する余裕は無いはずです。一刻も早く日本原電への支援を停止し、支援済み分並びに前払い電気代の回収に乗り出すべきです。