「脱原発東北電力株主の会」が今年の株主総会に向け、株主提案議案を発表しました。
4月28日に行った記者会見の資料と、株主提案議案を掲載します。
脱原発東北電力株主の会 記者会見資料 2021.4.28
東北電力株式会社第97回定時株主総会
共同株主提案議案
第1号議案 定款一部変更の件(1)
◎議案内容
以下の章を新設する。
第7章 原子力発電所
第39条 当会社は、女川原子力発電所、東通原子力発電所の再稼働を断念し、原子力発電から撤退する。
○提案の理由
福島第一原発事故から10年が経ちました。10年前の3月、福島では16万人の人々が着の身着のままの避難を強いられ、そのうち4万人がいまだに自宅に帰れず、2300余人の方が「震災関連死」で命を落としています。
福島の人々の苦難は、原発事故が他の事故と比較にならない、破局的・壊滅的な被害をもたらすことを、私たちに教えました。何十年何百年も人が住めない土地が生まれ、人々のくらしや生業、故郷を根こそぎ奪い去る。そんな巨大災害をもたらす施設は、原発以外にないのです。
当社が本当に地域に「寄り添う」のならば、地域を壊滅させるリスクをはらむ原発からは撤退すべきです。
また、これまで除染、補償、廃炉などにかかった費用は11.2兆円、将来的には80兆円を上回るとの試算もあります。東電は、除染、補償、廃炉を行うために「国有化」され存続しましたが、事実上倒産していました。
一度の原発事故で当社の3倍以上の販売量があった東電でさえ倒産したのに、当社が存続できるはずがありません。経営上のリスクから言っても、原発から撤退すべきです。
第2号議案 定款一部変更の件(2)
◎議案内容
以下の章を新設する。
第8章 東通原子力発電所及び女川原子力発電所3号機の廃止
第40条 当会社は、東通原子力発電所の適合性審査を取り下げ、女川原子力発電所3号機の申請を断念し、ともに廃炉の措置を進める。
○提案理由
当社は女川原発2号機の来年度の再稼働に向けて邁進しています。工事費用は3400億円とのことですが、再稼働に必要な安全対策工事計画の認可を受けても、5年以内に特定重大事故等対処施設の建設をしなければなりません。費用の概算も明らかにされていません。
東通原発については2011年2月から第4回定期事業者検査が続いたままであり、施設直下に活断層があり、新規制基準に合格することは絶望的状況です。現状のままでは保守点検費用がかさむばかりです。
女川原発3号機については、昨年11月18日樋口社長が記者会見において、「再稼働の申請については具体的に申し上げられる段階にない」と述べており、進展は見られません。3号機も2号機同様の被災原発であり、再稼働には2号機同様の茨の道が待ち受けているだけであり、莫大な費用が掛かります。再稼働は当社の財務状況を圧迫するだけであり、メリットはありません。両原発の再稼働に固執せず、廃炉が当社の最良の選択です。
第3号議案 定款一部変更の件(3)
◎議案内容
以下の章を新設する。
第9章 放射性物質の責任管理
第41条 当会社の原子力発電により発生させた使用済核燃料その他の放射性物質は、当会社の原子力発電所の敷地内で厳重に管理保管する。また、当会社の原子力発電所の廃炉を含め、放射性物質の発生量を増加させないものとする。
○提案理由
日本政府は、使用済核燃料を再処理し、回収ウラン・プルトニウムを発電に利用する「核燃料サイクル」を謳ってきました。しかし、サイクルの中核であった高速炉「もんじゅ」は重大事故続きで廃炉になり、六ヶ所村の再処理工場も未だに稼働していません。また、サイクルから生じる高レベル放射性廃棄物の最終処分場も、北海道の寿都町と神恵内村で文献調査が始まったものの、住民や周辺自治体の反発も強く、実現は困難です。
従って、使用済核燃料そのものが高レベル放射性廃棄物となるうえ、廃炉後の解体・撤去作業により大量の放射性廃棄物も発生します。生命への危険がなくなるまでに10万年もかかるというこれらの放射性物質を、これ以上発生させてはなりません。また、すでに発生した放射性物質の管理責任の第一は、原子力発電により巨大な利益を得た当社にあります。
道義的には当社の本店敷地内で管理すべきですが、移動時の危険性や技術的困難さから、発電所現地の人々に苦難を押し付けてしまうことになりますが、苦渋の提案をせざるを得ません。
第4号議案 定款一部変更の件(4)
◎議案内容
以下の章を新設する。
第10章 設備投資決定時の健全な経営維持の保障
第42条 当会社は、1000億円以上の設備投資を行う際は、健全な経営維持に資するかどうかを判断するため、株主総会で取締役が説明義務を果たし、株主の同意を得ることとする。
○提案の理由
女川原発を再稼働させるための安全対策工事に3400億円掛るとされています。さらにテロ対策で義務付けられた特定重大事故等対処施設の設置にも約1000億円が掛ると予想されます。
当社の年間設備投資額は直近5年間の平均で2900億円余りですが、1件の設備投資でこれだけの出費があるのは健全な経営維持の観点からも問題にせざるを得ません。
これまでは設備を作れば作る程、総括原価方式で電気料金に上乗せされて利益になっていましたが、この総括原価方式が昨年廃止され、新たな収益が見込めない設備に多額の資金を投資することは避けなければなりません。
当社は多額の安全対策工事費を捻出するために社債を発行していますが、投資家にとって有利な一般担保付社債の発行は2025年までに停止されることになっており、銀行融資も含めて資金調達が困難になる状況も予想されます。
巨額の設備投資については健全な経営維持の観点から、それが適切であるかの検討が不可欠です。株主総会に諮るべきです。
第5号議案 定款一部変更の件(5)
◎議案内容
以下の章を新設する。
第11章 相談役及び顧問等の廃止
第43条 当会社は、経営の透明性及び実効性を向上させ、企業統治(コーポレートガバナンス)の更なる強化・向上を図るため、相談役及び顧問等を廃止する。
○提案の理由
相談役・顧問制度は、会社法に規定がなく、慣習的に認められてきた日本企業特有のものですが、会長や社長が退任後に企業に残り実質的な「院政」の形で現経営陣に影響力を行使しているとの批判や、目に見える貢献が乏しいとの指摘がなされ、外国人投資家を中心に透明性等について批判が出ており、企業統治(コーポレートガバナンス)の向上につなげる観点からも見直しの動きが広がっており、すでに、ソニーや資生堂、日本たばこ産業(JT)、カゴメ、伊藤忠商事等、多くの国内企業が廃止しています。
当社では、八島俊章氏、幕田圭一氏、高橋宏明氏及び原田宏哉氏が特別顧問に就任しており、更に今回新たに、海輪誠氏が相談役に就任しました。彼らは、電力全面自由化が進展する中、危険で不安定な電源、コスト高で経済性のない原発に固執し、当社の経営を危うくしてきました。
当社が、再生可能エネルギーを基盤とする脱原発の新たな経営に一刻も早く舵をきるためにも、悪しき慣習でしかない相談役・顧問制度を廃止すべきです。