東北電力株式会社第99回定時株主総会共同株主提案議案

2023年4月28日、「脱原発東北電力株主の会」が7項目にわたって株主提案をしました。
以下その内容です。

東北電力株式会社第99回定時株主総会共同株主提案議案

第1号議案 定款一部変更の件(1)
◎議案内容
  以下の章を新設する。
第7章 原子力発電からの撤退と再生可能エネルギーの推進
第40条 当会社は、原子力発電から撤退し、再生可能エネルギーの開発に積極的に取り組む。
○提案の理由
 福島原発事故から12年が経ちましたが、未だ緊急事態宣言は解除されず、廃炉作業も困難を極めています。福島県から県外に避難している2万1千人もの人々の苦難は現在でも続いています。
 それにもかかわらず事故の責任を政府も電力会社も取ろうとしないまま、原発の再稼働、新増設、運転期間の延長を推し進めようと政策転換を図っています。そのために盛んに喧伝されている、原発の電気は安い、再稼働によって電気料金を下げられる、新規制基準適合性審査で安全性は担保されているという主張には、何の根拠もありません。
 むしろ原発の推進に社会を後戻りさせることは、本格的な稼働から50年以上経っても解決の目途すら立てられない使用済核燃料の処理、大量に作り出してしまった放射性廃棄物の処分という難題を、ますます増大させることになります。
 世界の大きな流れは、原発からの撤退・再生可能エネルギーの積極利用に確実に向かっています。定款にそのことを明記し、当社は未来に向けた歩みを始めます。

第2号議案 定款一部変更の件(2)
◎議案内容
  以下の章を新設する。
第8章 発電原価及び単価の公開
第41条 当会社は、火力、原子力、水力、再エネ等の電源別の発電原価及び発電単価を、その詳細な内訳も含めて、すべて公開する。同じく、発電設備ごとの発電原価及び発電単価もすべて公開する。
○提案の理由
当社をはじめ電力各社の大幅な電力料金値上げにより、地域住民や事業者の困窮が深まっています。そのことに乗じて、「原発の電気は安い」「再稼働で電気代が抑えられる」といった間違った宣伝がなされ、原発回帰政策(原発の新増設、運転期間延長等)の口実とされています。
当社の樋口社長も、昨年11月の電気料金値上げ申請の際に「女川原発2号機再稼働で値上げ幅が5%程度抑えられる」旨を発言しましたが、その根拠は明らかではありません。
資源エネルギー庁による電源別の発電コスト試算(当社ホームページでも引用)は、新設の発電設備を比較したものであり、ここでも「既存原発の再稼働」(追加安全対策工事等)の場合のコストは明らかではありません。
現在の当社の、火力、原子力、水力、再エネ等の電源別の、さらには主要な発電設備ごとの発電原価及び発電単価(発電原価/総発電量)を、その内訳や根拠も含めて、すべて公開するべきです。そのことによって、モデルではなく現実のプラントの発電コストを明らかにし、当社がどの電源を選択するかの判断に供すべきです。

第3号議案 定款一部変更の件(3)
◎議案内容
  以下の章を新設する。
第9章 原子力発電所への投資の中止
第42条 当会社は、電気料金を値上げせざるを得ない厳しい経営状況に鑑み、膨らみ続ける原子力発電所への投資を中止し、再稼働を断念する。
○提案の理由
当社は、地域の住民や事業者を苦しめる大幅な電気料金値上げを行ないましたが、一方で、女川原発再稼働のために、野放図とも言える投資や出費を重ねています。
2011年度以降をみても、1ワットも発電していない原発のために毎年約1千億円の「原子力発電費」が支出されており、その額は12年間で1兆円を超えています。
さらに、原発再稼働のためにかかる追加的安全対策費は、1540億円(2013年2月公表、女川と東通の合計)→3千数百億円(2014年9月公表、女川と東通の合計)→3400億円(2019年3月公表、女川のみ)→5700億円(2022年11月公表、女川のみ)と、とどまるところを知らず膨らみ続けています。この他に特重(テロ対策)施設に1400億円かかるとしており、総額は実に7100億円の巨額にのぼります。
原発を維持し再稼働するためのこれらの費用が、当社の経営において大きな負担となっていることは明らかであり、ひいては電気料金値上げの一因にもなっていると考えられます。
このことに対する当社経営陣の責任は重大です。原発へのこれ以上の投資を中止し、再稼働は断念すべきです。

第4号議案 定款一部変更の件(4)
◎議案内容
以下の章を新設する。
第10章 電力システム改革
第43条 当社は電力システム改革推進のため、東北電力ネットワークの株式を売却し、所有権分離した別会社とする。
〇提案理由
昨年末以来、大手電力の小売部門が競争相手の新電力の顧客情報を不正に閲覧している事実が次々と発覚しました。当社においても、確認されただけでも約3万7千件にのぼるようです。これは、16年に始まった電力の小売全面自由化を揺るがしかねない、電力システム改革の根幹に関わる問題です。11年の福島第一原発事故をきっかけになされた電力システム改革では、法的分離と所有権分離の議論があり、電力会社の反発で政府は法的分離を選んだ経緯があります。しかし、この不正閲覧という事態を重く見た内閣府の有識者会議は、本年3月2日、大手電力の送配電部門を資本ごと切り離す所有権分離を提言しています。当社の95回総会において、所有権分離の株主提案がなされましたが、否決された過去があります。ですが、時代は確実に変わったのです。
今こそ、全国電力会社の範となるべく、率先して東北電力ネットワークの株式を売却し、所有権分離を行うことが、株主並びに社会の信頼に応える道です。

第5号議案 定款一部変更の件(5)
◎議案内容
以下の章を新設する。
第11章 放射性廃棄物
第44条 当会社は、今後放射性物質を発生させない。原子力発電により既に発生させた使用済核燃料その他の放射性物質は、完全に安全な処理・処分方法及び輸送方法が確立しない限り、当会社が責任をもって発生地で厳重に管理保管するものとする。
〇提案理由
 日本政府は、使用済核燃料を再処理し、加工して得られたMOX燃料を高速炉で発電に利用する「核燃料サイクル」を謳っています。しかし、サイクルの中核である高速炉は、原型炉である「もんじゅ」が失敗に終わり、六ヶ所村の再処理工場も未だに稼働していません。また、サイクルから生じる高レベル放射性廃棄物の最終処分場も、北海道の寿都町と神恵内村で文献調査が行われているものの、道は次の段階の概要調査に進むことに反対しており、住民の反発も強く、ほかに調査候補地に名乗り出る自治体もなく、実現は困難です。
従って、使用済核燃料そのものが高レベル放射性廃棄物となるうえ、廃炉後の解体・撤去等により大量の放射性廃棄物が生じます。生命への危険がなくなるまでに10万年もかかるような様々な放射性物質を発生させることは、人類のみならず、すべての生物の生存権を奪う、凶悪な犯罪的行為と考えます。また、これらの輸送時にも、事故等により環境中へ放射性物質・放射線をまき散らす恐れが大きいことから、この提案をします。

第6号議案 定款一部変更の件(6)
◎議案内容
  以下の章を新設する。
第12章 出資・債務保証
第45条 当会社は、電力自由化に対応し財務の健全性を確保するため、すでに破綻状態にあり“負の遺産”ともいえる原子力発電事業並びに核燃料サイクル事業への投資を見直し、世界の趨勢である太陽光発電や風力発電、その他の再生可能エネルギー事業への投資を加速する。
   そのために、以下の会社への出資・債務保証等を取りやめる。
1.原発専業事業者の日本原子力発電株式会社への出資及び債務保証は行わない。
2.核燃料再処理事業者の日本原燃株式会社への出資及び債務保証は行わない。
○提案の理由
日本原子力発電は、保有する4機の原発のうち2機が廃炉作業中、2機は停止中で、発電量ゼロです。ところが、当社は、2011年震災以降、受電量ゼロなのに毎年「他社購入電力料」名目で約100億円(総額1000億円以上)を無償提供してきました。また、2021年度末で約189億円の債務保証を行っています。同社東海第二原発は、40年超の「老朽」原発かつ「被災」原発であり、一昨年の水戸地裁「運転差止」判決や地元や関東圏の住民からの再稼働反対の声に加え、安全対策工事の遅れで、再稼働は見通せません。そのような同社に対する債務保証や電力購入料の支出はやめるべきです。
日本原燃の六ケ所再処理工場は、当初の1997年完成予定から25年以上過ぎた昨年12月、26回目の完成予定の2年延期を行いました。建設費は既に2兆2000億円を超え、「もんじゅ」も廃炉となり、プルトニウムの使い途もなくなり、核燃料サイクル事業は破綻しています。当社は2021年度末で346億円を出資し、再処理前払い金446億円を支出していますが、それらをすぐに中止すべきです。

第7号議案 定款一部変更の件(7)
◎議案内容
  以下の章を新設する。
 第13章 特別顧問等の廃止
  第46条 当会社は、経営の透明性及び実効性を向上させ、企業統治(コーポレートガバナンス)の更なる強化・向上を図るため、特別顧問等を廃止する。
(この議案は、昨年も、株主の25%の賛同を得たので再提案します。)
○提案の理由
 特別顧問制度は、会社法に規定がなく、慣習的に認められてきた日本企業特有のものです。会長や社長が退任後に企業に残り実質的な「院政」の形で現経営陣に影響力を行使しているとの批判や、目に見える貢献が乏しいとの指摘がなされ、外国人投資家を中心に透明性等について批判が出ており、企業統治(コーポレートガバナンス)の向上につなげる観点からも見直しの動きが広がっており、すでに、日産やソニー、パナソニック、富士通、資生堂、日本たばこ産業(JT)、カゴメ、伊藤忠商事等、多くの国内企業が廃止しています。
 当社は、株主の意見に押され、昨年6月、常勤の相談役を廃止しましたが、高橋宏明氏、海輪誠氏、原田宏哉氏3名が特別顧問に就任しています。彼らは、電力全面自由化が進展する中、危険で不安定な電源、コスト高で経済性のない原発に固執し、当社の経営を危うくし、赤字決算の原因を作ってきました。
 当社が、再生可能エネルギーを基盤とする脱原発の新たな経営に一刻も早く舵を切るためにも、悪しき慣習でしかない特別顧問制度は廃止すべきです。