―最近の気になる動き 90―≪事故から10年:事故解明はどこまで進んだか≫

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―最近の気になる動き 90―≪事故から10年:事故解明はどこまで進んだか≫

―最近の気になる動き 90―
≪事故から10年:事故解明はどこまで進んだか≫
(以下、冒頭部分のみ)

今年(2021年)3月で福島原発事故から10年目ということで、多くの書籍が出版されています。本稿では、筆者の関心事である運転操作、特に1号機の非常用復水器(IC)操作に関係する3つを紹介します(自粛連休中にどうぞ?)。

≪①船橋洋一「フクシマ戦記 上・下」≫
本書<文藝春秋2021.2.25>は、その副題「10年目の『カウントダウン・メルトダウン』」から分かる通り、2012.12発行の「カウントダウン・メルトダウン」(文藝春秋:筆者は文春文庫2016.1.10版を購入)の増補改訂版のようなものですが、前著発行後の「インタビューや報告書・資料などから得た新事実や新発見を前に、骨格を大幅に再構成し、書き直した」<下:p.427>とあるとおり、②で紹介する「民間事故調最終報告書」の取りまとめ役(プログラム・ディレクター)の船橋氏が、「『10年後のフクシマ』を検証」<同報告書:p.5>するための基礎資料としても大いに活用されたと思われる「新事実や新発見」に基づいた「事故と危機の記録」<上:p.8>です。そのことは各章末に示された出典・インタビューの記載からも伺い知れますが、筆者が何よりも信頼感を覚えたのは、新潟県技術委員会(新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会)の議論(資料)も多数引用され、おそらくはその関係で田中三彦さんへのインタビューもなされていたことでした<下:p.424、p.431>。
特に筆者が感心したのは、第1章「SBО 全交流電源喪失」で、新潟県技術委員会で初めて明らかにされた1992年(平成4年)6月29日のIC作動<*>について言及していたことでした<p.39>。この点、本書より先に読んだ、後記③「福島第一原発事故の『真相』」<講談社>では、イソコン作動は40年間なかったという東電の従前の公式見解を改めて記載しただけで<後述。その基の「福島第一原発1号機冷却『失敗の本質』」講談社現代新書(2017.9.20)も同じ>、上記1992作動の記載はなく、筆者はガッカリしていたので、余計に船橋氏の取材力に驚きました。
<*東電は、2015.1.8新潟県課題別ディスカッション2「資料1:論点の整理」及び「第5回補足説明資料Ⅲ-2-⑩追加資料」で、上記IC作動を公表。筆者は同資料を2018.10~11頃に“発見”し、2018.12.15風の会公開学習会等で提示(2019.3.1「原子力資料情報室通信」№537の筆者稿p.6脚注19にも記載)しましたが、この間上記IC作動に言及した書籍・著作等を目にすることはありませんでした。付言すれば、吉田所長は、政府事故調の2011.7.22聴取に対し、一度作動した記憶がある旨を話していましたが、東電の誰もフォローしなかったため、同年8.8・8.9聴取時に証言内容を訂正しましたが、実は吉田所長の記憶(実際には平成3年ではなく平成4年ですが)が正しかったのです。筆者も以前‘7.22発言は吉田所長の記憶違い=ICに対する認識不足!’と述べたことがありましたが、誤りでした。スミマセン。>
(以下略 pdfをご覧下さい)