≪短信:宿題せずに“店じまい”、宮城県検討会≫

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≪短信:宿題せずに“店じまい”、宮城県検討会≫

≪短信:宿題せずに“店じまい”、宮城県検討会≫
2020年7月29日、宮城県の『女川原子力発電所2号機の安全に関する検討会』は、“構成員”10名の東北電力(や国・自治体)に対する“意見・要望”を整理=羅列しただけの報告を提出し、はやばやと“店じまい”してしまいました。
一方、「柏崎刈羽原発の安全管理に関し技術的な助言・指導を行う委員会であり、福島第一原発の事故原因の検証は、柏崎刈羽原発の安全に資することを目的に実施している」という『新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会』は、田中三彦さんらが未だに厳しい検討・追及を続けています(今年は、令和1年度第1回:1月31日、令和2年度第1回:6月5日、第2回:7月28日、第3回:8月28日、第4回:9月11日予定)。<詳細は次号報告予定!>

【自ら課した“宿題”を放置】
 さて、宮城県検討会の“成果”である7.29報告<第24回資料2>を見ると、筆者がこの間指摘し続けてきた“同じ被災原発”の1・3号機の被災状況確認・教訓化が完全に抜け落ちていることはもちろんですが、それに加え、例えば『論点7』では、原子炉圧力容器監視試験片の試験結果についての質問に対し(第1回目の結果は報告済み)、「第2回目については、現在評価を行っている(第4回)」との東北電力の‘当時の回答’をそのまま“丸写し”しただけのものになっています。2015.4.23(第4回)から5年以上が経過しているにもかかわらず、その第2回目の「評価結果」について東北電力も自主的に追加説明せず、質問者も‘その場限りの思い付き?’だったためか、その後の検討会でも、最終報告の取りまとめに際しても、改めて報告を求めなかったようです。
同じく、『論点19』では、「⑤対策については、その効果を検証することが重要なので、試行・検証・改善の結果については、検討会の場で報告していただきたい(第4回)」と‘当時’構成員が要請したことに対し、「⑤根本原因対策の実施計画を策定し、…平成28年1月に本格運用に移行。本格運用開始1年後を目途に有効性を再確認し、必要に応じ改善を行ってゆく(第9回)」と東北電力が回答していますが、この点についても東北電力は、平成29年(2017)1月が過ぎても有効性再確認・改善の結果を主体的に報告せず、構成員も「再発防止対策をいかに持続するかというのが原子力発電所運営の一番のポイントになる(第9回)」とまで指摘していたものの、その後の「検討会の場で報告」することが完全に抜け落ちたままですが、要請を「持続」することなくオシマイとなりました。
これらは、構成員の追及姿勢の甘さ(新潟での田中三彦さんの“しつこさ(失礼!)・真摯さ”を見習ってほしかったです)と、東北電力の情報公開・提供に消極的な姿勢(臭いものに蓋)と、そして最終的にはおそらく『論点』整理を行なった県事務局のチェック能力の甘さ、が原因と思われます。

【放射能放出量「想定の不統一」を放置】
 また、『論点82』では「中央制御室」の、『論点83』では「緊急時対策所」の、それぞれの被ばく評価を取り上げています。
ところが、前者では事故発生45時間後のフィルタベント系経由(地上高36m)の1時間の放出を想定(7日間51mSvの被ばく評価)<2019.8.30第19回資料3>している一方、後者では事故発生24時間後から原子炉建屋漏洩(地上高0m)による10時間の放出を想定(7日間0.7mSvの被ばく評価)<同回資料4>しています。“素人考え”では、両者とも最も厳しい放出想定(=事故想定)での評価を行なうべきなのに、想定が異なることについて構成員からの質問・議論がなかった<同回議事録を見てみましたが、見当たりませんでした>のが不思議で、7.29報告でもそのような「想定の不統一」はそのまま放置されています。
もしかすると、放出高・拡散などの関係で「中央制御室内被ばく」に対して最も厳しい放出想定が「緊急時対策所内被ばく」に対しては最も厳しい想定にはならないという可能性はありますが(その逆も同じ)、そうであったとしても、双方の最も厳しい放出想定(事故想定)に対して両者それぞれの被ばく評価を行なうのが“県民にとって分かり易い・説得力のあるもの”なのではないでしょうか。

【「燃料燃焼度・交換サイクル」質問の深化もなし】
付言すれば、上記<第19回資料3>で、『鳴り砂№284:気になる動き82』で言及した燃料燃焼度・交換サイクルに関する記述があり、若林座長の「1サイクルから4サイクルまでが 0.229で、5サイクルが0.084」という燃料装荷割合に対する質問に対し、東北電力は「基本燃料装荷、交換というのが大体4分の1炉心ずつ、4分の1ずつ交換していくことになります。ですので、概ね4サイクルで全部交換になってしまうんですが、とはいえ5サイクル目の燃料というのが実際にありまして」と述べ、「取りかえ平均の燃焼度というのがございまして、それが45ギガワットd/tになるのが今、女川2号で使っている9×9燃料の設計値」で、「最大の燃焼度として5万5,000、55ギガワットd/tになるように、こういう設計をしたもの」もあると説明しています<同回議事録:70-71頁>。
すなわち、事故時の放射能放出量評価(厳しい条件?)においては、最高燃焼度「55000MWd/tの9×9燃料」が「8.4%(=47本:炉心560本)」5サイクル目(40000時間=55ヶ月以降)にも装荷され、最終的には50000時間≒68.5ヶ月(安全側の仮定なら)まで燃焼させることを想定しているようです。
一方、東北電力が(経済性優先の観点から)目論む「24ヶ月連続運転(実際は22ヶ月?)」では、平均で1/3炉心の187体が3サイクル目に装荷され、上記放出量評価の前提をはるかに超える放射能を内蔵することになるため、その点(安全性の観点)からも「22ヶ月?×3サイクル運転」は不可能(設置許可申請違反)だということも分かります。上記『鳴り砂』には「県の検討会では(東北電力・国からの説明聴取の際に)その辺も十分に議論して欲しいと思います」と記載しましたが、残念ながら、安全性より経済性を優先させる東北電力の姿勢を戒めるような“議論の深化”はありませんでした。

 結局、上記課題などを残したまま、県の検討会は「全ての論点について確認が終了し」たとのことですから、最初から予想されたこととはいえ、改めてガッカリです。
 <2020.9.9記 仙台原子力問題研究グループI>