会報「鳴り砂」(2020.3.20号)が発行されました

会報「鳴り砂」2-105号(通巻284号)2020.3.20.
会報「鳴り砂」別冊2-105号(通巻284号)2020.3.20.

(一面論文です)
原子力規制委員会の女川2号機「合格」に抗議する!
-県民投票条例否決を乗越え、県民運動の創出を!-

 2月26日、原子力規制委員会は女川原発2号機が新規制基準に適合していると認める「審査書」を決定した。正式に「合格」したことになる。私たちは、この決定に怒りをもって抗議する。更田豊志委員長は「被災の影響は確認した上で新基準を満たしていると判断した」といっているが、979件ものパブコメでも示されているように、被災原発である女川原発には多くの問題を抱えている。以前、規制委員長自らが「安全とは申し上げていない」といったように、審査書案の決定が、原発の安全を保証するものでは決してない。
3月2日には資源エネルギー庁長官が村井知事を訪れ「地元同意」を要請した。今後、審査は「工事計画」、「保安規定」の認可の審査に入る一方、「地元同意」が焦点となる。今でも多くの県民が再稼働に反対している世論を、いかに宮城県・女川町・石巻市の首長の「再稼働不同意」につなげていくのかが問われている。私達は様々な手段で再稼働への動きを止める闘いを繰り広げていこう。

○「パブコメ」に対して、納得の「回答」にはなっていない!
 規制委員会は、979件のパブコメへ163ページの「考え方」、また「直接のご意見ではない」意見に対し53ページの「考え方」を公開している。
https://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000198805

 これへの精査はこれからだが、一見して分かるのは、「設計の詳細については、工事計画の審査において確認します」との記述が多いことだ。審査の過程で明らかとなった、防潮堤の地盤改良工事など、多くの安全対策工事の詳細がいわば後回しにされている。しかし、「パブコメ」の機会は今回が最後なので、その工事の詳細について公に市民が意見をいう機会が限られてしまうというのは問題であり、なにより宮城県の安全性検討会が、このように今後工事の詳細が明らかになってくる前に、「結論」をだそうという動きがあるのは看過できない。少なくとも、「工事計画」「保安規定」許可の過程で出される問題についても安全性検討会で議論すべきではないだろうか。

○知事と宮城県安全性検討会座長へ要望書提出

 その検討会に対してだが、2月19日、「脱原発県議の会」と17の市民団体の連名で、「女川原発2号機の安全性検討に係る要望書」を、知事と検討会座長あてに提出した。その内容は2つあり、一つは、審査の過程で明らかになった「炉心損傷後に耐圧強化ベントを使用した場合、基準の100テラベクレル(セシウム137の総放出量)を超える約360テラベクレルが放出される」という点に関して。そもそも、100テラベクレルまで放出していい、という基準自体が問題だとは思うが、この要望書では、「フィルターベントで確実に事故を収束できるのか」「格納容器が壊れるよりはマシとして耐圧強化ベントが使用された場合の、放射能の影響の再評価」について、安全性検討会では議論されていないので、しっかりと検証すること、および現状のままでは「合格」を受け入れることはできないとして、規制委員会に「合格取り消し」を求めること、を要望している。
 もう一つは、高島武雄さん起草の「東北電力の水蒸気爆発に関する説明に対する意見書」だ。これは2月7日の第22回検討会で東北電力が提出した資料への意見書だが、高島さんはすでにパブコメでもこの意見書より詳しい意見を提出していた。東北電力の資料では、このパブコメでの疑問に納得のいくものとはなっていないため、今回「意見書」の起草となった。水蒸気爆発は、万が一発生すれば大きな被害になるので、今回の意見書をもとに、さらに検証が必要ではないか。
 いうまでもなく、安全性検討会の「結論」が、知事などの「地元同意」の根拠となる重大な責任を負っている。したがって、検討会はまずこの「要望書」に真摯に応えるとともに、拙速な結論を出すことのないよう、これまでの議論で生じた様々な疑問点について納得がいかない部分をうやむやにすることなく議論を続けていくべきである。第22回で外部有識者の成合英樹さんを呼んだように、今後は高島武雄さんなどの外部有識者も呼ぶべきだ。

○自民党が「県民投票条例案」を審議させないという暴挙に!

 一方、この2月宮城県議会では、昨年11万人の直接請求署名をもとに提出され否決された「女川原発の再稼働の是非に係る県民投票条例」が、「脱原発県議の会」の議員提案という形で提出された。今回は、前回「『賛成』『反対』の2択では多様な民意を反映できない」という否決理由に対し、「どちらかといえば賛成」「どちらかといえば反対」も含めた4択にするなど、可能な限り議案が通りやすく工夫して臨んだ。
 2月26日には「県議と県民の対話集会」ももたれ、県議10人が参加していざ議会へ!と意思を固めたのも束の間、なんと3月3日県議会本会議の冒頭で採決が強行され、賛成少数で否決された。提案の趣旨説明も討論も質疑も委員会付託も“なにも無し”でいきなり採決するというのは前代未聞であり、議員が意見を述べる機会さえ奪い、議会の役割・機能を自ら否定する暴挙だ。採決の瞬間、傍聴席を埋めた県民から怒りと抗議の声が沸き起こったのも当然だった。
 なぜ自民党はこのような暴挙にでたのか? それはこの問題を正面切って議論することは県議にとってリスクが高いからだ。自民党の支持者の間でも、当然再稼働に反対、または県民投票に賛成の意見は少なくない。したがって、議会で時間をかけて審議され、この問題が焦点化されることは支持者の離反を招きかねないことから、できるだけ避けようという意識が働いたのは間違いない。
女川町議会でも、再稼働に反対の請願が2つ(町内外の市民団体)に対し、女川町商工会は賛成の請願を出すことができなかった。賛成の紹介町議員を見つけることができなかったからで「陳情」となったが、これも正面切って再稼働に賛成、という議員がいなかったことを示している。
 今後、知事は「市町村と議会の意見を聞いて」判断するとしている。また、女川町長や石巻市長は、「3ヶ月から半年は時間が必要だ」と言っている。そうした中、住民説明会や安全性検討会での議論をへて、6月議会が最大の焦点となってくるので、今後数ヶ月、どのように運動を進めていくのかが重要なポイントとなっている。

○3.22「県民大集会」を6月に延期  そこまでの3ヶ月が勝負

 2.26の規制委員会の「合格」を受け、県議会での議論と並び、県民の声を挙げる場として設定された3月22日の「さようなら原発みやぎ県民大集会」(勾当台公園市民広場)と「神田香織さん講演会」(日立システムズホール)は、現下の新型コロナウィルス感染拡大の状況に鑑み、実行委員会会議で延期することが決まった。また、女川町で予定されていた小泉純一郎元首相の講演会も同じ理由で延期された。このタイミングで声を挙げる場を失ったことは残念だが、しかし「地元同意」手続きの大きな山場となるとみられる6月議会(石巻市議会・女川町議会・宮城県議会)の前の6月中旬頃の開催を予定しているので、私たちはいかにしてそれまでの期間、再稼働を断念させるための運動を、創意工夫をもって進めるかが問われている。
 街頭・議会・検討会・対東北電力・女川石巻現地行動・裁判・他地域との連携など、さまざまなチャンネルを生かし、県民の大きなうねりを巻き起こすよう、この3ヶ月の闘いに取り組んでいこう!
  (風の会事務局 舘脇)