会報「鳴り砂」2019.1.20号が発行されました

会報「鳴り砂」2-098号(通巻277号)2019.1.20.

会報「鳴り砂」2-098号(通巻277号)2019.1.20.別冊

一面です

ありえない!! 「被災原発」である女川原発の再稼働は許されない!!

あの東日本大震災からもうすぐ8年になる。大きな被害を受けた沿岸地域でも、紆余曲折はありつつもなんとか復興への道を歩んでいる。
そうした中、女川原発2号機の再稼働の動きが加速している。すでに原子力規制委員会での審査会合は138回にのぼっている。(2018.12.20現在)これを受けて2019年春にも「合格」が出るのではないかといわれていたが、「東北電力の対応に不備」(『河北新報』2018.12.26)があったため、もう少し長引きそうだが、いずれにしても2019年内に「合格」がでる可能性は高い。

その一方で、昨年10月25日、東北電力は運転開始から35年を迎える女川原発1号機の廃炉を決定した。全国的な廃炉の波が、ついに東北電力にも達したのである。しかし、福島と同じマークⅠ型の1号機の廃炉は以前から囁かれていた。それがこのタイミングで決まったのは、まさしく1号機の廃炉と引き換えに2号機の再稼働を進めるために他ならない。

しかし、女川原発を動かす理由は、東北電力の都合以外は何もない。まずなによりも、女川原発は福島原発同様、東日本大震災で被災した「被災原発」であるということだ。震災当時5系統あった外部電源は4系統まで停止し、また火災を熾すなど数十か所にわたる被害を受けた。なかでも原子炉建屋の耐震壁には1130か所でひび割れが生じ、初期剛性が最大7割も低下してしまった。これに対し、東北電力は3500億円もの巨額を注ぎ込んで安全性対策工事を行っているが、その肝となる29mの防潮堤の杭が一部地盤まで届いておらず、追加の土壌改良工事が規制委員会から求められるという失態をさらしている。
さらに、震災以降、節電意識・体制の向上や他の電力会社への「切り替え」により、東北電力の販売電力量は、2010年度の827億kWhから、2017年度の720億kWh に、13%・107億kWhも減っている。そして2010年度の女川原発3機合わせた発電量は125億kWhなので、ほぼ女川原発での発電分が減ったということだ。あれだけ「原発がないと電気はどうするんだ」と言われていたが、蓋を開ければ、生活や企業活動になんら支障がない状態が維持されている。

何より、もし女川原発で事故が起こった場合、被ばくせずに避難することは不可能だということだ。女川原発のある牡鹿半島は3.11震災時に道路がズタズタとなり、車での避難は不可能になった。また半島部の先端の住民は船やヘリコプターで避難することを想定しているが、津波や、高潮などの荒天の際は不可能であり、「屋内退避」を基本とするよう考えているようだが、これでは万が一高線量の放射能が漏れ出た場合、被ばくを避けることはできない。さらに原発立地自治体の一つ石巻市の原子力避難計画によれば、全県27市町に15万人を避難させることを想定しているが、それぞれの避難所の運営は石巻市の職員が行うという。果たしてそんなことができるのか?
さらにいえば、国が発表した2045年の人口推計によれば、宮城県で最も人口が落ち込むと予想されているのが、他ならぬ女川町で、今の半分以下の約3000人にまで落ち込むと予想されている。もちろん震災の影響は少なからずあるが、同時に原発が地域おこしに全くつながらなかったことが、誰の目にも明らかになった。

一方、そうしたなか宮城県では、市民が中心となって、昨年10月2日~12月2日の2ヶ月間、「女川原発の再稼働の是非を県民投票で決めよう!」という県民投票条例制定の直接請求署名運動が取り組まれ、議会提出のために必要な有権者の2%の約4万筆を大きく超える11万筆以上の署名を集めるという、大成功を収めることができた。もちろんこの署名はあくまで「県民投票で決めよう」というものであり、再稼働反対の運動ではないのだが、実際には多くの原発に疑問をもっている宮城県中の方々がものすごく積極的に署名を集められたことが、この運動の成功につながったのは間違いない。
震災以降、全国でもそうだが、宮城県でも世論調査のたびに必ず「再稼働反対」が大きく「賛成」を上回ってきたのに、いざ「地元合意」となると知事や市長・町長、あるいは議会だけで決まってしまっている現状に、「それはないだろう」と思う多くの県民の潜在的な声が、今回本当に表に出た形となり、村井知事に対する大きなプレッシャーになるのは間違いないと思われる。
しかし、実際に「県民投票」が実現されるためには、この2月県議会で可決されなければならない。まさに会派を超えて、どうその必要性を議員ひとりひとりに納得してもらうかという課題が待ち構えている。その努力を行いつつ、また同時に多くの県民にこの問題を考えてもらう機会をつくって、再稼働をめぐる大きな議論の場を形成していくことが、今年の目標になるだろう。
原発をめぐる議論の先には「私たちは何を大事にしていくのか、何を残していくのか」という問題に突き当たると思うが、その議論を通じて宮城の民主主義を育んでいきたいと思う。

女川は、秋刀魚やホヤが揚がる素敵な港町だ。同時に、他の地方と同様(それ以上)に過疎や人口減少に悩んでいる。復興の巨額な資金が途絶えつつあると同時に、1号機廃炉に伴う電源3法交付金の減収規模が向こう10年間で10数億円に上ると言われるなか、女川のみなさんの気持ちにどう寄り添っていけるのかが、原発に頼らない町をつくるためにも大切だと思う。
(事務局 舘脇章宏)