会報「鳴り砂」2022年5月20日号が発行されました

会報「鳴り砂」2-118号(通巻297号 2022年5月20日発行
会報「鳴り砂」別冊2-118号(通巻297号 2022年5月20日発行

一面論文です

雨の中300人結集!「STOP!女川原発再稼働」を訴える!

春の足音も近づいてきた3月26日、仙台市の勾当台公園市民広場にて「STOP!女川原発再稼働 さようなら原発宮城県集会」が開催され、約300人が参加した。主催は「さようなら原発みやぎ実行委員会」。
3.11から11年がたち、あたかも原発事故などなかったかのような動きが強まり、また女川原発の再稼働がスケジュールにのぼってきている中、福島と連帯し、あくまで県民世論に基づき再稼働に反対する思いを示すために、この日の集会・デモは行われた。
 まずは主催者を代表して、「子どもたちを放射能汚染から守り、原発から自然エネルギーへの転換をめざす女性ネットワークみやぎ」の本田永久子さんがあいさつに立つ。本田さんは、3月16日に宮城県・福島県を襲った最大震度6強の地震をあげ、改めて原発の危険性を訴えた。その上で、「福島原発事故からこれまで、放射能被ばくへの不安や子育てについて、ともに語り、学び、力を合わせて、運動を広げてきました。あきらめずに続けてきた数知れない行動や金曜デモなどが、『原発は危険がいっぱいある』『トイレのないマンションだ』と多くの人が認識する力になり、また女川原発を取り巻いて次々と起こる事故や問題に対しても、連携を取りながら、国や県、東北電力に、厳しく交渉する力になっています。『子どもたちを放射能汚染から守ろう』と堂々と言える宮城の現在を作ってきたことを確信に、女川原発再稼働をストップさせるため、力を合わせて頑張りましょう」と力強く訴えた。
 続いて、「ふるさとを返せ 津島原発訴訟」原告団・元浪江町議の馬場績(いさお)さんと、弁護団共同代表の1人である大塚正之弁護士が発言に立つ。
 「津島原発訴訟」は、全域が帰還困難区域である浪江町津島地区の住民が、国と東電の責任を求めて15年に提訴したもので、21年7月30日の一審判決では、国と東電に総額計約10億円の支払いを命じたものの、除染による原状回復請求は退けた。これをうけ、あくまで「ふるさとを元に戻してほしい」と原告が控訴し、現在仙台高裁での2審を準備中だ。
馬場さんは、ロシアのウクライナ侵攻を批判し、原発の危険性が改めて浮き彫りになったことをあげた上で、「原発は、自然もふるさとも全部破壊する。女川原発を再稼働させてはならない!」と発言。実際に原発の事故によりふるさとを失った当事者の言葉だけに、参加者も真剣に頷く。また大塚さんは、裁判官から弁護士に転身された熱血漢らしく、「避難計画に実効性がない限り、決して原発を動かしてはなりません。そして、実効性のある避難計画は無理なのです」と熱く訴えた。
 次に、女川原発再稼働差止訴訟原告団副団長・元北上町十三浜漁協組合長の佐藤清吾さんが発言に立つ。北上町は今は石巻市に編入されてUPZ内だが、佐藤さんは、漁協組合長として、震災前から、六ヶ所再処理工場の稼働に反対するなど、一貫して国の原子力政策に反対してきた。この日の集会でも、福島原発から流されようとしている汚染水の排出に断固反対し、「原発の周辺に『自分の土地を売ってもいい』という私有地があるんです(汚染水保管タンクが増設可能ということ)。国は放出ありきで、その他の手段を真剣に検討していない」と批判した。
 最後に、大崎住民訴訟原告団副団長・大崎耕土を放射能汚染させない連絡会会長の若井勉さんが、裁判での検証に寄せられた300万円以上にものぼるカンパに謝意を示したうえで、「この検査によって、煤塵が捕捉され、間接的にセシウムが漏れていることが明らかになりました。この成果をうけ、今後の裁判でなんとか放射能汚染廃棄物の焼却処分を止める判決を勝ち取りたいと思いますので、ご支援よろしくお願いします」と発言した。
 次いで、緊急アピールとして、在日ロシア大使へのメッセージを送ることを参会者一同で確認。その内容は「貴国は、ジュネーブ条約が付属議定書第一の第56条で、原子力発電所を攻撃の対象としてはならないと規定しているにも関わらず、ウクライナの原子力発電所を攻撃しました。稼働中の原子力発電所への攻撃は、人類史上で初めてです。制圧している原子力発電所から速やかに軍隊を撤退させることを求めます」などというものだ。
 集会の最後に、「原発は放射能を拡散させる潜在的な『武器』であり、女川原発再稼働に反対して、安心して暮らせる社会を作っていこうという「集会決議」をあげ、雨の仙台市内を、コロナ対策をとって間隔をあけながらも、元気にアピール行進した。

 この集会のあと、東北電力は3月30日、女川原発2号機について、安全対策工事完了を2023年11月に延期し、2024年2月に再稼働させる方針を明らかにした。
しかし、安全対策工事の完了が延期された最大の理由である「圧力抑制室(サプレッションチェンバ)の耐震補強工事」については、いくつもの疑問がある(なぜこの段階で大規模な補強工事を追加で行なうことになったのか? 工事はいつから行われるのか? その予算は?等々)。
そもそも圧力抑制室は直径約50m、断面の高さ約10mの巨大なドーナツ型施設で、事故時に格納容器全体の圧力が上昇した場合などに冷却して圧力を下げる。また非常用の冷却水供給の役割もあり、常時約2900トンのもの水を貯めている。耐震補強の予算は、これまでの安全対策工事にかかるとされてきた3400億円とは別立てとのこと(女川町議会原発対策特別委員会での東北電力の説明)。この工事は基準地震動が580ガルから1000ガルに上がったことによるもので、施設内に32本(16本×2セット?)の巨大な羽根(部材)を、1.5mの開口部から搬入して溶接するという「これまでに経験のない工事」(3.11以降の地震で損傷したわけではない)と、東北電力は説明している。
なぜこの段階でこの「経験のない工事」が必要になったのか、またこの難工事が順調に行われるのか、さらに他に耐震補強などが必要な箇所がないのかなど、今後東北電力に迫っていく必要がある。
しかし、これだけの労力や費用をかけて原発を再稼働しても、またいつ地震やトラブルで止まるか分からない、さらに事故や使用済み燃料の処理もまったく解決していない原発に固執するのは、もうやめたほうがいいのではないか。今年4月の『河北新報』の調査でも、やはり再稼働に反対する県民は56%と過半数をキープしている。この県民の思いを実現するため、これからも声をあげ続けよう。
(舘脇)