会報「鳴り砂」2022年7月20日号が発行されました&女川原発2号機の安全対策に関する質問書と東北電力の回答

会報「鳴り砂」2-119号(2022.7.20発行)
会報「鳴り砂」2-119号(2022.7.20発行)別冊
2022年5月10日提出 女川原発2号機の安全対策に関する質問書と東北電力の回答

一面論文です

風の会公開学習会vol.18『元原発労働者が語る―原発労働と3.11女川原発の実態』
放射線管理区域での生活を強いる帰還事業

今野寿美雄さんは1982年より「放射線作業従事者」となり、主に福島第一・第二、もんじゅそして女川原発に従事、火力発電でも働いてきた。3.11当日はたまたま女川原発に出向、被災した。「子ども脱被ばく裁判」「浪江原発訴訟」原告です。

■原発の労働者になったこと、その勤務とは
質問に答える形で、原発労働者になるのは地元浜通り(福島の海岸沿いの地域)では普通のことのようだ。原発労働者として助かる面としては、線量の高い場所での作業に入ると一日の仕事時間は短くてありがたかったと。イベントなどで芸能人などに会えることもあった。
他方、定期検査の(作業管理者としての立場になって)書類の整理作成のために朝帰りも多かった、責任も重かったとも。原子炉の下位部分にも入ることや燃料棒操作器具の点検などの話は迫真性があった。点検の際の緊急停止(スクラム)の時は「ものすごい音がする」と。
放射線の高い場所ほど、要は「人力とアナログの世界(デジタルは放射線に弱い)」だとも。なるほど。火力発電と異なり、ススだらけになったりすることもなく、原発の作業環境は(被ばく問題さえなければ)きわめてクリーン。しかし、防護服での夏の作業はとても苦しかったと述懐。今野さんに見せていただいた「放射線管理手帳」。「俺たちは〈貯金通帳〉と呼んでいた」と。確かに被ばくの場所と量が記入、「貯金」されている。減ることのない「貯金」だ。
 ちなみに今野さんはトータル被ばくが13mSvだったのに、その大半の12mSvを一回の原子炉内の作業で被ばく(福島第一原発三号機の原子炉下部にて)した。やはり危険な作業だ。

■3.11と家族との再会
 何しろ道路が寸断され、女川原発から出るに出られず、自衛隊の緊急道路補修の後、女川を脱出。石巻で、ドイツ経由のメールで家族の無事を知る。タクシーや那須塩原からは新幹線で移動し、浪江から避難した家族と何とか再会。とにかく「避難」なんてものではなく、逃げるだけでもう浪江には戻れないと。
 この避難の過程で被ばくした。鼻血が出た、息子も同じで二年ぐらい具合が悪くなったと。今野さんの家は平安時代から千年も続く伝統ある家だ。しかし、故郷を捨てるしかなく、新築してから九年しか住んでいない家も解体した。こんな汚染のひどい場所に子供たちを連れて帰る気はないと。「除染」はでたらめであり、帰還事業は被ばくのリスクに子供たちをさらす。

■帰還住民を思う
ここで、福島の放射能汚染地域に帰還する人たちを思い起こさずにはいられませんでした。原発労働者は、年間被ばく限度量(年間20mSv)や一日被ばく量や総被ばく量も定められており、労働者の放射線被ばく量は一定計算されます。(原発の事故がなければ)被ばくが可視化され管理が一定可能でしょう。職業としての原発作業者の給料は、被ばくによる健康リスクへの対価という面も当然あると思います。
福島の「除染→線量低下」したとされる地域への住民の帰還事業は、原発内部のような放射線管理区域での生活を住民にしろ、というのに似ていて、それだけでもひどい話です。しかし、現実の広大な生活空間で移動する住民は、非除染区域に囲まれ、測定不能のかなりの被ばくを受ける(土埃や、流水、偶然の立ち入りなどで)でしょう。帰還政策は全く非科学的な無理な事業であり、中止すべきです。チェルノブイリのように法的裏付けの下で「立ち入り禁止」にすべきです。

■「放射能神話」は許さない!
今野さんも論及したように、政府は破綻した「原発神話」から「放射能神話」に乗り換えを図っています。「放射能はそれほど恐れなくてよい」として再稼働を推進する気です。福島県民の帰還事業では、年間20mSv「大丈夫」論も大手を振っていますが、そもそもは前に述べたように「原発労働者の被ばく限度基準」なのです。東電、関電ほか電事連ら“原子力村”は、自己利権しか眼中になく、再稼働のためにでたらめを言っています。

■事故が起きれば放射能被害は必至だ
 いったん事故となり、放射能物質のランダムな拡散は容易に予想ができず、避難途中で放射能プルームに遭遇し被ばくします。後になってもホットスポットや高汚染地帯に隣接して生活をすれば、思わず知らずに被ばくしてしまいます。今野さんの話の中でも、3.11以後に福島の人たちの健康異常が増大していること、同僚の原発労働者もむしろ事故後に「バタバタ死んでいる」と。さらに疫学的調査(岡山大学津田教授)でも、有意に汚染地域の子供たちの甲状腺がんが増大していることを裏付けています。現在、避難区域の人の医療は無料。しかし、福島原発事故による健康被害を頭から否定する御用「専門家」らにより、避難解除十年でこの制度は打ち切られようとしており、子供も十八歳での打ち切りが検討されています。東電や政府の無責任や不誠実には怒りを禁じえません。会場とZOOMで65名参加でした。 
 (仙台市・阿部文明)