会報「鳴り砂」2023年5月20日号が発行されました

会報「鳴り砂」2-124号(通巻303号)2023.5.20
会報「鳴り砂」2-124号(通巻302号)別冊 2023.5.20

(巻頭論文です)

女川原発2号機の再稼働STOPの声を私たちは上げ続ける!
「県民集会」に400人&宮城県知事へ要望・質問書提出

 3月25日、まだ肌寒い曇り空のもと「STOP!女川原発再稼働 さようなら原発 宮城県民集会」が仙台市勾当台公園市民広場で開催され、400名の市民が参加した。主催は「さようなら原発みやぎ実行委員会」。
女川原発2号機の再稼働が予定されている2024年2月まで1年を切り、また福島原発で発生する汚染水の海洋放出がこの春~夏にも強行されようとするなか、さらに原発回帰のGX推進法案が国会で審議されている最中での、非常に重要なタイミングでの集会の開催となった。会場には思い思いののぼり旗やプラカードを手にした市民が続々集まり、「いてもたってもいられない」という思いが広がった。
 あいコープみやぎの鈴木さんの司会で始まった集会ではまず、「女性ネットみやぎ」事務局長の本田永久子さんが主催者あいさつに立つ。「ウクライナ侵攻を続けるプーチン政権に抗議するとともに、この戦争も一因となっているエネルギー危機に対し、岸田政権は、これまでの政策を大転換し、原発の回帰を鮮明にしています。しかし、そうであるならば、自然エネルギーを強力に進めるべきです。岸田政権は、一方で軍備費増強を掲げながら、福島の避難者の生活支援を先細りさせようとしています。わたしたちは福島を決して忘れません。また、大崎市民による放射能汚染廃棄物の焼却を止める裁判も闘われています。いまでも山菜やキノコ、タケノコなどは出荷制限を受けていますが、地元住民は『焼却せず安全な形で保管管理せよ』と訴えています」「私たちは、福島原発事故から毎年「女川原発再稼働ストップ」の旗をかかげて共同して県民集会に取り組んできましたが、50年前から原発反対を訴えてきた漁民・住民の運動が、この間の大きな力になってきました。また、「脱原発をめざす宮城県議の会」も大きな力になっています。この集会は、宮城県でのこれまでの粘り強い取組みの集約点であり、明日からの闘いの出発点です。原発ゼロを求めて、引き続き一緒に闘って参りましょう」「私たち実行委員会では、『河北新報』一面での意見広告を9月に出すことを計画しています。ぜひみなさまのご協力をお願いします」。

次に福島県新地町漁師の小野春雄さんが発言に立つ。小野さんはこの間、汚染水の放出に反対する思いを各地で表明し、話題になっている。「新地町で3代、55年にわたり漁師をしています。政治家は海のことを何一つ分っていません。すでに実害としてスズキ、クロソイからセシウムがでています。海はゴミ箱ではありません。もともと毒である汚染水を海に流していいわけがありません。海は人間のものではない、魚の住処ですよ。漁師は、おいしい魚を消費者に食べてもらうために、寒いなかでも漁にでているんです。菅・岸田といった政治家は『待ったなし』というが、土地は余っていますよ。海に流せば相当な被害が起こるんです。そもそも凍土壁が失敗したことが大きな原因なんです。私の目標は、100歳まで現役で漁師をやることです。廃炉を見届けてお墓に入りたいんです。30年後50年後に実害として影響がでてきたら、一体誰が責任を取るんですか! 今の政治家はだれもやらない。風評対策として政府は魚を買い上げるといっているが、私たちは買い上げてもらうために魚をとっているのではありません。何で福島なんですか。この電気を使っているのは東京なんですよ。12年前、東京の築地に視察にいったら、『福島県の魚はいりません』といわれ、がっかりして、働く気力を失いました。だけど12年かけて、魚もやっと元に戻りました。しかしこれで汚染水を流したら、また魚が売れなくなります。流さなくてもいい方法は100%あるんです。岸田総理は『聞く耳をもつ』と言いますが、何も分っていません。政治家の暴走を止めるには皆さんの力が必要です」。このストレートな怒りが会場の共感を呼ぶ。

 次に、女川原発再稼働差止訴訟原告団の石巻市民、長沼利枝さんが発言に立ったが、原告団やあいコープみやぎの仲間総勢10名ほどが取り囲んでサポートし、とても賑やかだ。
長沼さんは2018年の県民投票条例制定を求める署名運動のことから話を始め、「2019年、仙台地裁に知事と石巻市長に対し地元同意差し止め仮処分をしましたが、地裁・高裁で棄却。2021年5月に、今度は東北電力を相手に裁判を起こしました。これまで90回におよぶ情報公開請求を行い、避難計画では原子力災害から住民は避難できないことが明らかになってきました」。
 ここで、「避難経路では交通渋滞が起きる!」「退避場所に人や資材が届かず開設できない!」「受付ステーションは機能しない!」「避難バスの確保が困難!」「トイレや休息、社会的弱者への配慮がない!」「避難途中で被ばくし、人格権が侵害される」と、演劇さながらにあいコープのメンバーが代わる代わる声を上げる。
 続けて長沼さんは、「危機感を覚えたのか宮城県はマイナンバーカードに紐付けた避難のスマホアプリを開発。また、東北電力は避難道路の建設費30億円を肩代わりする協定を結んでいますが、これはすべて電気料金として住民が支払うことになります。私たちは住民の真の願いに心を寄せ、親から子、子から孫へと、これまで育んだ日々のなりわい、暮らしを守り、よりよい未来のために、力を合わせていきましょう」と発言を結んだ。

 集会の最後に、「福島の苦しみは私たちの苦しみです。宮城にも東北にも日本にも原発は要りません。放射能の不安のない、自然とともに平和に暮らせる社会を作りましょう」とする「集会宣言」が、参加者一同の賛同で採択された。
 宮城のうたごえ協議会のみなさんの歌に送られて、デモ行進が出発。発言者を先頭にしたデモは、一番町商店街を貫く長蛇の隊列となり、街行く人々の大きな注目を集めた。
集会・デモの様子はこちらから見ることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=09VjN8jmknU

●宮城県知事へ「女川原発の安全性に係る検討会(仮称)の設置を求める要望書」を提出

4月17日、宮城・岩手の市民12名が、宮城県知事(対応は原子力安全対策課)に対し、2つの要望書を提出した。一つは、岩手・宮城の6団体が提出した「女川原発の重大事故を防ぐため監視監督を徹底することを求める要請・質問書」で、もう一つは、宮城県内38団体が提出した「女川原発の安全性に係る検討会(仮称)の設置を求める要望書」だ。
前者の「要請・質問書」では、宮城県知事に対し「福島原発事故の教訓を基に『絶対に女川原発で重大事故を起こさせない決意』のもと、国任せではなく主体的かつ厳重に監視監督を行い、人々の生命,生活,環境を守っていただきたいと強く要請いたします」とする要請に加え、昨年9月12日にHPで東北電力が公表した「1号機の原子炉建屋天井クレーンにおける走行部の支持台座のき裂」について、昨年11月の東北電力との交渉を踏まえて、監視する立場である宮城県の対応を問う質問を提出した。
以下、項目としては
1)東北電力がクレーン事故について国へ報告しないのは納得いきません。監督官庁へ報告せずに済ますような姿勢は安全をないがしろにする危険な姿勢ではないでしょうか。
2)クレーン支持台座のき裂原因を不明確のままで済ませてよいのでしょうか。
3)天井クレーンが重量物運搬中に大地震に見舞われた場合の対処法や固有周期等の質問に東北電力は答えませんでした。クレーンの固有周期が商業機密とする理由が納得いきません。
4)宮城県への事故の詳細報告や事後対策の報告を迅速に情報公開してください。
 というものだ。また、その他
5)3.11大地震等で剛性が7割低下した建屋や使用済燃料プールは大地震に耐えられるのでしょうか。
6)観測史上最大の地表変動による女川原発への影響は解明されているのでしょうか。
7)東北電力には絶対に大事故を起こさないという真摯な姿勢が見られませんでした。
8) 昨年12月27日宮城県と女川町,石巻市等七市町が実施した東北電力の立入り調査について、立入り調査の報告の内容とその評価をお知らせください。
9) 市民の代表を加えた,常設「安全監視検討会」の設置を要望します。
10)福一原発1号機はペデスタル破損により地震で圧力容器等倒壊する危険があり,安全対策を国,東京電力へ要請してください。
11)原発が攻撃を受けた場合,放射能の大量放出により私達は難民になります。絶対に戦争をせず,平和外交を求めてください。
といった項目も質問している。

一方、宮城県内38団体が提出した「女川原発の安全性に係る検討会(仮称)の設置を求める要望書」では、県などが女川原発2号機の再稼働に同意したあとに原発の耐震性に関わる重要な問題が次々と明らかになったことから、県はこうした問題を独自に検証する検討会を設置したうえで、重大事故を防ぐための監視や監督を徹底するよう求めている。これは、先の宮城県議会2月定例会で、県独自に安全性を検証する機関を設置することを求める提案に対し、知事は必要性があれば検討する旨を答弁したことを受けたものでもある。
この要望の第1の理由は、2020年 1月の「地元同意」後に、原発で想定される最も強い地震の揺れを示す「基準地震動」(1000ガル)に格納容器の一部(サブレッションチェンバー)が耐えられない可能性があることがわかり、溶接による補強工事が必要になったことである。
また第2の理由は、1号機の原子炉建屋の核燃料の交換を行うクレーンを支える台座に、昨年3月に起きた福島県沖地震の影響とみられる8か所の亀裂が見つかったことだ。この時の女川原発で観測された最大加速度は367.5ガルで、1号機の基準地震動(580ガル)よりも小さい加速度で重大な損傷が起こったことになる。このことから、過去の地震の影響はないのか、連続する後発地震に耐えられるのか等の観点から、改めて、再稼働が予定されている2号機の地震対策を全体的に検証し直す必要があるということだ。
特に今、宮城県独自の検討会が早急に求められているのには、もう一つ重大な理由がある。それは、現在国会で審議されているGX推進法案を策定する過程で、経産省が原子力規制委員会に強力に根回し(規制庁と事前打ち合わせ)していたことが発覚し、原子力規制委員会の独立性に重大な疑義が生じていることだ。こういう状況の下では、県民の命と安全を守るために、宮城県政が自治体として持つ権限を発揮することが求められていると、要望書では訴えている。
 これらの2つの要望・質問書への回答期限は5月であり、その際は改めて交渉の場をもつ予定だが、県は原発の安全対策をもう一度しっかり検証すべきであり、真摯な回答を求めるものである。

 耐震の安全面や避難計画の問題性(5月24日の仙台高裁判決にも要注目)だけでも、女川原発は再稼働すべきではない。この9月に「意見広告」を出そうという運動も準備されているが、3月25日の集会で示された民意を、今後さらに大きく強く発揮していこうではないか。
(事務局 舘脇)