東北電力株式会社第95回定時株主総会 共同株主提案議案(2019.4.26)

2019年4月26日、「脱原発東北電力株主の会」が公開した、今年の共同株主提案になります
東北電力株式会社第95回定時株主総会共同株主提案議案2019.4

第1号議案 定款一部変更の件(1)
◎議案内容
  以下の章を新設する。
 第7章 原子力発電事業からの撤退と原子力事業他社への出資の中止
第39条 当会社は、経営面でも安全面でもリスクの大きい原子力発電事業から撤退し、原子力事業他社への出資・債務保証を取りやめる。
○提案の理由
当社は、女川原発2号機と東通原発1号機を再稼働させるための安全対策工事に、3,500億円あまりを投じると公表しています。また廃炉を決定した女川原発1号機の廃炉費用も419億円と試算しています。
また福島原発の廃炉・汚染水処理・賠償・除染の事故処理に、最大80兆円掛かるとの民間シンクタンク「日本経済研究センター」の試算も公表されています。税金・電気料金として徴収出来るとして許されていますが、電力自由化で厳しい経営環境を迎えている現在、原発は経営面でのリスクが大きいことがますます明らかになって来ています。
そして燃料デブリの取り出しの見通しが立たず、汚染水処理の困難さなど、福島原発事故から8年の経験は、安全面でのリスクの大きさも様々に明らかになっています。そして大量に発生する廃炉廃棄物の処分など、作り出してしまった莫大な放射能の処分問題は、解決が待ったなしの状況です。
  原子力発電事業からの撤退を、決断する時期に来ています。

第2号議案 定款一部変更の件(2)
◎議案内容
  以下の章を新設する。
 第8章 女川原子力発電所1号機の廃炉計画の策定
第40条 当会社は、女川原子力発電所1号機の廃炉に当たって、速やかに廃炉計画の策定・公表をすることで、県民、消費者への信頼、透明性を確保する。
○提案の理由
当社は、女川原発1号機の廃炉を昨年10月25日表明しました。廃炉費用は2017年度末想定より13億円少ない419億円とのことです。しかしながら、廃炉作業の具体的計画は何一つ明らかにされていません。村井宮城県知事からも「透明性を持って説明してほしい」と注文されている始末です。
廃炉工程において使用済み核燃料の821体の運び出しが重要な関門とされています。しかし、日本原燃再処理工場は稼働の見通しが立たず、使用済み燃料は冷却の必要性から、女川2・3号機のプールに留め置かれるのではないか言われています。ところが2・3号機のプールも空き容量は多くはなく、10年程度が限度とされています。
更には廃炉に伴って低レベル放射性廃棄物が出ますが、その管理は電力各社の責任とされ、女川原発敷地内で保管されます。従って、地元にとっては大きな不安要因となるのは必定です。廃炉計画の策定・公表が急がれます。

第3号議案 定款一部変更の件(3)
◎議案内容
  以下の章を新設する。
第9章 日本原子力発電株式会社との電力供給契約の破棄
第41条 当会社は、電力自由化に対応し財務の健全性を確保するため、日本原子力発電株式会社との間の電力供給契約を破棄する。
取締役会は、日本原子力発電株式会社からの資金回収計画を策定し、毎年、株主総会に報告する。
○提案の理由
当社は、日本原電から実際電気(商品)を受電していないにもかかわらず、他社購入電力料という名目で、基本料として、2011年以来毎年100億円前後のお金を支払い続け、すでに800億円以上も支払っています。このような可笑しな取引、電力供給契約は破棄されるべきです。
日本原電が保有する東海第二原発は、「被災」原発であり、運転期限40年を越えた「老朽」原発です。原子力規制委員会から新規制基準適合性審査の「合格」を受けたとはいえ、これから約3,000億円の安全対策工事費を掛けたとしても、この先まともに稼働するのかも分からず、当社の有益な電源にはなりません。また、地元や関東圏の住民からも再稼働反対の声が日増しに高まり、地元6市村などの住民合意を得られる見通しはありません。
日本原電は、当社や国有化されている東京電力の資金支援を充てにしている金融機関からも見放された「経理的基礎」のない会社です。支援を中止し、いままで支払った資金を早急に回収すべきです。

第4号議案 定款一部変更の件(4)
◎議案内容
  以下の章を新設する。
 第10章 自治体の事前了解
第42条 当会社は、原子炉施設及びこれと関連する施設等を新増設しようとするとき又は変更しようとするときは、事前に全ての原子力災害対策重点区域内の自治体と協議し、了解を得るものとする。
○提案の理由
2012年に国の「原子力災害対策指針」が改定され、住民避難計画を策定しなければならない原子力災害対策重点区域が8~10km圏(EPZ)から30km圏(UPZ)に拡大されました。これは福島原発事故の現実を踏まえた国が、事故前はEPZが負うとしていた被曝リスクを、事故後にはUPZが負うと認めたということです。であるからには、UPZ自治体にはかつてのEPZ自治体と同等の権限が認められなければなりません。原発事故リスクとそれに対処する「責任」を負うからには、それに伴って「権利」が発生するのは当然のことです。
さらに先の「女川原発再稼働の是非を問う県民投票条例の制定を求める署名」では、UPZ自治体における署名率が、立地自治体と同様に非常に高く、UPZ自治体住民が「発言権」を求めていることがわかりました。
当社は、女川原子力発電所の施設の新増設及び変更に当たっては、立地自治体(=EPZ自治体)の2市町と同等の協議をUPZの5市町とも行ない、事前了解を得るものとします。

第5号議案 定款一部変更の件(5)
◎議案内容
  以下の章を新設する。
 第11章 送配電部門の所有権分離
  第43条 当会社は、送配電部門を別会社化し、発電・販売部門会社との資本関係を解消して、中立性・公平性を確保する。
○提案の理由
  2020年4月までの送配電部門の法的分離(いわゆる「発送電分離」)が求められており、当社においても「カンパニー制の導入」等の組織整備が行われているところです。
  この「発送電分離」は、これまで各地域に一社の電力会社が発電・送配電・販売を独占し電気料金を「総括原価方式」で決めていた仕組みを転換する「電力システム改革」の総仕上げであり、地域の電力システムに健全な競争とイノベーションをもたらす鍵です。
  そのためには、送配電部門が、既存の電気事業者と新規参入した事業者を平等に扱う中立性・公平性を確保することが最も重要です。すなわち、電柱や電線等々の送配電網は言わば道路と同様の「公共財」であること、だからこそ引き続き「地域独占」が許されることを明確にしなければなりません。
よって当社は、別会社化した送配電部門を持株会社が支配する「法的分離」にとどまらず、送配電部門会社と発電・販売部門会社との資本関係を解消する「所有権分離」へと進むべきです。