東北電力株式会社第96回定時株主総会共同株主提案議案

「脱原発東北電力株主の会」が、今年も株主提案をします
4月28日に行われた記者会見の資料になります
東北電力株式会社第96回定時株主総会記者会見資料共同株主提案議案

東北電力株式会社第96回定時株主総会
共同株主提案議案

第1号議案 定款一部変更の件(1)
◎議案内容
  第1章 総則 の(目的)第2条 を以下の通り変更する。(下線は変更部分)
  (目 的)
 第2条 当会社は、次の事業を営むことを目的とする。
(1) 電気事業
ただし原子力発電は行わない。
(2) 電気機械器具の製造、販売及び賃貸
(3) 冷水、温水、蒸気等の熱供給事業
(4) ガス供給事業
(5) 情報処理及び電気通信事業
(6) 不動産の売買、賃貸借及び管理
(7) 土木及び建築工事並びにこれらに関連する調査、企画、測量、設計、保守、及び監理
(8) 前各号並びに環境に関するエンジニアリング、コンサルティング及び技術・ノウハウの販売
(9) 前各号に附帯関連する事業
○提案の理由
 原子力発電はウランの核分裂を利用する技術で、電気を発生させると同時に大量の放射性物質を生み出します。この放射性物質は放射線を出し生命を傷つけます。この放射性物質は一度作り出すと人間の手で消すことが出来ず、放射線を出しながら減って行くのを長い年月待つしかありません。
日本で原子力発電が始まって以降50年以上が経ちますが、この放射性物質の処理・処分の方法は確立されておらず、これからの見通しもたっていません。私たちの子孫に負の遺産として残していくことになります。
しかもこの放射性物質は作り出された直後は膨大な崩壊熱を発生させるため、冷却することが出来なくなれば福島原発事故の様に炉心溶融させ、大量の放射能を環境に放出させる事態が起こります。
これまで発生させた大量の放射性物質の処理処分の方法も見つけられないまま、原発を再稼働させて新たに放射能を生み出すことは人類に対する犯罪です。
原子力発電を行わないことを定款に明記します。

第2号議案 定款一部変更の件(2)
◎議案内容
  以下の章を新設する。
 第7章 原子炉設置変更許可の辞退と申請の取り下げ及び提出の断念
第39条 当会社は、第1章第2条に原子力発電を行わないことを明記したのを受けて、女川原子力発電所2号機の設置変更許可を辞退し、申請中の東通原子力発電所の申請を取り下げ、提出を予定している女川原子力発電所3号機の原子炉設置変更許可申請は断念する。
○提案の理由
日本の原発で炉心溶融事故は起こらないとする安全神話は福島事故で崩壊しました。新規制基準では炉心溶融事故を前提にその対策が検討されています。この新規制基準は世界一厳しいと言われますが、この間の女川原発2号機の審査会合の経過を見ると、不備の多い基準であることが明らかになりました。
炉心溶融対策として格納容器下部にコアキャッチャーを装備する事が世界の主流ですが、新規制基準がこれを求めていない事が象徴的です。
そしてこれまで原発の五重の壁で放射能は外部には漏れないとされていたのが、格納容器が高温過圧になって壊れるのを防ぐために、ベントという手法が許される事になって、放射能が大量に発電所外に放出される可能性が高まりました。
この様な原発の安全性を保障しない新規制基準への適合性は求めず、当会社の定款の第1章・第2条に明記した「原子力発電は行わない」の目的に則り、全ての申請を辞退、取り下げ、断念します。
第3号議案 定款一部変更の件(3)
◎議案内容
  以下の章を新設する。
第8章 放射性廃棄物の発生者責任
第40条 当会社は、女川原子力発電所1号機の廃炉に当たって放射性廃棄物の発生者責任を果たすため、具体的かつ実効性のある処分計画を早急に策定・公表をすることで、消費者への信頼を確保する。
○提案の理由
原子力規制委員会は、2020年3月18日当社申請の女川原発1号機の廃炉工程をまとめた「廃炉措置計画」を認可しました。女川原発1号機の廃炉工程は4段階に分かれ、20年度に着手し、34年を要し、完了は53年度で費用は419億円とされています。
しかしながら、この廃炉計画には重要な事項が欠落しています。解体によって放射性廃棄物が生じますが、その処分先が決まっていないということです。更に、使用済み核燃料については敷地内に乾式貯蔵施設を設けることなどが検討されているようですが、期間、搬出先も未確定のままです。特に搬出先と目される日本原燃の再処理工場の完成時期も延期に次ぐ延期で不透明です。
結局、当社の申請による廃炉計画は絵に描いた餅に過ぎず、県民、消費者を納得させることはできません。具体性、実効性のある計画の策定、公表が急がれます。

第4号議案 定款一部変更の件(4)
◎議案内容
  以下の章を新設する。
 第9章 原子力災害対策への責任
第41条 当会社は、実効性ある避難計画の策定と避難訓練の実施によって住民の被ばくを防ぐことを、原子力発電所事業者としての最重要の課題とし、その実効性が担保されない限り原子力発電所を稼働させない。
○提案の理由
昨年、石巻市民17人が、女川原発の重大事故を想定して同市が策定した避難計画には実効性がないとして、同市と宮城県を相手に、女川原発2号機再稼働への同意の差し止めを求める仮処分を仙台地裁に申し立てました。その申立書の中で、「大渋滞で30キロ圏を脱出できない」「病院や高齢者施設入居者らの避難が困難」など、避難計画が現場を見ていない机上のプランであることを明確に論証しています。
当会社はホームページで、「原子力災害対策については,事業者の責務として,(中略)万が一の事態に対する万全の備えを行うことが最重要の課題であると認識し,対応を行っております。」「避難計画の充実化に向けて,事業者の責任を果たすべく,自治体と協議・連携をしながら,(中略)最大限の協力を行っていきます。」と明確に述べています。この言葉の通り、住民の被ばくを防ぐ実効性ある避難計画の策定と避難訓練の実施に、事業者として責任を持ち、その実効性が担保されない限り女川原発2号機の再稼働は行わないこととします。

第5号議案 定款一部変更の件(5)
◎議案内容
  以下の章を新設する。
 第10章 地域に寄り添う取り組み
  第42条 当会社は、女川原子力発電所2号機再稼働の是非を問う県民投票の実施を宮城県に求め、投票の結果に示された県民の意思に従う。
○提案の理由
2018年秋、宮城県で取り組まれた「女川原発再稼働の是非を問う県民投票条例」の制定を求める直接請求署名運動は、わずか2カ月間で11万1,743人もの有効署名を集めました。その条例案が上程された宮城県議会はかつてないほど注目を集め、連日傍聴席が県民で埋め尽くされ、県内ニュースのトップで報道されました。そこに示されたことは、多くの県民が「原発」について自分の「思い」「考え」を持っており、意思表示する機会を求めていることでした。
「より、そう、ちから。」をコーポレートスローガンとし地域に寄り添う取り組みを進める当会社としては、宮城県民の命と暮らし、子ども達の未来に重大な影響を与える女川原発2号機の再稼働に当たって、宮城県民の意向を十分に把握しそれに基づいて判断する必要があります。そのための有効な手段である県民投票の実施を宮城県に求めます。県民投票が実施されれば、その投票結果に示された宮城県民の意向に従うものとします。

第6号議案 定款一部変更の件(6)
◎議案内容
  以下の章を新設する。
第11章 当会社以外の原子力発電事業者等への支援の禁止
第43条 当会社は、第1章第2条に原子力発電を行わないことを明記したのを受け、また電力自由化に対応し財務の健全性を確保するため、当会社以外の原子力発電事業者への支援を行なわない。および原子力発電関連事業での自治体への寄付等を行なわない。
具体的には、
1.原発専業事業者の日本原子力発電株式会社への「基本料」の支出及び出資・債務保証は行わない。
2.原子力発電関連事業での自治体への寄付行為を禁止する。
○提案の理由
「関西電力金品受領不祥事」にみられるように、原発事業が「聖域化」し、水面下では不明瞭な会計処理が行なわれてきました。
当社でも、日本原電の東海第二原発から実際電気(商品)を受電していないにもかかわらず、震災以降9年間、株主中間配当金と同額の約100億円が毎年「基本料」という名目で、資金回収計画もないまま無償提供されてきました。「被災」した東海第二原発は、運転期限40年を超えた「老朽」原発で、地元や関東圏の住民からも再稼働反対の声が日増しに高まり、住民合意を得られる見通しはありません。ところが、当社は、これからも他社の約3,000億円の安全対策工事費の債務保証を行ない、さらに数100億円も無償提供するという「経済合理性」にも当てはまらないことを行なおうとしています。
また、敷地地盤の活断層問題で東通原発の再稼動が見通せないのにも関わらず、当社は、企業版ふるさと納税制度を悪用し2億円の寄付を東通村に行ないました。
このようなことは、当社に“負の遺産”を増やすだけであり、一刻も早く止めるべきです