2018年6月27日『第94回東北電力定時株主総会への事前質問書』と東北電力の一括回答及び事後回答

2018年6月27日『第94回東北電力定時株主総会への事前質問書』と東北電力の一括回答及び事後回答

以下、回答よりいくつかをピックアップしました

脱原発東北電力株主の会
『第94回定時株主総会への事前質問書』と主な東北電力の一括回答及び事後回答

1.≪第2号議案から第6号議案までに共通するご参考事項≫で「当社は、電力の小売り全面自由化による競争の激化や、2020年4月に予定されている送配電部門の法的分離など、激変する事業環境を踏まえた事業体制を構築する」必要性が強調されていますが、これまでの事業体制ではこの「激変する事業環境」に対応出来ないとする問題意識を具体的に説明して下さい。
【回答】当社は激変する事業環境を踏まえ、今年4月よりカンパニー制を導入し、各カンパニーによる自律的な事業運営を進めています。これには組織面のみならず、経営面からも競争環境の変化などに柔軟に対応できるよう、従来よりも迅速、かつ機動的な意思決定や業務執行を実現することで、事業運営のスピードアップを図る必要があります。
  一方で、こうした業務の執行に対する取締役会の監督機能を強化していくことも求められます。このような問題意識のもと、当社に最も適した企業統治の形態が監査等委員会設置会社であると考え、今次総会の第2号議案から第6号議案を会社提案させていただいたものでございます。

2.2020年4月に予定されている送配電部門の法的分離が当社の体制にもたらす変更の具体的な形について、明らかにして下さい。
【回答】送配電部門の法的分離に対しては、送配電部門の公平性、中立性を確保するとともに、競争力を強化していくことが必要となります。当社は他電力と比較すると経営規模で中位、中くらいであることから、事業持ち株会社体制による経営資源を一体的に活用していくことが競争力強化につながるとともに、経営効率の面で優位であると考えております。従いまして、発電、販売カンパニーを社内カンパニーとして持つ事業持ち株会社と送配電会社の2社体制とする方向で検討を進めております。

9.東海第二原発は再稼働や運転期間延長に際して立地自治体だけでなく、周辺自治体の同意を必要とする協定を結んだと報道されています。当社は女川原発2号機の再稼働にあたって、立地自治体である女川町と石巻市以外の、UPZ(30Km圏内)の自治体と同意を盛り込んだ協定を結ぶ用意を進めていますか。
【増子副社長】安全協定につきましては、各原子力事業者が関係自治体と協議の上、それぞれの事情や経緯を踏まえて締結・運用しております。女川の30㎞圏内の自治体いわゆるUPZ自治体との安全協定には、原子炉施設等の新増設や変更に関する事前了解は明記されておりませんが、現在女川2号機の新規制基準適合のための原子炉設置変更許可申請を行なっており、これについて宮城県とUPZ自治体との覚書に基づき、UPZ自治体のご意見は県を通じて当社に伝えられることになっております。当社は、頂戴したご意見を真摯に受け止め、誠実に対応してまいります。なお、再稼働にあたっては、周辺地域の皆様のご理解が広く必要であると考えており、丁寧な理解活動を継続的に進めてまいります。

11.当社は運転停止中の原発の維持管理費に、2012~16年度において4669億円かけていたという新聞報道がなされていますが、2017年度はいくら掛かったのでしょうか。
【回答】平成29年度の原子力発電費は、953億円となっております。なお、有価証券報告書の原子力発電費には、減価償却費、修繕費、委託費、原賠・廃炉等支援機構一般負担金などが含まれます。これらの費用は、いずれも原子力発電所の運営に必要な費用であり、発電所の稼働状況によって大幅に変わるものではございません。

15.前取締役高橋宏明氏は、今も当社相談役なのですか。顧問・相談役は株主総会の決議を経ずに選任可能で、実態が不透明との指摘があり、会長や社長が退任後に顧問・相談役として企業に残り、実質的な「院政」の形で現経営陣に影響力を行使しているとの批判があります。海外投資家の議決権行使に影響力のある米議決権行使助言会社インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は、相談役・顧問制度の新規導入に反対を推奨する方針を打ち出しています。相談役・顧問制度は、悪しき慣習だとして「企業統治(コーポレートガバナンス)向上」のため、廃止する会社が増えていると聴きますが、当社はいつまで存続するのですか。
   だれが、顧問・相談役を指名するのですか。現在、他にだれか、顧問・相談役はいるのですか。相談役としての報酬が支払われているとのことですが、附属明細書の雑給の一般管理費からですか。
【回答】社長経験者の相談役・顧問は、現在、八島俊章最高顧問、幕田圭一相談役、高橋宏明相談役の3名となっており、相談役、最高顧問への就任については、その方の持つ経験、知識などを勘案して、社長が決定しております。相談役・顧問の役割は各社によってさまざまであると認識しておりますが、当社においては経営や専門分野での高い識見・経験等をもとに、会社を取り巻く諸問題について幅広く意見、助言を頂戴しており、有益であると考えております。また、会社の業務執行に係る意思決定に直接関与することもなく、弊害はないと考えており、現時点で廃止の考えはございません。
また、相談役・顧問の報酬は、附属明細書の雑給に整理しております。

17.事業報告で「他の事業者へ契約を切り替えるお客さまが増加」とありますが、一昨年4月1日から電力小売りの全面自由化が始まり、すでに2月末現在、当社でも離脱件数26万2300件と聞きますが、現在の離脱件数、離脱需要をご回答下さい。
また、当社が所有する送配電網の使用料(託送料金)が、低圧は1㌗時当たり平均で10円49銭と大手10電力で2番目に高いと聞きますが、なぜですか。
【回答を控える】当社からの離脱件数、離脱需要につきましては、販売戦略に係る情報であることから、回答は差し控えさせていただきます。
【回答】当社は、供給面積が全国最大で、一方、販売電力は中位レベルであり、面積あたりの需要密度が低い状況となっております。このため、販売電力量当たりの電柱・電線といった設備が多いことなどが、託送料金が高くなっている要因と考えられます。ネットワーク利用者の負担が少しでも軽くなるよう、安定供給を前提に、今後も引き続き効率化に取り組んでまいります。

20.東日本大震災の3年前の2008年3月、当社が、女川原発の敷地が水没する高さ22.79㍍の津波想定をまとめていたことが、今年4月27日、東京地裁で開かれた福島第一原発事故を巡る「東京電力3被告刑事裁判」(業務上過失致死傷罪で旧経営陣3人が強制起訴)第9回公判で開示された会議資料で判明しました。
2008年3月5日に、東電、東北電力、日本原電などが参加して開かれた「津波バックチェックに関する打合せ」の議事記録です。これによると、当社も、地震本部の長期評価(2002)の考え方に基づき、これまで発生した記録のない宮城県沖から福島県沖にまたがる領域でM8.5の津波地震を想定、明治三陸沖地震(1896)のような津波地震が、もっと南で起きる可能性を検討しています。この場合、女川原発での津波高さは18.16~22.79mと計算、女川(敷地高14.8m)も水没すると予測されています。
なぜ当社は、「大津波で敷地が水没する想定をしていた」事実を、震災後7年も隠していたのですか。女川原発は、建設時に敷地を高くしていた? から震災の津波にも耐えたと豪語していますが、たまたまのことで、実は一歩間違えば福島原発事故と同じことが起きていたのではないのですか。
取締役会は、この事実をいつの時点で知りましたか。どう対処するよう指示したのですか。
【回答】平成18年度の耐震設計審査指針改訂に伴う耐震バックチェックにおいて、女川の想定津波高さを土木学会手法に基づき、女川の基準海面高さプラス13.6mと評価し、国へ報告予定でありました。並行して、この13.6mという津波高さがどの程度の安全レベルなのか、想定津波高さの発生頻度がいかに低い値なのかを示す手法について、当時の研究論法を踏まえて自主的に研究を進めておりました。
  その手法とは、津波高さとその高さを超える確率の関係を数学の確率論を用いてグラフ上の曲線として導き出すものです。曲線を導き出すための既知の科学的知見に不確実性があるという前提で、さまざまな条件で津波高さを計算する必要がありますが、当時、条件の考え方は確立しておらず、機械的・数学的に設定した条件を含め、さまざまな試算を行っておりました。報道記事にある18.16mや22.79mはそのような条件での計算値であり、設計の基準とする津波高さではありません。
繰り返しになりますが、当時は手法が未確立で、いろいろな計算を行っていた段階であり、規制で要求されている事項ではありませんでした。
なお、本件につきましては取締役会に報告はされておりません。

21.「女川原子力発電所の状況」報告で、「2号機は、主な作業として耐震工事等を行っております」「3号機は、主な作業としてプラント停止中の安全維持点検および 耐震工事等を行っております」とあります。ところが、1号機は具体的作業が記載されていませんが、現在どんな作業を行なっているのですか。復旧は何処まで進んだのですか。なぜ、耐震工事等が行なわれないのですか。廃炉に向けた準備のためであれば、賢明な判断だと思いますが如何ですか。
【回答】現在、女川1号機は、地震後の健全性確認を行っているところであり、新規制基準を踏まえた安全対策についても継続的に取り組んでまいります。女川1号機については、本年6月で運転開始から34年となりますが、現時点では廃炉を判断する状況にあるとは認識しておりません。

22.女川原発2号機の新規制基準適合性審査の過程で、「緊急時対策所」が設置される重要棟を免震構造から耐震構造に方針を変更しています。技術的検討と共に費用的な検討も行なったと思いますが、どちらがどれだけの費用が掛かると試算したのですか。免震構造と耐震構造ではどちらの建設費が高かったのですか。緊急時対策所はいつから施工を始め、完成時期はいつになりますか。
【回答】緊急時対策所の建物構想につきましては免震構造としておりましたが、新規制基準適合性審査における議論等から、電源・空調設備等の耐震強化や、建物内の加圧用ボンベの追加配備を行う他、建物の壁を厚くし、遮へい機能を強化する等、設計を見直しました。これら設備・建物の設計見直しや重量の増加を踏まえ、建物構造についても検討し、原子炉施設での採用実績が多く、これまでの設計の経験や技術的知見も豊富な耐震構造に建物の構造を見直して、より確実に安全確保を図っていくことにいたしました。
【回答を控える】緊急時対策建屋の機能につきましては免震構造と耐震構造で大きな差はないと考えておりますが、今後の価格交渉に影響を及ぼす可能性があるため、具体的な費用についての回答を差し控えさせていただきます。
【回答】緊急時対策建屋は準備が整い次第、施工を開始し、2020年度の工事完了を目指して工事を進めてまいります。

23.日本原子力発電の「有価証券報告書」によれば、当社は、資本金1200億円の内6.12%の73億円を出資、震災後は保有する4基の原発のうち2基が廃炉作業中で2基は停止中で発電量ゼロにも関わらず、当社は税別で2011年度116億円、12年度120億円、13年度92億円、14年度103億円、15年度90億円、16年度79億円、17年度90億円(推計)、「基本料」という名目で7年間で約700億円も支払い続けてきました。
   以下、質問致します。
 ①昨年、「当年度支払った基本料金はいくらですか」と質問したところ、「個別契約の金額や具体的内容については、個別取引に関するものであり、回答を差し控えさせていただきます」との回答でした。相手方が公開しているのに、情報を公開しないのは可笑しくはありませんか。なぜ、年度により支払い金額が違うのですか。どの項目から支出しているのですか。
 ②政府提出の資料によると電力会社と原電の長期契約について「基本契約の中では、電力受給の終期や料金について明確な記載はしていません。(中略)日本原電との間では期限の定めのない永続的な契約関係にあります。」とのことですが、受電しないにも関わらず支払い続ける契約は、電力自由化に馴染まないのではないですか。株主への背任行為であり、破棄すべきと思いますが如何ですか。
③被災した東海第二原発が廃炉になった場合、支払ったお金をどうやって回収するのですか。回収不能の場合、株主への背任行為ではないのですか。取締役はどのような責任をとるのですか。
 ④仮に、原子力規制委員会の審査の合格が出たとしても、東海第二原発は、地元5市に同意権限が拡大したため、再稼働の時期は見通せませんが、当社は受電再開をいつと予定しているのですか。
 ⑤「原子力発電のパイオニアである同社への支援により、同社が持つ知見を獲得し、当社事業へ活用する」とありますが、当社もすでに30数年の原発事業での「蓄積」があると思いますが、原電が持つ知見とは具体的にどのようなものがあり、どう活用するのですか。
 ⑥当社は、これまで既に、原電の資金調達のため67億6000万円の債務保証を行なっています。今回、「原電の自己資金を超える分は受電量に応じた金額を上限に支援を行なう」とのことですが、原電は金融機関から「経理的基礎」がないと判断されており、破産状態です。これ以上の債務保証は行なうべきでないと思いますが、如何ですか。
【増子副社長】日本原子力発電は、開発から廃止措置まで一連の技術に関する知見を蓄積しており、こうした知見を当社原子力発電所の着実な運営に生かして参りたいと考えております。当社といたしましては、日本原子力発電の事業継続性、東海第二発電所の再稼働による当社火力燃料費の抑制といった、当社のメリット等を十分に評価したうえで、契約や債務保証を継続しており、今後も適時・適切に判断してまいります。なお、当社は、日本原子力発電が東海第二発電所について2021年3月以降の再稼働を目指し、地元説明会など理解活動を行なっていると認識しております。
【回答】日本原子力発電への支払いは、他社購入電力料に整理してございます。
【回答を控える】なお、日本原子力発電との契約に限らず、購入先ごとの金額等、個別の取り引きに関する内容につきましては、回答を差し控えさせていただいております。
【回答】それと、日本原子力発電は、わが国の原子力事業のパイオニアとして、開発から廃止措置までの一連の技術に関する知見を蓄積しており、こうした知見を当社原子力発電所の着実な運営に生かしてまいりたいと考えております。仮定のご質問にはお答えいたしかねますが、当社といたしましては、日本原子力発電の事業継続性、東海第二発電所の再稼働による当社火力燃料費の抑制といった当社のメリットなどを十分に評価した上で、契約や債務保証を継続しており、今後も適宜適切に判断してまいります。
  東海第二発電所は、安全対策工事が終わる2021年3月以降の再稼働を目指して取り組んでいるところであり、日本原子力発電は再稼働への理解を得るために、地元説明会の開催などを行っていると聞いており、理解形成のための必要な対応が行われていると認識しております。当社としては新たな安全協定の締結により、東海第二が再稼働できない状況になるとは考えておりません。

24.女川原発2号機および東通原発1号機で新規制基準などを踏まえた安全対策工事が進められていますが、これまでこの安全対策工事の費用として約3500億円の経費が見込まれると公表されています。当年度末までに費やされた経費はいくらですか。どの科目に計上されていますか。今後かかる経費の見通しについて明らかにしてください。
【増子副社長】新規制基準などを踏まえた安全対策工事費の総額としては、女川・東通合計で3千数百億円程度という規模感をお示ししております。今後、追加対策等により工事費が増加する可能性がありますが、一方で安全確保を最優先とした効率化も鋭意進めており、現時点で最終的な見通しについてお答えできる状況にはありません。なお、これまでに女川・東通合計で約1720億円を支出しております。

26.懸案になっている「防潮堤の設計方針等の変更」の件ですが、「防潮堤下部の盛土・旧表土部分を地盤改良することにより岩盤に到達していない鋼管杭(短杭)も沈下しない設計とします。また、防潮堤の安定性をさらに確保するための地盤改良も行います」(発電所だより2018年3月号)とのことですが、具体的にはどのように地盤改良するのでしょうか?(セメントを入れ込むなどでしょうか?) また、これにより追加で発生する費用はいまのころ、どれくらいを見込んでいるのでしょうか? さらに、このように地盤改良した結果として、地下水の流れに影響はないのでしょうか?
【回答】防潮堤についてはこれまでの審査を踏まえ、沈下を許容する構造を見直し、地盤改良により地盤沈下しないようにすることで、津波対策設備としての信頼性を高めることとしております。当初から防潮堤下部には地盤改良を施しており、今回の追加はその地盤改良部の下に残る盛土、旧表土も同様の方法でセメントを混合して地盤改良を行うものです。当初の予定の安全対策工事費、安全対策工期内で納まるよう、引き続き対応するとともに、地下水の影響も考慮した防潮堤の施工を進めてまいります。

29.六ヶ所村の再処理工場は、2018年になっても本格稼働のメドはまったくたっていません。そうしたなか、関西電力は青森県むつ市の「中間貯蔵施設」への使用済核燃料の搬入を検討しているとの報道がありました。一方、東電福島原発事故の際は、「4号機での使用済核燃料を冷やすプールの水が干上がってしまえば、避難は250km圏内に及ぶ」という原子力委員会近藤委員長のレポートが当時の政府を驚がくさせました。女川原発で現在保管している使用済核燃料を安全に保管するため、当社はどのように考えていますか? 乾式貯蔵への変更、あるいは「中間貯蔵施設」への搬入は検討していないのでしょうか?
【回答】使用済燃料の保管について、当面は現行の使用済燃料プールを活用することとしております。プールでの貯蔵にあたっては原子炉と同様に、電源や冷却機能の確保や強化といった各種対策により、安全性の向上を図ってまいります。また、使用済燃料貯蔵対策については重要な課題の1つであると認識し、当社としても敷地内外における乾式貯蔵施設等の種々の貯蔵方法について検討することとしております。

30.電気はいまや日常生活に必要不可欠なものであり、したがって電力会社もなくてはならないものです。しかし、原発は必ずしもなくてはならないものではないことがこの間ますます明らかになっています。「2030年(代)には原発ゼロ」とする法案も出されていますが、いずれにしても近い将来原発はなくなるものと思われます。それを見据えた体制を準備することが、当社の生き残りに不可欠だと考えますが、現在「ポスト原発」の社内体制への準備は進んでいるのでしょうか?
【回答】エネルギー資源に乏しいわが国では、原子力は安全確保を大前提に、安定供給・経済効率性・環境適合の観点から重要なベースロード電源で、将来にわたり一定規模を確保する必要があります。当社といたしましては、特定の電源や燃料源に過度に依存することなく、原子力を活用しながら、バランスの取れた電源構成を実現することが重要と認識しております。これまで安全性向上に向け、新規制基準への適合にとどまることなく、自主的な安全対策の取り組みを継続し、さらなる安全レベルの向上に努めております。引き続き安全確保を最優先に、地域の皆様のご理解を得ながら安全対策工事完了後、準備が整った段階での再稼動を目指してまいります。

31.東京電力福島第一原発事故の損害賠償費用について、一般負担金として当社の2017年度の負担額、1kwh当たり、1世帯当たりの負担額はいくらですか。
【増子副社長】原子力事業者は、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法に基づき、事業者間の相互扶助の仕組みによる原子力事故に係る賠償への備えとして一般負担金を負担しております。当社の2017年度における一般負担金は約107億円であり、2018年度中に納付予定であります。原子力損害賠償制度の見直しにつきましては、国の専門部会において、適切な賠償を迅速に実施する事を前提に、原子力事業者の予見可能性の確保などにも留意ししつ検討が行なわれ、本年1月22日に原子力賠償制度の見直しについての素案が提起されております。
【回答】一般負担金は、事業者間の相互扶助の仕組みによる原子力事故にかかる賠償への備えとして、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法に基づき負担するものであり、当社の平成29年度一般負担金は107億910万円となっております。平成25年度の料金改定では、年間107億910万円を料金原価に算入しており、1kWh当たりでは、約0.14円となっております。当社の平均的なモデル、30A、月260kWhの使用における年間のご負担額は、約440円となっております。

34.株主提案に対する取締役会の意見に「わが国はエネルギー資源に乏しい」との取締役会の認識が示されていますが、現在は多種多様なエネルギー確保が可能な時代になっています。この様な認識に凝り固まっていては選択肢を狭め、世界の流れに乗り遅れることになりませんか。
【回答】日本の平成28年度のエネルギー自給率は8パーセントにとどまり、資源を海外に依存している状況にあります。加えて、外国との電力の系統連系も有していない状況であります。現状では、再生可能エネルギーを含む各エネルギー源はそれぞれ特性を持っており、安定的かつ効率的な地球構造を一手に支えられるような単独のエネルギー源はありません。そのような状況においては安全確保を大前提に、安定供給、経済効率性、環境適合の観点から、特定の電源や燃料源に過度に依存しないバランスの取れたエネルギーミックスを実現することが、極めて重要と認識しております。

35.福島第一原発事故を契機として運転停止をした原発の再稼働は進まず、廃炉の決定がなされる原発が増えています。最近も福島第二原発4基の廃炉方針が東京電力によって明らかにされました。原発を「重要なベースロード電源」とする政府のエネルギー基本計画を達成するためには、2030年に30基の原発を再稼働させることが必要ですが、実現困難な状況です。原発に拘泥する愚を改めるべきではありませんか。
【回答】エネルギー資源に乏しいわが国では、原子力は安全確保を大前提に安定供給、経済効率性、環境適合の観点から重要なベースロード電源で、将来にわたり一定規模確保する必要があります。当社としては、特定の電源や燃料源に過度に依存することなく、原子力を活用しながらバランスの取れた電源構成を実現することが重要と認識しております。これまで安全性向上に向け、新規制基準への適合にとどまることなく、自主的な安全対策の取り組みを継続し、さらなる安全レベルの向上に努めております。引き続き安全確保を最優先に、地域の皆様のご理解を得ながら、安全対策工事完了後、準備が整った段階での再稼動を目指してまいります。

38.「東北地方の14基幹送電線が、実際には2%~18.2%しか使われていない」という研究者の分析を、当社はどう評価していますか。
【岡信副社長】次に、送電線の利用率についてであります。当社送電線の利用率が低いとのご指摘がありますが、これは送電線に流れる電気の年間の平均値から算出したものであります。しかしながら、電力広域的運営推進機関から見解が示されている通り、送電線の利用率の算定にあたっては、年間の平均値ではなく年間の最大値から算出することが適切であると考えております。なお現在、国などにおいて、既存の送電線の利用率向上に向けたルールの見直し等について検討が進められており、当社としても適切に取り組んでまいります。

40.第12号議案に対する取締役会の意見に「日本原燃株式会社の再処理工場・MOX燃料工場の竣工および安定操業が極めて重要であります」と述べられていますが、昨年の株主総会での株主提案に対する取締役会の意見で「「日本原燃株式会社の再処理工場については、平成30年度上期の竣工に向け」と当社取締役は見通しを示しています。実現可能ですか。難しいとすれば竣工時期は何時になると見通していますか。
【増子副社長】まず、日本原燃再処理工場の状況についてであります。日本原燃は、昨年12月、再処理工場の竣工時期を2021年度上期へ変更しております。これは、適合性審査の進捗により、さらなる安全性向上のための対策等が固まってきたことを踏まえ、主な安全性向上工事の工程などに見通しが得られたことによるものと認識しております。日本原燃におきましては、竣工に向けて全力で取り組んでいただきたいと考えております。

52.当社の保有する核分裂性プルトニウム量は、当期末にはいくらになっていますか。kg単位で明らかにして下さい。どの再処理工場にいくらずつありますか。
【資料】配布資料に記載のとおりです。
・核分裂性プルトニウム保有量(平成29年12月末)
約476kg
・内訳
① 国内  約75kg
日本原燃        約63kg
    日本原子力研究開発機構 約11kg
② 海外  約402kg
    仏国分(オラノ)   約204kg
    英国分(NDA)   約197kg 
   注)内訳と合計は四捨五入により一致しない。

65.原子力発電施設解体費として当期46億2800万円が計上されています。当社の4基の原発の廃炉費用は2287億円程度から変更はありませんか。これまで積み立てられた廃炉処置費用の引当総額は約870億円から46億2800万円の増加と見なしてよろしいですか。
【資料】配布資料に記載のとおりでございます。
・「原子力発電施設解体引当金に関する省令」に基づき見積もった廃炉費用
   :4基合計で2,265億円程度(平成28年度末時点より22億円程度減少)
・これまでの引当総額:約916億円(平成28年度末時点より46億円程度増加)

75.一般水力、地熱、火力、原子力別の設備利用率は、それぞれいくらですか。
【資料】配布資料に記載のとおりでございます。
・当社発電設備における設備利用率(平成29年度)
   水 力  39.3%(一般水力  48.0%)
   地 熱  47.0%
   火 力  52.3%(気力のみ)
   原子力   0.0%
  (太陽光  15.3%)

86.当年度の女川原子力発電所および東通原子力発電所での従事者被曝で、「年間20mSv」「年間5mSv」を超える被曝をした人は何人いましたか。女川原発と東通原発の運転開始以来の従事者被曝の集団被曝総線量は、それぞれいくらになっていますか。
【資料】配布資料に記載のとおりです。
・平成29年度
   年間20mSⅴを超える被ばく:実績なし
   年間 5mSⅴを超える被ばく:
    女川:14名(放射線業務従事者約3,000名のうち14名)
    東通: 0名(放射線業務従事者約1,100名のうち0名)

・運転開始以来(管理区域設定以降)の従事者被ばく線量(平成29年度末)
女川:約40.78人・Sⅴ
   東通:約 2.16人・Sⅴ

名取変電所に関する質問書
                              脱原発東北電力株主の会
                                  株主 三浦信子

当社による『超高圧一次変電所・名取変電所』建設により、地域住民は、現実に安心して暮らすことができない大変深刻な状況におかれています。
住民の生命・暮らし・子どもたちの未来にかかわる重大な下記問題点にお答え下さい。

【1】規制値の問題点
  当社は、「国の規制値(2,000ミリガウス)内で健康への影響はない」と、地域住民の健康への懸念を無視し、一方的に変電所建設を開始しました。
しかし、『国の規制値』は下記「ICNIRPガイドライン曝露の制限の根拠」により、送電線・変電所など極低周波の慢性影響や非熱効果とは全く関係ないことが判明しました。何故、慢性影響や非熱効果とは全く関係ない急性影響だけの規制値を、「名取変電所の建設は、国の規制値内で健康への影響はない」と、言い切ることができるのですか。ご回答下さい。
  
◆国が準拠する『ICNIRPガイドラインの規制値』とは、
電磁界の急性影響を防止する為のもので、慢性影響や非熱効果とは全く関係なく、1998年以前の時点ではっきりしていた急性影響だけを考えて作られたものです。
例えば、末梢神経及び筋肉の刺激、導電性物体に触れることによって生じる感電及び熱傷、EMF曝露中のエネルギー吸収の結果生じる生体組織温度の上昇などに基づいている。
     「ICNIRPガイドライン曝露の制限の根拠」より抜粋   

【増子副社長】変電所や送電線などの電力設備から生じる電磁界は、国際的なガイドラインや国の規制値にくらべ十分に低いことから、当社は人の健康に有害な影響を与えることはないと判断しております。また、WHO(世界保健機関)の提言を踏まえた国の検討結果では、磁界による長期的な健康影響については、因果関係についての証拠が弱く、科学的な根拠に基づく合理的なガイドラインを無視して、恣意的に曝露制限値の設定を行なうことは認められないとの見解が示されております。当社といたしましては、国の検討結果も踏まえ、曝露低減のための方策を常に実施してきており、今後も可能な範囲で継続してまいります。

【2】予防原則否定の問題点
   WHOは2007年『環境保健基準』を発表しました。
  ◆WHO『環境保健基準』とは、
3~4ミリガウスの電磁波被曝で「小児白血病になる可能性」を正式に認め、電磁波が人体に与える影響の科学的証明を待たず、被害防止策を進める『予防原則』の考えに立ち、各国に電磁波対策法整備を勧告、予防措置を促した。

名取変電所の建設地は、同等規模の変電所では到底考えられない程住宅地に隣接し、「東北電力管内、他に例はない」(当社回答)「二つの超高圧変電所が並んで立地」という異常な状況下にあります。また、供給先送電網からも、今後の著しい電力の需要増に伴い、電源となる 西仙台変電所名取変電所 275千Ⅴ超高圧送電線から制限なく強制され続ける長時間被曝は、地域住民のとくに影響を受けやすい子どもたちの「将来にわたって左右する深刻な健康問題」です。
当社は「危険性の科学的証明はない」と予防原則を否定し、地域住民の「予防原則に基づいた電磁波軽減対策」の要望を退け、建設を進めました。
「安全性の科学的証明もありません」
何故、被害防止策を進めるWHOの『予防原則』の考えを否定できるのですか。ご回答下さい。

【回答】世界保健機関が2007年に公表した環境保健クライテリアでは、曝露を低減するための非常に低費用のプレコーション的方策、予防的方策を実施することは合理的であり、是認されると述べておりますが、プレコーションの名のもとに、恣意的なレベルに限度値を引き下げることは推奨されないと述べております。従いまして、WHOはそもそも電磁界に対するプレコーション内原則、予防原則の適用を支持していないものと認識しております。

【4】住民の生命・暮らし・子どもたちの未来にかかわる問題点
建設地には既にJR新仙台一次変電所・携帯基地局2基があり、地域住民は、今の状況下でも電磁波の影響と考えられる「健康問題」を抱え生活しています。
名取変電所建設・操業により、供給先送電エリア(送電網)の電力需要増に伴う今以上の電磁波被曝は、生命にかかわる小児白血病、ガンのほか、うつ病などの精神疾患、また「電磁波過敏症」の懸念など、『地域住民の、将来にわたって左右する深刻な健康問題』です。

 電磁波被曝量は電流値1アンペア増加ごとに、4ミリガウス強の増加 
(回答書より算出)
◆電磁波過敏症とは
電磁波被曝の量が増えれば誰にでも生じうる可能性があり、身体の様々な部位に異変が生じ、頭痛・吐き気・疲労感・めまい・動機・皮膚障害・不眠…等々、居住、学業、就業など、日常生活のあらゆる場面で不自由を強いられることになります。
最近の疫学調査から『日本人の3.0~4.6パーセントが電磁波過敏症』として、実際に電磁波の被害で苦しんでいる方々の存在が報告されています。

地域住民の生命・暮らし・子どもたちの未来を守るために、
WHOが被害防止策を進める『予防原則』の考えに立つことが不可欠です。
また、変電所の電源送電線(275千Ⅴ)・鉄塔は経年40年の既存のままです。
改めて『電源送電線の予防原則に基づいた電磁波軽減対策』の要望を致します。
ご回答下さい。

【回答】世界保健機関は、そもそも電磁界に対するプレコーショナル原則の適用を支持していないものと認識しておりますが、2007年に公表した環境保健クライテリアでは、曝露を低減するための非常に低費用のプレコーション的方策を実施することは合理的であり、是認されると述べております。当社といたしましては、高鉄塔化や逆相化など、これまで考慮してきた磁界低減対策を今後とも原則的に実施してまいります。