2022.9.27⼥川原⼦⼒発電所天井クレーン⽀持台き裂事故に関する質問状

2022年9⽉27⽇、岩手・宮城の5団体共同で、東北電力に「天井クレーン⽀持台き裂事故」について公開質問を提出しました。

⼥川原⼦⼒発電所天井クレーン⽀持台き裂事故に関する質問状

2022年9⽉27⽇
東北電力株式会社 取締役社長 樋口康二郎殿

提出団体名
三陸の海を放射能から守る岩⼿の会(岩⼿県盛岡市)世話⼈永⽥⽂夫
放射能から子どもを守る岩手県南・宮城県北の会(岩手県一関市)代表者菅原佐喜雄
岩手有機農業研究会(岩手県花巻市)代表幹事 入江敦豊かな三陸の海を守る会(岩手県宮古市)共同代表横田有平
⼥川原発の再稼働を許さない!みやぎアクション(宮城県仙台市)代表鈴木宏一
みやぎ脱原発・⾵の会(宮城県仙台市)事務局⻑舘脇章宏

⼥川原⼦⼒発電所天井クレーン⽀持台き裂事故に関する質問状

貴社は9⽉12⽇「⼥川原⼦⼒発電所の状況について(2022年8⽉分)」において,「国への報告を必要としない「ひび」、「傷」等の事象として、1号機の原⼦炉建屋天井クレーンにおいて、⾛⾏部の⽀持台座にき裂を確認しました。」とし,別紙1(⼥川原⼦⼒発電所1号機の状況)の「定期事業者検査・主要機器点検情報」等で詳報がありました。そこには「このき裂は2021年12⽉に実施した定期点検において確認されて いないことから、2022年3⽉16⽇の地震の揺れにより発⽣したもの と推定いたしました。 」とあり3⽉の地震によりクレーン⽀持台にき裂が発⽣したものと推定されており,⼥川町で震度5強の揺れで原発の安全上重要な設備にき裂が⼊ったことを知り驚きました。
⼥川原⼦⼒発電所(以下⼥川原発」)は地震の影響の受けやすさにおいて世界⼀と⽶国原⼦⼒学会で報告*があったと聞いており,私たち市⺠団体は⼥川原発の重⼤事故の発⽣を⾮常に憂慮しております。現に宮城,福島沖で⼤きな地震が頻発しており地震の報の度に恐怖を感じております。 今回のき裂事故は素⼈⽬にも,今後の1号機廃炉作業において使⽤済燃料や原⼦炉格納容器・原⼦炉圧⼒容器 の蓋などを吊上げるために必要な重要設備であることがわかります。なぜ国への報告をせずに済まそうとしているのか,本当に施設設備の耐震は保証されているのか,2号機や3号機のクレーン部の耐震は本当に⼤丈夫なのか等など疑念が増すばかりです。
安全上重要な設備にき裂が発⽣した現実は耐震設計がいとも簡単に破綻したことであり貴社のガバナンスや防災・危機管理への不安不信を払拭できません。
http://sanriku.my.coocan.jp/111030ONAGAWArepANS.pdf

以上を踏まえ,以下9⽉12⽇の貴社報告書を中⼼に質問いたします。宮城県をはじめ岩
⼿県や周辺県の⼈々をはじめ貴社従業員をも避難⺠にするようなことは絶対しないとの決意のもと質問にお答えください。
※尚、回答は10⽉中に⽂書でお願いします。ご都合の良い⽇に回答に係る意⾒交換の場を設定して頂きたくお願い申し上げます。

問い合わせ(回答宛先)
○三陸の海を放射能から守る岩手の会 永田文夫
○女川原発の再稼働を許さない!みやぎアクション 篠原弘典

【 質 問 】
Ⅰ 貴社ホームページ「⼥川原⼦⼒発電所の状況について(2022年8⽉分)」の
(別紙1)「⼥川原⼦⼒発電所1号機の状況について(2022年8⽉分)」に係る質問
質問① 1⾴の3.で「国への報告を必要としない「ひび」、「傷」等の事象として、1 号機の原⼦炉建屋天井クレーンにおいて、⾛⾏部の⽀持台座にき裂を確認しました。」と記載されています。この設備は3⾴で「安全上重要な設備」に区分されています。
⼥川原発1号機の天井クレーンについては、2012年6⽉に、「当該⾛⾏部の軸受が損傷し ていることを確認」したとの発表がありました。(2012.6.7プレスリリース https://www.tohoku-epco.co.jp/pastnews/atom/1183920_1065.html)この際は「法令に基づき国へ報告しました。」とありました。なぜ同じ安全上重要な設備で8ヶ所もき裂が⾒つかった事象が国への報告を必要としないのでしょうか。「国への報告を必要としない」とする根拠となる法律と,判断した経過をお知らせください。
質問② 3⾴で,き裂があった「原⼦炉建屋天井クレーン」の設備区分が◯印がついておりそれは「安全上重要な設備」と注釈があります。ついては「安全上重要な設備」の定義をお知らせください。
質問③ 3⾴で,検査区分が「施設管理に基づく点検・補修等」となっておりますが,
「法令に基づき実施される定期事業者検査」が当該箇所についてなぜ⾏われなかったのですか。
質問④ 3⾴概要で「・2022年5⽉に実施した天井クレーンの定期点検において、クレーン⾛⾏部の⽀持台座にき裂が発⽣していることを確認いたしました。 ・同年7⽉から8⽉にかけて詳細点検を実施した結果、合計8カ所のき裂を確認いたしました。」とありました。なぜ点検で確認後直ちに状況の詳細点検をしなかったのですか。
合計8ヶ所の⻲裂の各々について⽀持台座のどこにどの程度の⻲裂があったのですか。4⾴の写真や図には8ヶ所について⽰されていませんのでお知らせください。
質問⑤ 3⾴概要で「き裂は2021年12⽉に実施した定期点検において確認されていないことから、2022年3⽉16⽇の地震の揺れにより発⽣したものと推定いたしました。」とありました。
a) き裂の原因が3⽉16⽇の地震だとするとその時の⼥川原発における震度,最⼤加速度等の実測値と測定箇所をお知らせください。
b) 1号機の天井クレーンの建設時点での設計基準地震動(最⼤加速度)はいくらだったのでしょうか。また耐震補強がなされた場合その時の設計基準地震動をお知らせください。
c) 3⽉16⽇の地震後,設備や機器の点検が⾏われたはずですがその時,天井クレーンの⽀持台座に⻲裂が⼊っていることを發⾒できなかったのはなぜですか。
質問⑥ 3⾴概要で「天井クレーン(安全上重要な設備)のき裂は当該設備を使⽤していない期間(機能が要求されない期間)に発⽣した事象であること、また、天井クレーン本

体の落下防⽌機能および燃料の落下防⽌機能に影響がないことを確認しております。今後、準備が整い次第、⽀持台座の交換等を⾏ってまいります。」とありました。
a) 天井クレーン設備を使⽤していない期間に発⽣したき裂とのことですが,もし重量物を移動させている途中にこのような地震が発⽣した場合はき裂が広がり廃炉作業中の使⽤済燃料,もしくは格納容器蓋や圧⼒容器の蓋が落下するのではないでしょうか。最悪の場合を想定するとどのような事故が推定されますか。
b) ⽀持台座を交換するとのことですが,従来と同じ台座では耐震強度が不⾜し,震度5強程度でき裂が発⽣したはずであることを考慮すると,耐震設計を⾒直さなければならないはずですが,どの程度の耐震安全基準地震動の値による交換になるのでしょうか。
Ⅱ 関連その他の質問
質問① ⼥川原発1号機のクレーンについては、2012年6⽉に、「当該⾛⾏部の軸受が損傷していることを確認」したとの発表がありました。(2012.6.7プレスリリースhttps://www.tohoku-epco.co.jp/pastnews/atom/1183920_1065.html
「当該軸受が損傷した原因について詳細な調査を実施します」とありました。調査報告書をお知らせください。その後、当該軸受をいつどのように直し、いつ修復作業を完了させたのか、またその後クレーンを動かす作業を⾏うことができたのか回答ください。
質問② 今回き裂が発⾒された⼥川原発1号機について,2022年3⽉16⽇の地震により,元々⼊っていた疲労き裂が地震により広がったのではのではありませんか。詳しい原因究明が⾏われたのでしょうか,それは公開されるのでしょうか。

質問③ ⼥川原発2号機,3号機は2022年3⽉16⽇の地震で問題がなかったようですが,仮にそこで数百トンもの原⼦炉格納容器の蓋重量物の上げ下ろしをしている際に, 3⽉16⽇を上回る⼤地震が発⽣した場合に⽀持台座にき裂は⼊らないと⾔える根拠を お知らせください。
質問④ ⼥川原発1号機,2号機,3号機の炉⼼に挿⼊されている使⽤済燃料束の体数とその挿⼊ウラン重量,燃焼度をお知らせください。もし炉⼼上部の燃料プールにも貯蔵されているのならば各号機についてその体数とウラン重量,燃焼度をお知らせください。
質問⑤ 第160回⼥川原⼦⼒発電所環境保全監視協議会資料(2022年6⽉7⽇東北電⼒株) の4.その他 の(2)2022年3⽉16⽇の福島県沖を震源とする地震後に確認された発電所設備等被害への対応状況で「安全上重要な設備に異常はなく,周辺への放射性物質の影響もなかった。」とありました。5⽉に実施された安全上重要な設備とされている1号機原⼦炉建屋天井クレーン⾛⾏部⽀持台座のき裂発⽣が確認されていたにも関わらず,6⽉の環境保全監視協議会資料,そして2022年8⽉30⽇⼥川原⼦⼒発電所環境 保全監視協議会においても報告しなかったのはなぜですか。
(以上です)