―最近の気になる動き 86―▼「吸殻1本」から見えた「テロ対策」の困難性▼

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▼―最近の気になる動き 86―「吸殻1本」から見えた「テロ対策」の困難性▼

東北電力は2020.10.14女川原発の9月分定期報告で、「女川原子力発電所2号機におけるたばこの吸殻の発見について」として、「2020年9月7日、女川原子力発電所2号機管理区域内(タービン建屋2階)のグランド蒸気調整弁室で、変色した古いたばこの吸殻1本を発見しました。/たばこの吸殻を発見した場所は、高所にある常設足場の転倒防止用柵の外側であり、今回、仮設足場を設置した点検作業を行った際に発見したものです。/当社はこれまで、管理区域内での喫煙行為を防止するため、放射線防護教育に使用する教材への記載の見直し、管理区域入口付近へのポスター掲示、管理区域入口付近での持ち込み物品(ポケット内含む)の監視、抜き取り確認および声掛け等の活動を実施しておりますが、今回の事象を踏まえ、引き続き、管理区域内での喫煙行為の禁止に関する周知・徹底を図ってまいります。」と述べています。

まず、この「たばこの吸殻1本を発見」した事実を隠さずに公表したことは、大いに評価すべきことだと思います。これは、発見者(電力社員でしょうか、下請社員・作業員でしょうか)が、管理区域内での注意事項(喫煙禁止・異物管理)を正しく認識し、仮設足場の点検作業時に周辺に対する注意力を発揮して吸殻を見逃さず、その事実を正しく報告する倫理観があったことを示しています。また、その報告を“もみ消さず”に公表した一連の関係者・関係部局も、大いに賞賛に値すると思います。

その一方で、この問題の持つ意味は、上記「賞賛」を完全に吹き飛ばしてしまうものです。それは、①タバコと着火源(おそらくライター)が「管理区域入口付近での持ち込み物品(ポケット内含む)の監視、抜き取り確認および声掛け等の活動」をすり抜けて管理区域内に秘密裏に持ち込まれ、②他者の目を盗んで(誰にも見られずに:もしも同伴者がいて容認したのなら、さらに問題)喫煙=ライター発火が行なわれ、③吸殻をポイ捨てした(火を消して捨てたのかどうかは不明:吸殻や現場の写真を公表して欲しいと思います。また複数人が喫煙し、1人だけポイ捨て、他者は携帯灰皿、という可能性も)、ということで、過去(2008.10-11)に作業に伴う火災が頻発した女川原発にとっては、火災対策・作業員教育上、大いに反省すべきことです。
しかも、作業時の失火は一定の対策を講じて減らすことができると思いますが、今回の「吸殻の主」を「テロリスト」に置き換えたら(①~③の行動は)どうなるでしょうか。東北電力は「今回の事象を踏まえ、引き続き、管理区域内での喫煙行為の禁止に関する周知・徹底を図」るとしていますが、本当にそれだけの・その程度の“問題意識・核防護意識”しか持っていないのだとしたら、非常に由々しきことです。
幸い、今回は原子炉建屋内の「防護区域」ではなく、防護区域入域時の「持ち込み物品(ポケット内含む)の監視」等はタービン建屋内「監視区域」に比べて格段に厳しい(たぶん?)と思われますが、そうであっても、修理や点検作業のための工具や資機材等の持ち込みは(作業者の立入りも)不可避と思われます(防護区域の設備・機器は‘絶対に故障しない=修理・点検不要’というのなら別ですが)。

今回の「吸殻1本」は、完全な「社員・作業員管理(個人の信頼性確認)」=「テロ対策」が実現不可能であることを示すものと考えるべきで、その点からもとりあえず女川2の再稼働は“安全性最優先”で自ら取り止めるべきだと思います(女川原発内に核燃料・使用済燃料・放射性廃棄物が存在する限り、テロ対象・攻撃対象となる危険性は存在し続けますが)。
<2020.10.17記:仙台原子力問題研究グループI>