会報「鳴り砂」2022年3月20日号が発行されました

会報「鳴り砂」2-117号(2022年3月20日号)
会報「鳴り砂」2-117号別冊(2022年3月20日号)
規制委員会への申入れ「東北電力女川原発2号機の有毒ガス防護に係る原子炉設置変更許可申請に対して、硫化水素漏洩事故を踏まえた審査を行うことを求めます」2022年2月14日

一面論文です
 原発は戦争やテロに対して無防備であり、「潜在的核兵器」になりうる -
ロシアのウクライナ軍事侵攻と原発攻撃に抗議し、改めて女川原発再稼働NOの大きな声を!!

 2月24日、ロシア軍がウクライナに軍事侵攻して以来、民間人を含む双方の死傷者や、ウクライナから国外へ避難する人が増え続けている。私たちは、この戦争に強く反対し、速やかな停戦とロシア軍の撤退を強く求める。
 ロシア軍はチェルノブイリ原発を2月24日に掌握したが、3月9日には電源供給が途絶えた(その後、ベラルーシから電源供給)とのこと。一方、3月4日には、ウクライナ最大のザポリージャ原発が攻撃を受けるという衝撃的なニュースが世界中を震撼させた。さらにロシア軍は南ウクライナ原発の制圧も狙って進軍しているとの情報もある。
 ウクライナは電力供給の半分以上を原子力に依存し、戦争中でも15基中8基の原発を稼働させている(3月9日現在)。攻撃や事故により原発が制御不能になれば、チェルノブイリ原発事故や福島第一原発事故の被害を大きく上回る事態に至る可能性もある。テロや戦争が起こってしまえば、原発の安全性などひとたまりもない。

 原子力規制委員会の更田豊志委員長は3月9日の衆院経済産業委員会で、日本国内の原発がミサイル攻撃を受けた場合、「放射性物質がまき散らされることが懸念される。現在の設備で避けられるとは考えていない」との見解を示した。国内の原発を巡り、政府はテロ対策を進めているとは説明してきたが、軍事的な攻撃に対する危険性は明言してこなかった。更田委員長は「2国間の紛争による武力攻撃を審査などで想定していない」と説明。原発が占拠されれば「コントロール全体を握られる。その後はどんな事態も避けられない」と指摘した。
 実際、他の原発同様、女川原発2号機の審査でも、新規制基準に定められた深層防護の「第4層 重大事故の影響を緩和する」の中に、「故意の航空機衝突等への対処」がアメリカの9.11後の対策を参考にして審査されている。しかし、その中身は基本的に5年の猶予がある「特重施設の設置」でしかない。テロなどが5年間起きない保証がないことはもちろんだが、それ以前に、更田委員長がいうように「ミサイル」などの武器や、「原発の占拠」は「想定外」なのだ。

 ロシアのタス通信などは「ウクライナはチェルノブイリ原発で放射性物質を拡散する爆弾、いわゆる「汚い爆弾(ダーティーボム)」を開発している」と報じ、その真偽は全く不明(根拠が示されていない)だが、「原発への攻撃」も含め、ここから言えることは、原発は放射能を拡散させる「武器」になりうる潜在的な装置だということだ。もちろんこれは「核爆発」を伴う原爆などの「核兵器」とは異なるものの、生命と暮らしにとって脅威を与えるものであることは間違いない。

 私たちは、女川原発の再稼働について、「県民の意思を無視したもの」というプロセスの非民主性や、「安全が確保されていない」ことによる事故の可能性と避難の困難さを訴えてきたが、それに加え、「安全保障面」での危険性を問題にしなければならない。「潜在的核兵器」とは共存できない。
 今回の戦争で、図らずも天然ガスや石油などを他国に依存することのリスクや、原発などの巨大発電所に頼るリスクも明らかになった。進めるべきは、(環境破壊に十分留意した)分散された再生可能エネルギーによる発電の推進であるとともに、岸田首相も3月3日の記者会見で「これまで以上の省エネに取り組み、石油やガスの使用を、少しでも減らす努力をすることが大切だ」と述べたように、企業など社会全体で電力需要を削減することである。
 必要のない、危険な原子力発電所はいらない。3月26日の「STOP!女川原発再稼働 さようなら原発 宮城県民集会」に結集し、あと1年といわれる女川原発2号機の再稼働の動きにあくまで反対の意思を示していこう。
 (事務局 舘脇)