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≪短信:7.12硫化水素流出事故の情報公開顛末記 その3≫
2021.7.12硫化水素流出労災事故に関する文書の「一部非開示決定」(女川町と宮城県)に対する2023.5.26付「審査請求」<『鳴り砂№306』2023.10.3短信>から早や2年以上が経過しました。そこで、この間の経過を備忘的に報告します(筆者自身が忘れてしまいそうですので!)。
☆宮城県・石巻市・女川町と規制委への2024.9.20申し入れ
硫化水素問題の新たな情報を得るため、開示請求と並行して、2024.6.3に宮城県と東北電力に申入れ等を行ない、7.10,12に回答を受けましたが<『鳴り砂№310』>、さらなる真相究明のため、9.20付で宮城県・石巻市・女川町と規制委員会に対して(真相を語るつもりのない東北電力は除外)申入れを行ないました<『鳴り砂№311』別冊掲載>。それに対し、宮城県からは10.18、女川町からは10.24、石巻市からは11.11に、それぞれ回答がありました<『鳴り砂№312』本冊「編集雑記」:回答内容は風の会HP掲載>。
しかし、いずれも“予想通り”東北電力の「虚偽説明」を鵜呑みにしたほぼ同内容の回答で、唯一の注目点は、女川町の⑤回答で、「現在も再発防止対策を継続しており、硫化水素の発生抑制に努めることで、タンク内の硫化水素濃度を酸素欠乏症等防止規則に定める基準値10ppm以下に抑えられていると説明を受けています」とのことで、初めて「タンク内の硫化水素濃度」が「10ppm以下」(=0ppmを維持できていない)との数値が明らかになったことだけです。
なお、同じく東北電力の「虚偽説明」を鵜呑みにして、女川2有毒ガス防護申請を許可した規制委からは、自身の誤判断・見落としが明らかになるのを恐れてか、今年(2025)7.7時点でも回答はありません(黙殺?)。
☆宮城県・女川町の審査請求について
女川町情報公開・個人情報保護審査会からは、2024.10に非開示容認「決定」と、それに基づく同町の「裁決」が出されましたが、決定・裁決理由に特に見るべきものはなく、条例的にも争っても無駄と思われましたので、そのまま放置しました。
一方、宮城県情報公開審査会は、条例的に“少しは争える”と期待していますが<*「スミ消し裁判」に懲りずに!>、今年3月末時点でも審議未開始とのことで(先行案件が10件以上)、やはりこの7.7時点でもでも音沙汰はありません。こちらは、もしも非開示容認なら裁判で徹底的に争おうと思っていましたが、時間の経過等で、その気力が徐々に失われつつあります(県・東北電力の粘り勝ち?)。
☆炉規法第62条の3に基づく報告は「存在」するか?
このような閉塞状況・八方塞がりの中、この間の福島原発1号機IC問題の関係で改めて法令を見ていたら、改正後の炉規法第62条の3で、発電用原子炉設置者は原子力規制委員会に対し「原子力施設等に関し人の障害が発生した事故(人の障害が発生するおそれのある事故を含む。)…が生じたときは、…遅滞なく、事象の状況その他の主務省令で定める事項を主務大臣…に報告しなければならない」とされており、実用炉規則第134条で「法第六十二条の三の規定により、発電用原子炉設置者…は、次の各号のいずれかに該当するときは、その旨を直ちに、その状況及びそれに対する処置を遅滞なく、原子力規制委員会に報告しなければならない」として、第14号で「…発電用原子炉施設に関し人の障害(放射線障害以外の障害であって入院治療を必要としないものを除く。)が発生し、又は発生するおそれがあるとき」との規定を見つけました。硫化水素という「放射線障害以外の障害」ではあっても、「入院治療を必要」とした7.12事故(被災7名、うち入院3名)は、まさに報告対象です。
ちょうどこの頃、東北電力が7.12事故後に行なった有毒ガス防護申請(2021.12.16)に係る資料に‘筆者の見落とし・収集漏れ’がないかを確認するため、開示請求を行なおうと思っていましたが、炉規法第62条の3等に基づく報告(炉規法報告)に未知の資料が潜んでいる可能性もあると考え(規制委HPを適時チェックした際に筆者が見落とした可能性もあると思い)、それも含めた7.12事故に係る東北電力提出文書の開示請求を、今年(2025)3.14付で行ないました。
その後、5.15付で開示決定(対象25文書)がなされ、6.13に受領(DVD-R:約5,000円の出費)しましたが、開示文書をよくよく見たら、有毒ガス防護審査資料のみで、事故直後の炉規法報告がないことに気付きました。開示担当者が請求内容を見落とした可能性もありますが、もしかすると「文書がない」から開示しなかった可能性もあるため、改めて炉規法報告に限定した開示請求を6.30付で行ないました(他方、有毒ガス防護審査に係る規制委・規制庁の作成資料を6.14付で請求)。
なぜなら、炉規法報告が万一「不存在」なら、炉規法第78条1項26の2号の「第62条の3(…)の報告をせず、又は虚偽の報告をした者」は「一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」に該当する可能性があるので、文書の有無は非常に重要だからです。
実際には、3.14開示請求での見落としで、東北電力は2021.7.13「お知らせ」や11.5最終報告などの宮城県等への送付文書などを規制委にも“抜かりなく”送付しており、それらが炉規法報告として開示されるだけかもしれませんが、その場合でも、東北電力の炉規法報告(特に最終報告)が「虚偽の報告」(硫化水素の大量蓄積・放出が原因、再発防止策で無害化)として争える余地があるのではないでしょうか。
<2025.7.9記 仙台原子力問題研究グループI>
…と思っていましたが、この間福島事故の件で意見交換している辰巳裕規弁護士(原発賠償ひょうご訴訟弁護団)にお尋ねしたところ、罰則が「一年以下の懲役」等の場合は「時効3年」とのことで、結局、2021.11.5最終報告を起点にしても既に時効が成立しており、「虚偽報告」の争点化(東北電力告発)は“砂漠のオアシス”でした。
やはり、炉規法43 条の3 の23(設置許可基準・技術上の基準への適合性)等で争うしかないのでしょうか。 <7.13追記>
