会報「鳴り砂」2025年9月20日号が発行されました

会報「鳴り砂」(2025.9.20)2-138号
会報「鳴り砂」(2025.9.20)2-138号別冊

(一面です 長いので前半のみ)
「経路依存性」を打ち破れ! 原発ゼロの未来を選ぶ討論集会が大成功

8月30日、「原発ゼロの未来を選ぶ 8.30討論集会」がフォレスト仙台にて、会場130名、Zoom25名の参加で開催された。主催は「さようなら原発みやぎ実行委員会」。昨年末女川原発2号機が再稼働したことを皮切りに、原発回帰の動きが加速している。これは今年2月に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」に沿ったものだ。これに対し、どのような論理と運動を構築していくのかを考えていこう、と企画された。
松久保肇さん(原子力資料情報室事務局長)が「自公政権による『原発回帰』への大転換を問う」と題した基調講演を行い、中嶋廉さん(原発問題住民運動宮城県連絡センター世話人)と鴫原敦子さん(東北大学大学院農学研究科学術研究員)も交えてパネルディスカッションを行った。会場からの質疑応答も交え、中身の濃い集会となった。当日の動画はこちら。
https://www.youtube.com/watch?v=-J6a9WHnty0
風の会HPには動画とあわせて当日の資料も掲載しています。

●松久保肇さん講演~自公政権による『原発回帰』への大転換を問う~

 エネルギー基本計画での原発推進の理由は4点。①エネルギー安全保障に資する準国産エネルギー、②安定電源、③脱炭素電源、④他電源と遜色ないコスト水準。これらを批判する前に、松久保さんは14年たった福島第1原発事故の状況から話を始めた。

○福島原発事故の廃炉計画の見直しが必要

廃炉は2051年まで、また中間貯蔵施設は2045年までに撤去するという約束になっています。デブリは約880t(推定)ですが、スリーマイル島原発事故では133tで、1日平均85kgを取り出しました。ポイントは、水を張ることができた、ということです。福島では、底が抜けて水が溜められない。本格取り出しは2037年以降なので、2037年~51年で取り出すことを想定すると、1日平均170kg。スリーマイル島の2倍です。いろいろな人がもう無理だと言っています。

低レベル放射性廃棄物が、国内の原発全部で約60万tに対し、福島第1原発6基だけで780万t出てきます。この処分地点を探し始めないといけないのですが、普通の原発の廃棄物の処分場所すらまだ決まっていません。そしてお金です。普通の原発の廃棄物処分費は250億円ぐらいなので、単純計算すると福島原発では22兆円となります。廃炉費用は8兆円を見積もっているので、これだけでも全く足りません。プラス他の費用などもかかってきます。私は原子力小委員会で何回か提起していますが、その度に政府はこの議論は他の委員会でやっているからここではしません、と。でも、他の委員会でやっていません。非常に無責任です。将来的には電気料金に上乗せされて国民負担になると思います。

○原発は温暖化対策にはならない

 電源ごとで計画から稼働までの期間が1番長いものは原子力で20年、この時点ですでに選択対象外です。電力中央研の試算だとCO2排出が1kWhあたり20gで、これが1番低いとしていますが、海外では違う。例えばソバクールというイギリスの研究者は24~32gとしています。また、2030年までに電源別でどれだけ排出を削減できるポテンシャルを持っているかのIPCCのレポートでは、風力と太陽光が圧倒的に多く、0ドル以下で対策できる領域が大きい。原子力はコスト高で削減ポテンシャルが少ない。

○原発は実は高い~建設費コストの算定を日本政府は低く抑えている

政府が行ったコスト検証だと、原子力は1kWhあたり12円~13円。ラザードという金融機関(海外)の推計値では27円。ブルンバーグのシンクタンクの推計では35円。日本の推計値の2~3倍近いコストがかかっている。一方で、日本では太陽光と風力が1番高いけれども、海外の推計では再生可能エネルギーが1番安い試算になっている。なんでこんなことになるのか。理由は建設コストの推計です。欧米では原発1基2兆~4兆円。バングラデシュのルプール原発だと1兆円。ところがエネルギー基本計画では7200億円です。発電コストは建設費が1000億円上がると1円は上がります。実際、電力会社は、原発はコストがかかりすぎて怖いから自前では建てられません、国民負担で立ててくださいと言い、国はその制度を導入しました。国は、原発は安いと言って推進しながら、実は高くなるかもしれないからその分のコストは全部国民負担としているわけです。詐欺みたいな話です。

○原発は紛争時に守ることができない。また、ウラン供給は不安定で、「エネルギー安全保障に資する」はウソ

政府は、原発の弾道ミサイル防衛についてイージス艦とPAC3で防衛する、と言っています。PAC3の射程距離は大体半径35kmと言われています。 そこで半径35kmでPAC3が配備されている基地を中心に円を書いてみましたが、どの原発も入らない。全く防衛されていません。
また、燃料が安定供給されるという話がありました。ウランの生産量のシェアを見ると、カザフスタンが41%。ニジェールもウラン生産が多いのですが、2023年軍事クーデターがあって、国有化してロシアに輸出するという話をし始めています。旧東側の関連諸国がウラン生産の半分ぐらいを占めています。

○世界と逆行する電源構成

世界の電源構成は、2040年に原子力は10%ぐらい、再生可能エネルギーが80~90%、残りが脱炭素火力で2%です。日本が目指す電源構成は、原子力が20%、世界と比べて倍です。再生可能エネルギーが40~50%と世界の半分、そして火力が30~40%と、世界から見れば明らかに逆行しています。しかもこの化石燃料を使う火力の5割~9割は脱炭素火力にしなきゃいけないので、ものすごいお金がかかります。原子力を20%にしようと思ったら、全て再稼働しないと達成できません。じゃ他の道はあるのか。できます。ヤコブソンという研究者が出している、2050年までに100%水力と風力と太陽光だけでエネルギー供給を賄うシナリオです。半分は省エネで達成するのがポイントです。

○再稼働で電気は安くなったのか? 実は…

東北電力の計画では、原発を再稼働するので、JEPX卸電力取引所の調達量を38.67億kWh減らせますとしていますが、ポイントは20.97円/kW という調達価格で、811億円下げられますと言っていることです。確かにこの年(2022年ころ)は20.97円なのですが、2019年~2024年の平均は14.27円、2005年~2024年で 11.82円。そして2025年は11.26円です。東北電力の計算は調達価格が高い年のものです。
一方、原発再稼働による費用増として、例えば核燃料の費用とか安全対策費の減価償却の費用とかがあり、合わせると439億円増えます。これを811億円と差し引きすると、例えば2005年~2024年の平均価格では18億円しか下げられません。2025年の価格で見ると実は4億円損しているという状況です。
しかも、これ以外に東北電力は原発維持費として年間1000億円払っています。つまり、東北電力の電力消費者は、原発を維持することによって実は損しています。
まとめますと、原発維持のために巨額の支出を既に行っており、電気料金は原発のあることで実は上がっているということです。原発を再稼働すると電気料金が下がるとみんな思っていますが、本当は違います。 

講演後の質問に対して、「社会科学や経済学で『経路依存性』という理論があります。原子力を進めることを決めてその方向に進んでいる以上、その選択しかできないっていうのが、経産省と電力会社の今の置かれている状況です。いろんな約束をしていて、やめるのが非常に難しくなるわけです」と回答した。