2025年11月12日に、「女川原発の再稼働を許さない!みやぎアクション」と「原発問題住民運動宮城県連絡センター」が東北電力へ質問書を提出しました。回答は12月の予定です。
女川原子力発電所2号機の「特定重大事故等対処施設」の設置期限延長と最近のトラブル、地球温暖化対策などに関する質問書
東北電力社長 石山一弘様
女川原子力発電所2号機の「特定重大事故等対処施設」の設置期限延長と最近のトラブル、地球温暖化対策などに関する質問書
2025年11月12日
女川原発の再稼働を許さない!みやぎアクション(代表:鈴木宏一)
原発問題住民運動宮城県連絡センター(共同代表:斎藤信一、小林立雄)
貴社は、女川原子力発電所2号機の特定重大事故等対処施設(いわゆるテロ対策施設、以下「特重施設」)の完成時期が予定より遅れること、このままでは運転停止に至ること、特重施設の設置期限の延長を働きかけることを明らかにしました。特重施設が安全確保に不可欠な施設なら、設置しないまま貴社が再稼働させたこと自体が疑問です。
女川原発2号機では、5月から6月にかけて水素濃度検出器が異常値を示し、10月には制御棒の動作を確認する定期試験中に制御棒1本が手動で挿入できなくなるトラブルが発生しましたが、いずれも原因が不明なまま運転が継続・再開されています。「安全対策に終わりはない」という言葉とは裏腹の対応で、疑問です。
また、米国ドナルド・トランプ大統領が来日し、日米首脳会談が行われた際に、貴社が米国産石炭を1億ドル超で長期購入することが公表されました。多くの国が、気候危機打開のために期限を決めた石炭火力発電の廃止に乗り出しており、世界の努力に逆行するものではないかと、疑問をもたざるをえません。
女川原発2号機の安全対策や気候危機打開に関わることは、住民すべてに関わる重要な問題です。そこで、以下の事項について質問いたします。
1ヶ月以内にご回答いただきますよう、お願いいたします。
【1】特定重大事故等対処施設について
貴社は10月17日、女川原発2号機の特定重大事故等対処施設(いわゆるテロ対策施設、以下「特重施設」)の完成時期を、設置期限の2026年12月から2028年8月に延期すると発表しました。「昨今の建設業界における労働環境の変化による影響など、当社の努力だけでは対応が難しい外的要因が発生している状況も踏まえ、工事完了時期の見直しが必要と判断した」(貴社プレスリリース)としています。
この特重施設は、設計及び工事計画の認可から5年以内(2026年12⽉22⽇まで)に設置することが求められています。このままでは、女川原発2号機は、2026年12月22日までに運転を停止しなければなりません。
貴社は、10月30日の記者会見で「特重施設の設置期限につきましては、現在、原子力エネルギー協議会(ATENA)が、原子力規制委員会に対し、建設業界における労働環境の変化を踏まえ、3年延長するよう要望しているところでありますので、今後の動向を注視するとともに、当社もATENAの一員として、適切に対応してまいりたいと考えております」と発言しました。これは運転停止を避けようとするものだと思われますが、以下の事項について伺います。
(1)欧州のEPR(加圧水型原子炉)では、航空機の衝突やテロに対する防護対策として二重格納容器が標準装備されています。それでも炉心損傷が発生した場合に備えて、溶融した核燃料を受けとめて短時間で冷却するコアキャッチャ―が設置されています。冷却施設は4系統を設置するよう求められています。
ところが日本の規制基準は、二重格納容器もコアキャッチャーも要求しておらず、既存原発の冷却施設は2系統だけです。
日本の規制基準は、世界のレベルにはほど遠いものですが、貴社の見解をお聞かせください。
(2)福島第一原発事故を受けて策定された新規制基準で、設置するよう求められるようになった特重施設は、「原子炉建屋への故意による大型航空機の衝突等のテロリズムに対応するための施設」とされていますが、二重格納容器のように格納容器の損壊を直接に防止する機能は有していません。貴社は、その主な機能を、①遠隔で既設の主蒸気逃がし安全弁を動作させ、原子炉圧⼒容器内を減圧する機能、②遠隔で水源から、原子炉圧力容器や原子炉格納容器へ注水またはスプレイする機能、③遠隔で格納容器圧力逃がし装置により、放射性物質を低減させながら、原子炉格納容器内のガスを大気中に排気することで、原子炉格納容器内を減圧する機能-と説明しています。これは、シビアアクシデントが発生した後の対処をよりましなものにするバックアップにすぎません。
安全確保に不可欠な施設なら、設置しないまま電気事業者が再稼働させることも、原子力規制委員会が設置を猶予する期間をもうけることも、あってはならないことだと考えますが、貴社の考え方をご説明ください。
また、設置しないまま再稼働できる期間を拡大しようとしているのは、特重施設を安全対策に必要不可欠の施設とは考えていないからではないでしょうか。合わせてご説明ください。
(3)貴社は、特重施設の工事計画を変更するのは「昨今の建設業界における労働環境の変化による影響などの外的要因」と、労働環境の変化を理由としてあげています。それ以外の、特重施設に特有の工事の問題などの理由を、ご説明ください。
(4)原子力規制委員会は事業者との意見交換で、特重施設の設置期限について「東北電力に追加の聞き取りを実施する」としていますが、貴社はどのように臨むのでしょうか。
(5)特重施設の工事期間が延長することにともない、特重施設の建設費が増加することは避けられないと思われますが、どの程度の増額を見込んでいるのでしょうか。
(6)貴社は女川原発2号機の耐圧強化ベントを温存しています。耐圧強化ベントを使用すれば、放射能を含むガスが環境中に直接放出されるので、最大の場合で基準の100テラBqを超える360テラBqの放射性セシウムが放出されると試算されています。このため貴社は、「炉心溶融が始まったら耐圧強化ベントは使用しない」と約束しました。また特重施設の設置でフィルター付きベント装置が1系統追加されるので、「特重施設が設置されたら耐圧強化ベントは撤去する」とも、表明していました。この約束は、今も変わらないでしょうか。
今回の工事期間延期により、耐圧強化ベントを使用する可能性がある期間が延長されることになります。県民の安全を守ることとは逆行するのではないかと思われますが、貴社はこのことをどのように捉えているでしょうか。
合わせて、ご説明ください。
(7)特重施設の設置期限の延長を要求することは、世界の水準より立ち遅れている日本の新規制基準をますます劣化させると思われます。この点について、貴社の考えをお示しください。
県民の安全を守るため、特重施設の設置期限延長の要求を撤回すること、女川原発2号機の運転を即時停止することを強く求めるものですが、合わせてお答えください。
【2】制御棒の不具合について
女川原発2号機において10月22日、制御棒の動作を確認する定期試験中に、137本ある制御棒のうち1本を原子炉に手動で挿入できなくなったとのトラブルが発生したと、発表がありました。不具合があった制御棒は、9月に行われた定期試験では異常はみられなかったということですが、現在においても原因は公表されていません。
以下の事項について伺います。
(1)稼動中の制御棒の動作確認検査は、どのような内容と頻度で行われているのでしょうか、ご説明ください。
(2)「手動では挿入できず、自動では挿入できる」という意味がよく分かりません。手動と自動の動作させる仕組みと違いをもう少し詳しく教えてください。
(3)仮に制御棒が1本稼働しない場合、運転や冷温停止にどのような影響があるのでしょうか。シミュレーションは行っているのでしょうか、ご説明ください。
(4)この不具合の原因が解明されて発表が行われるのは、いつ頃の予定でしょうか。
(5)制御棒に不具合を抱えたまま運転を続けていることは、住民には理解できないことです。原因が分かるまで原子炉を止めて、しっかりと調査するという考えはありませんか。
【3】使用済燃料の乾式貯蔵施設について
今年6月の石巻市議会総合防災対策特別委員会に貴社の佐藤大輔原子力副部長が出席し、使用済燃料の乾式貯蔵施設について、「工事認可申請を8月頃までに予定」していると発言しました。また貴社は、7月29日のプレスリリースでも、「詳細設計に係る『設計及び工事計画認可申請書』については、今後、準備が整い次第、原子力規制委員会へ提出することとしております」と、発表していました。
(1)詳細設計に係る「設計および工事計画認可申請書」は、いつ原子力規制委員会に提出したのでしょうか。まだ申請していないとすれば、その理由を教えてください。
(2)1棟目の工事着工は2026年5月、運用開始は2028年3月、2棟目の工事着工は2030年8月、運用開始は2032年6月と発表されていました。この予定に変更はありませんか。また、工事費については約144億円と発表されていましたが、変更はありませんか。
(3)六ヶ所再処理工場の事業許可では、「1日当たり再処理する使用済燃料の平均燃焼度は,45,000MWd/t/UPr以下とする」となっています。しかし、貴社の計画では、乾式貯蔵施設で貯蔵する使用済燃料は「燃焼度48,000Mwd/t以下」となっています。これでは六ヶ所再処理工場には搬出できないのではないでしょうか。
(4)乾式貯蔵施設で保管する女川原発で発生した使用済燃料は、8×8燃料が860体、9×9燃料が380体、01 8×8燃料が95体とされています。それぞれの燃焼度はどのくらいでしょうか。
【4】水素濃度検出器の異常値と交換について
女川原発2号機で5月と6月に水素濃度検出器が異常値を示すというトラブルが発生しましたが、貴社は8月に全4台を交換しましたが、その原因を究明することなく運転を再開させました。以下、伺います。
(1)水素濃度検出器が異常値を示した原因は判明したのでしょうか。いま設置しているものが正常だとすると、なぜ交換したものは異常だったのか、ご説明ください。
(2)同じ検出器と交換しても、欠陥がそのままではまた同じトラブルが発生します。8月25日に石巻市で開催された「第73回 女川原子力発電所環境保全監視協議会」で専門家が、「何が問題かを調べて、原因が分かったうえで交換すべきだ」という趣旨のことを発言しました。この意見に対する貴社の見解をお示しください。
【5】女川原発の降水対策について
貴社が工事計画の審査資料として提出した、「工事計画に係る補足説明資料 補足-130【発電用原子炉施設に対する自然現象等による損傷の防止に関する説明書】」(2020年6月18日)には、「設計基準降雨は91mm/hとして排水設備を整備」しているという記載があります(36枚目)。その根拠について、91mm/hが「石巻特別地域気象観測所において平成26年9月11日に観測された日最大1時間降水量の既往最大値」であったことを挙げています。
しかし地球温暖化などの影響により近年の降水量が軒並み増加しています。宮城県でも2018年7月10日に大崎市で時間雨量110mm、2025年10月1日に仙台市宮城野区で時間雨量100mmを記録しています。
そこで、以下の事項について伺います。
(1)女川原発2号機の設計基準降雨は、石巻特別地域気象観測所の既往最大値をもとに決定されたという理解でよろしいでしょうか。現在もそれは91mm/hでしょうか。
(2)降雨に対する防災では、降雨量よりも降雨強度(mm/h)を考慮することが重要です。設計基準降雨は、近年の線状降水帯による強い降雨を考慮して少なくても100mm/h以上に見直し、さらに1日の雨量も考慮にいれるべきではないかと思われます。
実際に女川原発2号機では、再稼働前の2022年7月16日に、原子炉建屋付属棟の地下2階原子炉再循環ポンプ電源室、および地下3エレベーターホールに雨水が流入した事例がありました。地球温暖化の実情を踏まえて、設計基準降雨の見直しがますます必要になっていると思われます。いかがでしょうか。
【6】トランプ政権に約束した、米国産石炭の複数年購入について
2025年10月28日に高市早苗首相と米国のドナルド・トランプ大統領が行った日米首脳会談の内容がアメリカ政府から公表されましたが、貴社が米国産石炭を1億ドル超で長期購入するという内容が含まれていたことに驚きました。
トランプ大統領は、2017年にパリ協定を「他国に利益をもたらし、米国の労働者には不利益を強いている」と攻撃して、パリ協定からの脱退を強行しました。この時に日本の環境省は、「気候変動問題は国際社会全体が取り組むべきグローバルな課題である。我が国は,先進国がリーダーシップを発揮し,パリ協定を着実に実施していくことが重要であると考える」とするステートメントを発表しました。
第一次トランプ政権に続くバイデン政権は、バイデン大統領就任の2021年1月にパリ協定への再加盟手続きを完了し、私どもは安堵しました。
ところが今年1月にトランプ氏が再び大統領に復帰し、就任当日にパリ協定からの離脱を含む大統領令「国際環境協定でも米国を第1に位置づける」を発出。4月8日には、石炭産業を復活させる大統領令に署名して、石炭火力発電所に石炭を活用することを奨励し、CO2削減に向けて石炭使用量を減らそうとする世界各国の努力にますます敵対するようになりました。
したがって、貴社の米国産石炭の購入はトランプ政権に加担するもので、原発と同様に気候危機打開を妨害するものです。そこで伺います。
(1)貴社が購入しようとしている米国産石炭について、その購入先、年度ごとの購入量と金額、いつまで購入するのかなどについて、説明してください。
(2)米国産石炭の購入により、貴社の今後の石炭総使用量が増えるのではないかと危惧しています。石炭使用量について、今後の年度毎の使用予定量をお示しください。また、温室効果ガスの排出抑制計画がどうなるのかについて、ご説明ください
(3)火力発電の中でも石炭火力発電はCO2排出量が格段に多いので、国際社会では直ちに廃止することを求める声が広がっています。一日も早く石炭火力発電をやめることを求めるものですが、お答えください。
以上
