仙台原子力問題研究グループに新しい投稿があります
-『福島原発事故分析検討会』の「非常用復水器に関する分析」について その6-▼「設置許可」と“不整合”な施工も「法的に問題なし」?▼
(以下は原稿のテキストのみです 上記pdfに図がありますので、ご参照下さい)
『鳴り砂№316・その5』(『その5』)で「配管接続の無断変更3件」について推定しましたが、その“真偽確認”のため1号機の「工事計画認可申請書(工認)」の開示請求を行ない(昨年6月請求、7月に建設完了前「目次」のみ請求に変更、10月に「目次」を見て絞り込んだ図面等を請求)、ようやく今年1月末に図面等を入手しました(企業秘密の「黒塗り」あり。本稿に影響なし)。以下、真偽報告をします。
◆「IC配管」接続の無断変更は「工認」初期から
まず、「工認」初期の第2回申請(日付は不明:S42.3第1回申請とS43.3第3回申請の間)で、既にICドレン配管2本が1本にまとめられ、その後に再循環系(B)吸い込み配管に接続されることが図示されていました【図1(赤丸部分)】。つまり、高圧注水系HPCIの新設に伴うS43.11の「設置変更許可申請」時点で、早くも添付書類8の図面と異なる配管接続に無断変更されていたのです。
ところが東電は、そのような「工認=実際の施工」での配管接続を「設置変更許可申請」には反映させず、3.11事故後、IC配管系統図を示した際に国に指摘され、初めて実態を公表<2012.6.20東電最終報告添付資料・添付8-6(2)>したのです。
なお、余談ですが、図の「赤丸部分」の弁の記号の記載をよく見ると、図の左側(格納容器の外側)が「4A・4B」(弁閉の記号:黒)、右側(格納容器の内側)が「3A・3B」(弁開の記号:白)と記載されています【拡大図1】。でもそれは間違いで、正しくは、図の左側が「3A・3B」、右側が「4A・4B」です。また、第7回申請(S43.3第3回とS44.3第11回の間)の図面(大まかに左右が逆)でも、図の左側(格納容器内側・圧力容器側)の弁が「3A・3B」(弁開の記号:白)、右側(格納容器外側)の弁が「4A・4B」(弁閉の記号:黒)と、やはり逆に記載されたままでした【拡大図2】。ただし、‘図面を軽視=図面通りに工事しない!’東電(やGE)なので、このような“些細な記載ミス”は実際の弁設置に影響しないと思われるのが“救い”です。
とは言え、上記の弁記号ミスは、東電(GE)の工認図面作成者がIC隔離弁4つの正しい順番すら認識しておらず、また、審査した国も“工認図面の細部をチェックせず/できず(規制の虜)”形式的に審査=眺めていただけ、ということを示すもので、だからこそ国は、前掲の第2回工認図面(+第7回図面)に明記されていた「ICドレン配管接続の無断変更」について、3.11事故時まで‘気付かなかった/気付けなかった’のです。
◆「SHC配管」・「CUW配管」接続もやはり無断変更
次に、『その5』で指摘した「原子炉停止時冷却系(SHC)」と「原子炉冷却材浄化系(CUW)」について、第6回工認・添付図面第6図「原子炉再循環系統図」【圧力容器を目印に、図を左右2分割して掲載】で確認してみました。
まず、分割図左側【図2】を見て気付くのは、圧力容器(中央部の大きなU字型)内側の左下に記載された出口ノズルからの再循環ポンプ吸い込み配管を見ると、「N1A(赤)」からの配管は再循環ループ“B”に、「N1B(緑)」からの配管は再循環ループ“A”に接続されています。余談かもしれませんが、東電(GE)によるこのようなノズルの「A・B」と再循環ループの「A・B」が対応しない(逆の)記号の付け方は、勘違い・人為ミスを誘発しかねない「非安全側の設計」だと思います。
さて、本論ですが、「N1A(赤・上)」から再循環ループ“B”につながる配管を追ってゆくと、確かに図左下の「非常用復水器」ドレン配管(弁の記号は書かれておらず)が接続されており(1ヶ所)、上記の無断変更後の実態と整合しています。
一方、「N1B(緑・下)」からの配管を見ると、最初のT字分岐部から下に再循環ループ“A”配管(本線)が伸び、次のT字分岐部から左に真っ直ぐ延びる配管は(図中に名称の記載はありませんが)「停止時冷却系SHCの取出配管」で、同T字分岐部(SHC配管の途中)から下へ、さらに左へ延びる配管が「炉水浄化系へ」と記載された「CUW取出配管」であることが分かります。
すなわち、設置許可図面どおりに‘SHC取出配管とCUW取出配管を反対側に接続’するのではなく、おそらくICドレン配管を2本とも再循環B系配管に接続(合流)したことを受けて、設置許可図面どおりに再循環A系吸い込み配管に接続(分岐)したSHC取出配管からCUW取出配管を分岐させた(無断変更)ことが分かります。
次に、分割図右側【図3】の右上を見ると、「停止時冷却系から」の戻し配管が再循環B系の吐出配管(赤)に接続されていることが分かります。上記のとおり「SHC取出配管」は再循環A系吸い込み配管に接続されていますので、設置許可図面に記載されたSHC取出・戻し配管の「同一の再循環系(A系)への接続」は、やはり無断変更されていることが明らかになりました。これは、『その5【図13】』で推測したとおり、再循環A系吸い込み配管と再循環B系吐出配管が近接しており、SHCポンプが再循環A系ポンプ側(北東側・図の右上)【図4】<第1回工認添付:1階平面図>に設置されるため、「SHC取出配管」をA系吸い込み配管に、「SHC戻し配管」をB系吐出配管に、“最短コース”(材料節約+狭隘な格納容器内スペースの有効活用)で接続したためだと推察されます。
同じく『その5【図13】』推測のとおり、「CUW取出配管」も再循環A系吸い込み配管に接続(実際には「SHC取出配管」から分岐。そのため『その5【図11】』ではSHCノズルだけが再循環系配管に記載)されていますが、これも、CUW循環ポンプが再循環A系ポンプ側(北東側:SHCポンプの上)【図5】<第1回工認添付:運転床平面図>に設置されているため、“最短コース”で配管を敷設したためと思われます。
◆「工認」で「設置許可図面」を無断変更しても「法的に問題なし」?
このように、ICドレン管も、SHC取出・戻し配管も、CUW取出配管も、「設置許可図面」<『その5の【図3、4】、【図9】、【図3】』:平成14年完本からの引用>に記載された接続方法が、いずれも実際の施工で(主に経済的理由等により)無断変更され、国もそれに気付かずに「工事計画認可」していた、ことが判明しました。
そもそも、今回の配管接続の検証は、昨年4月頃に<国会事故調報告書・参考資料pp.14-15>の「再循環系配管の鳥瞰図」【図6】の配管の接続状況(ノズル設置部位)を見た際、その基となるはずの「設置許可図面」と異なっていたことに気付いたのがキッカケでした。それは、接続部(ノズル)の配置・位置は、主要配管である「再循環系配管」の振動解析(耐震性評価)で重要な因子だからです。
結局、【図6】のとおり、再循環A系5番が「SHC取出配管」(「CUW取出配管」はSHC取出配管から分岐)、同B系5番が「ICドレン管」、41番が「SHC戻し配管」の接続部分(ノズル)と判明し、「再循環系配管」の振動解析(耐震性評価)への懸念は解消されました。ただし、上述のとおり、最重要書類であるはずの「設置許可図面」が実態と異なる不正確なものであることが確定しました。
ここで、<1992.10.29伊方最高裁判決>では、「原子炉の設置の許可の段階においては、専ら当該原子炉の基本設計のみが規制の対象となるのであって、後続の設計及び工事方法の認可(二七条)の段階で規制の対象とされる当該原子炉の具体的な詳細設計及び工事の方法は規制の対象とはならないものと解すべきである」とか、「原子炉設置の許可の段階の安全審査においては、当該原子炉施設の安全性にかかわる事項のすべてをその対象とするものではなく、その基本設計の安全性にかかわる事項のみをその対象とするものと解するのが相当である。もとより、原子炉設置の許可は、原子炉の設置、運転に関する一連の規制の最初に行われる重要な行政処分であり、原子炉設置許可の段階で当該原子炉の基本設計における安全性が確認されることは、後続の各規制の当然の前提となるものである」(下線筆者)と判示されています。したがって、「設置許可」で安全性が審査・確認された「基本設計」を“前提”に、「工認で具体的な詳細設計・施工」をしなければならないはずですが、東電(GE)は、最高裁が安全性の前提とした「基本設計」を無視し、「工認」で配管接続を無断変更したのです。
その点に関して、東電も国(当時の資エネ庁)も、ICドレン管の接続方法について、「…添付書類八の記載内容と実際の設備等との不整合については、法的には問題ない…」(下線筆者)と、平成3年時点で“手打ち・合意”しています(正に「規制の虜」)<東電最終報告添付資料・添付8-6(2)【抜粋】>。そのことで安心したためか、東電は、同時点で国から「添付書類八の記載内容について、その後の申請時点の実際の設備等を反映することが望ましいとされた」(下線筆者)にもかかわらず、ICドレン管が(平成3年10~12月頃と平成5年4月にも)「図面上の記載であったこともあり、抽出から漏れてしまった」<同上>のと同様に、本稿で判明した「SHC取出・戻し配管、CUW取出配管」の無断変更(不整合)も、「抽出漏れ」(それらの不整合を東電は現時点でも把握できていない、あるいは不整合を把握した上で“故意に隠ぺい”?)となったのかもしれません。その結果、平成13年の1号機の最終設置変更許可申請でも、平成14年4月の「設置許可申請書(1号炉完本)」でも、3件いずれの不整合も“放置”されたままになっていたのです。
しかしながら、上記東電と国の“平成3年合意(「法的に問題なし」との軽率な判断・お目こぼし)”は、その後になされた平成4年の伊方最高裁判決に照らして、(3.11事故後の現時点においても)本当に許されるものなのでしょうか。折しも、2.3に上告断念した玄海原発2訴訟で、福岡高裁は「新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の審査や判断に過誤や欠落はなく、具体的危険性はない」と判示したとされていますが<26.2.4岩手日報>、国・規制委や裁判所が主に審査・検証したのは「設置許可申請書」(添付書類を含む)だったはずで(以前の女川訴訟も含む他の原発訴訟でも同様)、その重要証拠が「工認=実際の施工」時に改変され現状と“不整合”になっている可能性があるものなら、福岡高裁判決のみならず伊方最高裁判決さえも“砂上の楼閣・机上の空論”となるのではないでしょうか。
そして、「基本設計」は‘設置許可申請書の本文の記載に限る(本文参考図や添付書類の記載は「基本設計」に当たらない)’という国の解釈(内規・平成3年合意)は、そもそも炉規法・実用炉規則等のどの条文・規定を根拠にしたのでしょうか。
3.11事故から15年を迎える今、本稿指摘の3件の配管接続の“不整合”が示す東電(GE)の建設当初からのいい加減さ、それを(平成3年当時も、3.11事故後も)問題視しない国の規制のいい加減さ(伊方最高裁判決との齟齬)、その結果明らかになった「設置許可」(基本設計)が「工認=実際の施工」(詳細設計)で無断変更され“不整合”となる問題(国の「法的に問題なし」とする判断)など、安全性への影響の有無も含めて、改めて検証する必要があると思います。
<2026.2.6了 仙台原子力問題研究グループI>
P.S. 本連載の対象である「検討会」は、ICの検証作業について「2025中間とりまとめ+ヒアリング」で終結させたつもりなのか、直近の1.15第53回会合では議題にありませんでした。1.28「今後の取組方針」によれば、「現在は、事故当時、IC作動により変化(減圧)した圧力・温度の実測値を再現するため、計算コードで用いる解析モデルなどの検討を行っている」、「非常用復水器(IC)の事故時挙動分析を行い、その機能及び効果を把握する」とのことなので、結果を待ちたいと思います。
なお、今回の「工認」図面から他に何かが分かれば、追って報告します。
