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―最近の気になる動き 85´―≪追記:県議会「請願採択」の“誤った判断”≫
2020.10.22宮城県議会は、女川町商工会からの女川2再稼働への早期理解表明を求める請願を、賛成35:反対19:棄権2で採択(反対請願は賛成少数で不採択)<2020.10.23朝日:以下も朝日>。その際、同請願の紹介議員の1人である「佐々木幸士氏(自民)は『原子力発電は安定的に電力を供給できるベースロード電源。当面は原発の稼働が必要だ。』と指摘。国のエネルギー政策上の必要性や、復興の途上にある地元の女川町や石巻市の思いに寄り添う責任があるとして賛成の考えを表明」<同>。また、『自民党・県民会議』の1人は「…だが、原発は国策なので『賛成』の結論しかない。」と漏らしたとのこと<10.24>。
このように、「県議会と市町村長の考えを県民の総意として政府に伝える」<10.14>とか「県議会と市町村長の意見を最重視する」<10.23>と村井知事が述べた県議会が、両請願者の出席・説明も求めず、最初から『国策だから』と“審議・議論放棄”するのは、‘安全性は国が確認済み’として同様に『原発は国策』と考えていると思われる村井知事による再稼働同意の“露払い・お膳立て”でしかないものと思われます。
さて、本稿(気になる動き85)では、女川2再稼働は東北電力の一経済活動・利潤追求手段(無駄な経費は削減)でしかなく、女川町の再稼働賛成派の「地元活性化などの期待」が“的外れ・実現不能”でしかないことを明らかにしましたが、本追記では、紹介県議(や今後の村井知事?)の国におもねった「再稼働推進・容認」が同じく“的外れ”でしかないことを、10.7請願書に基づき明らかにしたいと思います。
請願理由には、言い古された「我が国・日本・国」レベルの‘原発は①ベースロード電源、②準国産エネルギー・国富の海外流出、③温暖化対策の柱’などの枕詞(まくらことば)の文言と、「本町・町内・当町」レベルの‘厳しい経済環境、原発停止による売上減少、復興需要減退’を打開する「中長期的発展並びに地域経済活性化」や「多くの波及効果」への期待が、何らの脈絡・関連性もなく羅列されています。
まず、前者の枕詞ですが、原発が真に「①ベースロード電源」だったなら、2011震災後から約9年も深刻な電力不足等が生じていないことを、どう説明するのでしょうか。原発の発電電力量は2010年で2882.3億kWh、火力5232.7億kWhで、原発「0kWh」の2014年は火力7177.6億kWh<原子力市民年鑑2018-2020:309頁>ですから、火力の焚き増しだけで補ったわけではないと思われます。再生可能エネルギーが一部を代替したなら、それをベースロード電源として位置付けるべきで、「変動性」を問題にするなら、それを「平準化」する電源設備(火力・揚水水力・蓄電など)とセットで、ベースロード電源と見做せばいいのです。しかも、社会全体がコロナ禍で過去の慣習からの脱却を模索している現在、原発=ベースロード電源“幻想”を持ち出すのは時代錯誤で、国はむしろ再生可能エネルギーの「変動性」に合わせた“地球・地域にやさしい”エネルギー消費・ライフスタイルを提案すべきです。
原発=「②準国産エネルギー」論もまた、過去の遺物でしかない「再処理・プルトニウム利用(増殖)路線=核燃料サイクル路線」を前提としたもので、現実には六ヶ所再処理工場は単なる使用済核燃料の一時貯蔵庫でしかなく、再処理で回収されるプルトニウム(+ウラン)の有効な使い道(高速増殖炉・プルサーマル)もほとんどなく、「準国産エネルギー」論は既に破綻しています。また、初期の原発購入や100%海外からのウラン購入、海外の高速増殖炉開発・再処理委託などに費やした(60年前から続く)「国富の海外流出」には全く言及せず、震災後(9年)の火力の焚き増しによる燃料(石油・石炭・天然ガス)購入だけを「国富の海外流出」とするのは、公平ではありません。むしろ、「完全国産エネルギー」である再生可能エネルギーの開発や平準化に「国富」を投入するよう求め、女川・石巻地域に積極的に誘致すれば、「国富」が地元経済を活性化することは明らかです。
原発=「③温暖化対策の柱」論についても、震災後9年間も“折れたまま”にしておくなら、もはや「柱」という位置付けはふさわしくありません。それに関連して、県議会請願採択を伝えた同じ<10.23朝日>に、面白い記事「温室ガス実質ゼロ 問われる本気度」が載っていました。本文では、「再生エネ同様に発電時にCO2を出さない原発」と“正しく”記載していましたが、それ以上に注目すべきは「環境省の資料を改変」したグラフ【右図】で、「温暖化対策の柱」の原発約50基が稼働していた震災前2009年から2013年にかけて‘CO2排出量は増加’し、「柱(原発)」が失われ「国富の海外流出」と引き換えの化石燃料を「火力発電所」で大幅に焚き増ししたはずの2014年以降(データのある2018年まで)は‘排出量が着実に減少’しています。つまり、原発の稼働は‘CO2削減’に寄与せず(仮にあったとしても、他の要因に簡単に打ち消されてしまう程度の寄与でしかなく)、「温暖化対策」上は2014年以降のように「原発なし」を続けるべき、ということです。
宮城県議会は、このような国のデータに基づき、むしろ「温暖化対策・CO2削減」のため‘女川2を稼働させないこと’を決議すべきだったのです。村井知事も「日本が地球温暖化問題に果たす役割」を重視するなら、県議会の“誤った判断”に従うことなく(尻拭いして)、「不同意」判断するしかありません。
更に、請願書では、原発停止による「原子力発電関係者の往来の減少等」が「売上減少」をもたらしたという“誤った分析”がなされていますが、本稿の繰り返しになりますが、震災後9年以上も‘原発停止に起因した’大規模な安全対策工事・防潮堤建設工事などにより「関係者の往来」が絶えず続いてきた中でさえ「売上減少」した状況を、再稼働後の定検作業(従前は13ヶ月運転後の4~5ヶ月間)だけの「短期往来」で解消できるはずはありません。むしろ、女川1の廃炉作業の方が「1年中の作業」を「数十年に亘って」期待できますので、再稼働ではなく2・3号機の廃炉を求めた方が、かつての1~3号機建設時(断続的)をも上回る‘数十年にも及ぶ間断のない「往来」=地元経済活性化’に繋がるのではないでしょうか。<ただし、それもまた東北電力の経費削減(や数十年の間の経営破綻?)により“期待外れ”に終わる可能性が高いと思われますが…。>
<2020.10.28記:仙台原子力問題研究グループI>