会報「鳴り砂」2-104号(通巻283号)2020.1.20が発行されました

会報「鳴り砂」2-104号(通巻283号)2020.1.20.

会報「鳴り砂」2-104号(通巻283号)2020.1.20別冊

以下2つの文章は、鳴り砂「付録」として、会員に発送したものです
「女川原子力発電所2号機の安全性に関する検討会」に係る要望書

高島武雄さん「東北電力株式会社女川原子力発電所2号炉の発電用原子炉設置変更許可申請書に関する審査書案に対する科学的・技術的意見の募集について」に対する提出意見(抜粋)

(以下冒頭論文です)
“被災”した女川原発の再稼働を阻止しよう!
―運動の積み重ねを今年にかけよう!―

昨年2019年11月27日、原子力規制委員会は、女川原発2号機が新規制基準に適合しているとの「審査書案」を了承し、マスコミは事実上の「合格」と報じた。すぐにパブリックコメントの募集が開始され、12月27日には締め切られた。早ければ1月末~2月に審査書が正式決定する可能性がある。
私たちは、女川原発が東日本大震災で大きな被害を受けた「被災原発」であり、しかも事故を起こした福島第一原発と同じ「マークⅠ型」であることから、事故の詳しい原因が不明で、その対策がいまだ確立していない現状を考えただけでも、再稼働はありえないと訴えてきた。その思いが踏みにじられたことに、強く抗議する。
東北電力は再稼働の時期を「2020年度後半」としている。まさに今年2020年が勝負の年だ。他の地域と連帯し、審査が通っても再稼働を止め続ける闘いを推し進めていこう。

●予想される今後の動き

よくいわれることだが、再稼働に向けた審査はまだ終わっていない。今回「審査書案」が了承されたのは、「原子炉設置変更許可申請」についてであり、適合性審査は他にも「工事計画認可申請」「保安規定変更認可申請」が残っている。特に「工事計画認可申請」は「原子炉設置変更許可申請書に記載された基本設計に従ってなされた原子炉施設の詳細設計について、技術基準を満足していることを審査するため」ということで、防潮堤の地盤改良など、「安全対策」に難工事を抱える女川2号機にとって、決して低くないハードルだ。
一方、宮城県の原子力安全対策課が作成した「女川原発2号機に関する今後の手続きについて」(2019年12月3日付 ※他県の先行事例を参考にしたイメージ)によれば、大きく3つの流れがある。一つ目は、安全協定に基づき、県・女川町・石巻市が、東北電力に「事前協議(施設変更)に対する回答」を行うというもの。その大きなカギが「女川原子力発電所2号機の安全性に関する検討会」の意見聴取だ。二つ目に、防災対策として、各市町の避難計画について、内閣府の「原子力防災会議」における了承。三つ目が、国と県との関係における「地元同意」。すなわち、規制委員会の「審査書」の正式決定を受け、経済産業大臣が知事に同意要請を行う。知事は、立地自治体やUPZなど県内市町村長の意見や県議会の意見を「聴取」した上で、経済産業大臣に回答する、という段取りになる。
そのようなまったなしの中で、私たちは以下の取り組みを取り組んでいきたいと考える。
①安全協定上の「回答」のもとになる、「安全性検討会」へのアプローチ
②「避難計画」の実効性のなさを、裁判などを通じて明らかにしていくこと
③議会内外での、再稼働反対の圧倒的世論の「見える化」
以下、それらについて簡単に述べていきたい。

●安全性検討会は、再稼働の旗振り役か? あるいは安全の守護神か?

12月26日、「女川原発の再稼動を許さない!みやぎアクション」など17団体は、安全性検討会の若林利男座長および検討会委員に対し、9項目にわたる「要望書」(※『鳴り砂』付録&風の会HP参照)を提出した。安全性検討会への公開質問はこれまでも何度か行っており、2016年12月以来3年ぶりの行動となったが、今回は規制委員会の審査書案が出た直後であり、これまでとは重みが全く違う。
安全性検討会のレゾンデートル(存在理由)は何か? それは、国(規制委員会)とは別個の独自の観点・視点で、女川原発の安全性、および再稼働に伴う問題点を洗い出すことにある。仮にそうではなく、国(規制委員会)の後追いとなるのなら、設置した意味はない。
ちなみに、新潟県の「安全管理に関する技術委員会」によって、福島原発事故の当時の社内マニュアルに沿えば、事故の3日後にはメルトダウンと判断できたことが明らかになっている。これは新潟県の委員会が国の後追いでないことを示しているが、宮城県の安全性検討会は、残念ながらこれまでのところ胸をはって「国の後追いではない」と言える状況ではない。村井知事自身が「国が責任をもって」と言っている以上、このままでは安全性検討会は再稼働の旗振り役に陥ってしまうのは目に見えている。
しかし、これまでの21回の議論の中でも、重要なポイントが出されているはずである。特に「被災原発であること」や「安全性の向上の現実性・実効性」、そして「避難計画の問題性」など、挙げれば数多くある。それらを真摯に総括議論することなく結論を出すことは、県民に対する背信となるのではないか? 今回の要望書にはそのような私たちの疑念が折り重なっている。さらに、「脱原発をめざす宮城県議の会」が要望した「水蒸気爆発のデータの不正引用」問題も大きな検討課題だ。この問題については今号『鳴り砂』の別稿(高島さん講演会報告等)を参照してほしいが、この問題が解決しない限り、前へ進めるべきではない。
安全性検討会が終わらなければ、知事は安全協定に基づく東北電力への回答を出すことはできない。私たちは「要望書」への回答を見極めるとともに、あと何回行われるか分からないが、安全性検討会への傍聴行動を強化し、再稼働を急ぐ東北電力のペースで進められることを食い止めよう。

●避難計画は「机上の空論」だ

11月12日、石巻市民が宮城県知事と石巻市長を相手に、再稼働に同意しないように求める仮処分を申し立てた。その根拠は、避難計画の実効性の無さだ。
12月3日に第1回の審尋が行われ、次回の審尋は2月12日に行われる(非公開)ということで、おそらくは半年以内に仮処分の決定が下されるのではないかと思われるが、この裁判の過程でも、避難計画が全くの「机上の空論」であることが明らかにされるだろう。
何しろ、「地震・津波と原発事故の両方が起きることは想定していない」というのが、避難者を受け入れる仙台市の立場である。詳しくは前号『鳴り砂』を見て頂きたいが、これ一つとっても混乱が目に見える。
その一方で、気になる話がある。規制委員会によれば、原発事故が起こった場合の事故後1週間の被ばくの目安を100mSvとしている(2018.10)。各地自治体のOIL1(緊急防護措置=数時間以内に避難)の基準は500μSv/h、OIL2(早期防護措置=1週間以内に避難)は20μSv/hとなっているが(それ自体高い基準だが)、その一方で、1週間で100mSvというのは、1時間あたり595μSvとべらぼうに高い値だ。これらのことから考えられるのは、今後事故が起きても「逃げられない」だけではなく、「逃げさせない」=屋内退避を最優先させることだ。実際、福島では、県が「事故があっても勝手に逃げないで下さい」と説明しているという。避難の混乱を避けるためとの根拠のない理由で、住民に被ばくを強要することを許すわけにはいかない。

●議会内外を貫いて、全県・全国で再稼働反対の世論を!

規制委員会の審査書案に対し、1か月のパブコメ期間には、「パブコメを出そう!」というみやぎアクションなどの呼びかけが行われ、宮城県内はもとより、原子力市民委員会など全国から数多くの意見が寄せられた。その内容は、規制委員会の審査はもとより、今後県の安全性検討会や議会その他での議論に大いに役立つ内容となっている。また、市民の多くの意見は、それだけ再稼働への疑問・反対がいかに強いものかを示している(のちに規制委員会のHPに総数が掲載されるはず)。パブコメ募集を単なる再稼働への「儀式」に終わらせないためには、規制委員会がこれらの意見に対し、逐一対応し、真摯に回答することを望むとともに、回答が不十分であれば双方向の意見交換の場を設けることが必要ではないかと考える。
東北電力にとって今後の焦点は、「地元同意」となる。端的にいえば、村井知事が再稼働を認めるかどうか、ということだ。これまでの知事の言動から考えて、「国のお墨付き」「安全性検討会の議論終了」となれば、「決める時は決める」(水道民営化など強引な手法)とする知事が認める可能性は高い。その一方で、放射性廃棄物の焼却問題では、突然の「一斉焼却」という知事の「通達」に対し、世論の高まりと市町村の「反乱」により、「一斉焼却」は断念せざるを得なかった(一部では焼却されているが)。つまり知事も圧倒的世論を無視はできないということだ。
昨年県議会では、女川原発再稼働に関する住民投票条例が11万筆もの署名が集まりながら否決されてしまったが、再度この条例を議会に上程する動きもある。昨年の県議選の結果、「脱原発県議の会」は21人で再スタートしているが、この県議会での取り組みに市民も協力していきたい。また、再稼働に真っ向から反対している美里町をはじめ、再稼働に疑問を持っている自治体や地方議員も少なくない。
さらに、女川原発は、東北の、そして東日本大震災の被災地の、ど真ん中にある。規制委員会の審査書案が了承されたとき、福島の被災者からは「ありえない」との声が上がったという。実際、昨年の直接請求の署名活動の時も、多くの福島出身者から激励の声があった。また、山形や岩手からも「なぜ東北で再稼働?」の声が届いている。全国からも注目されている。
風の会では、12月14日に半田正樹さんを講師に「原発のない女川を」という公開学習会を行ったが、そこで「こどもを連れた若い夫婦が移住しようと考えたとき、一番ネックになるのは原発の存在だ」という話があった。短期的に落とされる「お金」のために、持続的な社会の形成が阻害されることがあってはならない。「原発のない東北の復興を!」は私たちみんなの願いだ。この思いと、これまでの運動の蓄積・つながりを今年にかけよう! 3月には下記の大きな集会も準備されている。これを号砲として、2020年度の再稼働をなんとしても止めよう! (事務局 舘脇)

さようなら原発 みやぎ県民大集会
―女川原発再稼働を許さない!
        福島原発事故を忘れない!―
日時:2020年3月22日(日)
    13時 プレイベント・ブース開場
    13時30分 本集会開始
    14時30分 デモ出発
会場:仙台市勾当台公園市民広場
主催:集会実行委員会
〈連絡先〉090-8819-9920 舘脇
メールhag07314@nifty.ne.jp