▼雑感:もう1つの『フクシマフィフティ』!▼

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▼雑感:もう1つの『フクシマフィフティ』!▼

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★映画と“福島原発事故の真実”とは別!★
 この間‘なんとなく敬遠’していた門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」(角川文庫版:以下「同書」)を、事故9年目の今年3月6日から『フクシマフィフティ』として映画化され全国ロードショーとなることを知り、ついに読みました(ただし、2011年3月15日の吉田所長の「退避命令」後、最終的に福島第一免震重要棟に残ったのは「フィフティ=50名」ではなく「69名」:348頁)。吉田所長をはじめ登場人物がすべて実名ということに驚きましたが、そのことが内容を理解し易くしているほか、取材内容の信ぴょう性を高めており、その点では各種事故調報告を補う“貴重な史料”という印象でした。‘読まず嫌い’を大いに反省です。
 ただし、題名から予想(敬遠理由の一つ)された通り、「はじめに」から「…過酷な状況下で、退くことを拒否した男たちの闘いはいつ果てるともなくつづいた」(7頁:下線筆者)というNHKの某番組のような「男たち」の連呼(その後も至る所で)にはかなり閉口しましたが(被曝の危険性が大きい労働環境なので、「男社会」なのはある意味仕方ない面もあります。ただし、第17・20章に登場する佐藤眞理さんのような女性も、「退避命令」時まで大勢残っていたとのこと(それはそれで労働者被曝の点からは問題ですが…)。)、それでも“涙腺が緩くなっている”筆者は、予想どおり?後半のいくつもの「逸話」にホロリとさせられました。
このように、吉田昌郎所長以下の東電所員(フィフティや佐藤眞理さんら)・自衛隊員・協力企業などの「ヒーロー」に、「悪役・ピエロ」的な菅首相・斑目原子力安全委員長なども登場して、映画としては大ヒットするかもしれません(さすがは「カドカワ」。東電も全面協力?)が、筆者にとっては観客が映画(同書)の内容を“福島原発事故の真実”として受け止めてしまう(東電の責任を軽減・忘れ去る)ことが気がかりで、封切前に警鐘を鳴らそうと本稿を作成しました。<*といっても、一般の観客は本稿を目にすることはなく、‘ごまめの歯ぎしり’でしかありませんが…。>
少なくとも「風の会HP」(や3.20発行『鳴り砂』№284)で本稿をご覧の方は、『事故時運転操作手順書』で、(格納容器ベントの決断・指示以外の)事故時の「操作責任者」は「各号機の当直長」と明確に規定されており、吉田所長ではないことを‘頭の片隅’に入れておいてほしいと思います。吉田所長の“超人ぶり・情に熱い人柄”が強調されればされるほど、事故対応の第一の検証対象である「当直長・当直」への焦点がぼやかされることになります(事故の真相究明を望まない東電の狙い通り!)。