≪短信:硫化水素流出事故の情報公開顛末記:その1≫

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≪短信:硫化水素流出事故の情報公開顛末記:その1≫

 前号『鳴り砂』記載のとおり、2021.7.12硫化水素流出事故について宮城県と女川町より入手した情報から新たに様々な事実【別稿参照】が判明したことに“味をしめ?”、さらなる情報開示を求め、先日(5.26)、2022.6.2立入調査時説明資料の推定計12文書の非開示(黒塗り)処分に対する「審査請求」(異議申し立て)を行ないました。
 争点(審査請求理由)は、宮城県の場合は、情報公開条例第8条第1項第3号の「対象行政文書には、測定値、管理数量等の管理記録や、設備の運転、保守に係る技術情報、ノウハウ等が含まれており、これらは法人の内部管理に属する情報であり、公開することにより、当該法人の事業活動が損なわれると認められる」と、第4号の「対象行政文書には、核防護上重要な情報が含まれており、公開することにより、放射性物質を標的としたテロ活動等に利用されるおそれがあるなど、公共の安全と秩序の維持に支障が生ずるおそれがあると認められる」という非開示理由への該当性です。
 それに対して、非開示情報は「公開することにより、当該法人の事業活動が損なわれる」ような機微な企業秘密情報には該当せず、単なる測定値、管理数量等の管理記録に過ぎないもので、むしろ、第3号の例外規定である「事業活動によって生じ,又は生ずるおそれのある危害から人の生命,身体,健康,生活又は財産を保護するため,公開することが必要であると認められる情報」に該当する可能性が大きいことを主張しました。同様に、仮に第4号規定の「核防護上重要な情報が含まれて」いたとしても、「公開することにより、放射性物質を標的としたテロ活動等に利用されるおそれがある」ような機微な核物質防護上の機密情報には該当しないと主張しました。
 同様に、女川町に対しても、「法人等に所属する個人の氏名等については、女川町情報公開条例第7条第3号に規定する法人に関する情報で、開示することにより、当該法人の利益が損なわれる可能性があると判断されるため」という今回の非開示理由について、まず、「法人等に所属する個人の氏名等」と、氏名以外の大半の主要な非開示情報が「等」という言葉で一括りにされている表記の不適切さを指摘した上で、条例第7条第3号は「法人その他の団体に関する情報…であって、開示することにより、当該法人等…の事業活動上の利益が著しく損なわれると認められるもの」とされているのに対し、当該非開示情報は、当該法人の利益が損なわれる「可能性」があるという程度のものでしかなく、第3号に厳密に該当するとは思われず、条例の原則公開の趣旨に反する不当な処分である、と主張しました。
 今後、宮城県・女川町ともに「情報公開審査会」の審議が始まりますが、両者の手続きは異なるため、個別に対応する予定です。両審査会とも“東北電力の情報隠し要請”を安易に受容せず、内容を精査し、『原則公開』を貫いてほしいと思います。
【追伸:宮城県からの6.20「弁明書」送付を受け、上記主張をさらに詳しく述べた6.30付「反論書」を提出しました。近日中に審査会での審議開始となり、意見聴取等がなされる予定です。女川町の場合、実施機関の決定理由説明書が作成されれば、直ちに審査会へ諮問・審議開始となるようで、意見聴取等の連絡待ちです。】
<2023.7.2了 仙台原子力問題研究グループI>