会報「鳴り砂」2019年11月号が発行されました

会報『鳴り砂』2-103号(通巻282号)2019年11月20日
会報『鳴り砂』2-103号(通巻282号)別冊 2019年11月20日

(一面論文です)
女川原発2号機再稼働-県知事と石巻市長は同意するな!
石巻市民が同意差し止め仮処分申立

11月12日、石巻市民17名が「宮城県知事と石巻市長は、女川原発2号機が運転を再開するのに際して、同意をしてはならない」と仙台地裁に同意差し止めの仮処分申立を行った。
申立ての理由は、「女川原発2号機の30㎞圏内(UPZ)の住民が人格権に基づき、避難計画に実効性が欠けているにもかかわらず、住民に知らせないままで再稼働に同意しようとしている宮城県と石巻市に同意を差し止めることを求める」ものである。電力会社ではなく、自治体を相手取り、避難計画の実効性を争う訴訟となっている。

●14万市民を振り分けただけの避難計画!
 申立てを行った石巻市民は、女川原発の避難計画に関心や多くの疑問を抱き「女川原発の避難計画を考える会」を立ち上げ、宮城県が作成した原子力防災のガイドラインとそれに基づく石巻市の広域避難計画について、昨年の4月より、その検証のため毎月1回の検討会・学習会を重ねてきた。
 それぞれの居住地から、市の広域避難計画で示された避難経路に従い、実際に避難してみた結果、交通渋滞で30㎞圏内から脱出できない恐れや避難退域時検査所や受付ステーションを経て避難所までたどり着けない恐れがあること、風向きで避難先を変更する場合はどうするのか、指定された避難先で拒否されたら二次避難所はどうなるのかと様々な疑問が生じた。避難計画は、県内に限定した他自治体に、14万市民をいかにして振り分けるかに苦心した、机上のプランでしかないと言わざるを得ない。

●避難計画の実効性は、同意の必須条件!
自家用車で移動が困難な住民のためのバスが確実に確保できるのか、入院患者や高齢者施設、障がい者施設の入所者など「要支援者」などの社会的弱者の避難問題、複合災害時における対応などを指摘し、宮城県や石巻市に4次にわたる公開質問や「合同説明会」開催要求、情報公開請求を行ってきた。
宮城県と石巻市は、合同説明会については、「避難計画は策定途上で、住民の不安を煽る」として「現段階ではできない」と開催を拒否、「避難計画の実効性確保は、再稼働同意の必須の条件ではないのか」という質問については、「(同意を求められたら)国の原子力防災会議の状況なども踏まえて判断する」と国の指針で判断する姿勢で、住民の意見など無視する構えだ。

こうした県や市の姿勢を放置するなら、避難計画の実効性について市民への説明がないままに再稼働が同意されてしまうことを危惧し、「市と県の避難計画に実効性があるのかないのか」「実効性がないとすれば,それでも再稼働に同意してよいのか」を法廷の場で明らかにし,市民や県民に伝えるための手段として、「女川原発の再稼働に同意しないこと」を求める仮処分を申し立てたのである。

●県と市の避難計画は実効性がない!
申立で、避難計画に実効性が欠けている7点を指摘している。第一に、交通渋滞で避難所にたどり着けないこと。第二に、複合災害時に受け入れ自治体から受け入れを拒否され、二次避難先が確保できないこと。第三に、バスの確保、手配ができないこと。第四に、病院、高齢者施設・障がい者施設などの入院、入居者など「要介護者」の避難が困難であること。第五に、市の行政移転先が確保されないこと。第六に、オフサイトセンターが機能しないこと。第七に、安定ヨウ素剤の緊急配布ができないこと、を上げている。
その理由として、第一に避難者の視点を欠き“避難させる側の視点”のみで計画を作成したこと、第二に現場調査を欠いたこと(机上のみの計画)、第三に設計ミスの放置(30㎞圏内からの脱出と指定した避難所への避難を同時に達成しようとした設計ミス)、第四は宮城県が現場責任を果たそうとしていないこと(バス確保をバス協会に丸投げ)、第五に福島事故の教訓を全く反映させていないこと、を指摘している。

●「事前防止義務」違反状態での同意は
人格権侵害
人格権は、個人の生命、身体、精神及び生活の平穏等の人格的利益を保護する権利である。将来違法な侵害が発生する恐れがある場合、その侵害の原因となる行為の差し止めを請求することができる。
宮城県と石巻市は、避難計画の実効性を確保することが求められている。ところが、現状の計画は実効性を欠き、東日本大震災の津波で児童と教職員が犠牲となった大川小学校の控訴審判決が実効性の高い避難計画の事前の整備を怠った学校側の責任を厳しく指摘した、いわゆる「事前防災義務」に違反していることは明らかである。
実効性に欠ける避難計画は事前防止義務違反であり、違反状態での同意は二重の違反となり人格権を侵害するもので、県知事と石巻市長は女川原発再稼働に同意してならないのは明らかである。
同意差し止め裁判に支援と注目を!
(「女川原発の避難計画を考える会」日野正美)