会報「鳴り砂」2020年7月号が発行されました

会報「鳴り砂」2-107号(通巻286号)2020.7.20.
会報「鳴り砂」2-107号(通巻286号)2020.7.20.別冊
資料集…行政や議会へ向けた市民団体の文章(請願書・意見書・申入書・質問書・要望書)
6月23日公開質問書への宮城県回答
6月23日公開質問書への内閣府回答

(巻頭論文です)
村井知事の再稼働同意を許さない県民の声を結集しよう!
この秋が最大のヤマ場に

宮城県内でも新型コロナウィルス感染者が累計132人(7月18日現在)に達するなど、まだまだ感染状況が落ち着いたとはいえない中にもかかわらず、宮城県は6月26日、突然「女川原子力発電所に関する住民説明会」の開催を発表した。これによると住民説明会は、8月1日から19日まで、女川・石巻など7カ所で行うとしている。
 また、それに先立ち7月29日には、おそらく最後になるであろう安全性検討会の開催が予定されているが、なんと時間はたった45分としており、まさに「形だけ」の〝修了式〟になる可能性が高い。
 一方、7月6日には、石巻市民19人が訴えていた「同意差し止め」の仮処分について、仙台地裁が却下の決定をだした。債権者(原告)は10日に即時抗告を行ったが、この決定が再稼働を進めようとする村井知事の後押しになることは明らかだ。
 これらの動きから、村井知事はこの9月県議会に、再稼働の同意案件を諮り、一気呵成に「同意」にもっていく可能性が高くなっている。この夏から秋が女川2号機の再稼働を止めるか否かの最大のヤマ場となる。
 『河北新報』の世論調査でも6割以上の県民が再稼働に反対しているという世論・住民の声を、いかにして再稼働を止める具体的な力に転化できるかどうか、今まさに、私たちにとって喫緊の課題である。署名や集会も含め、この夏・秋、村井知事のもくろみを突き崩す闘いを、総力を挙げて取り組んでいこう!

●女川町議会・石巻市議会で、再稼働反対の請願の審議始まる

現在、女川町議会と石巻市議会で、それぞれ再稼働反対の「請願」と、賛成の「陳情」が審議されている。石巻では6月10日、市議会の総務企画委員会で審査があり、趣旨説明で賛同団体を代表して加賀剛さんが「市民の命と生活を守るために石巻市民の代表である市議会がしっかり議論して、この石巻から国、県の姿勢を変えていっていただきたい」と20分に渡り熱弁をふるった。その後委員の議論をへて、全委員一致で「継続審議」、「連合審査会で審議」が確認された。

 また、6月29日には女川町議会の原発対策特別委員会で審議があった。これまでと異なり公開となったこの委員会で、大崎市の住民が提出した請願の趣旨説明を元鹿島台町長の鹿野文永さんが行い、推進派の議員も静かに耳を傾けた。また、「原発の危険から住民の生命と財産を守る会」の高野博事務局長は「広域避難計画は具体的、合理的と言えない。福島事故の経験からいっても、この計画では被ばくを避けることはできない」と訴えた。

●「作戦会議」を経て、公開質問状の提出・回答・申入れの連続行動

 6月14日、県内で脱原発運動をしている団体、および「脱原発をめざす宮城県議の会」が参加し、今後の再稼働を止めるための運動をどう進めていくのかをテーマにした「作戦会議」を開催した。コロナ禍のため、会場に実際に参加したのは30人余りだったが、リモートで約20人が参加し、双方向で意見を交換しあった。
 そして、6月22日、政府の原子力防災会議が避難計画を了承したのを受け、県内25団体が県に公開質問状を提出した。またこれとは別に内閣府にも公開質問状を送付した。県への質問書では、県が5月に公表した試算を避難計画に盛り込まなかったことを問題としたうえで、その試算の条件に、「トイレ利用や食料補給の所要時間」や「移動車両の運転手の睡眠時間」などを考慮しなかった理由など、具体的に26項目にわたって質問した。
 それに対し、7月3日に回答が届いたが、まったく唖然とするものだった。なんと県は「係争中につき、回答を差し控えさせていただきます」と、たった一言で門前払いしたのだ。
一方、内閣府の回答には、「国(内閣府及び関係省庁)及び地方公共団体等は、地域原子力防災協議会において、避難計画を含むその地域の「緊急時対応」が、原子力災害対策指針等に照らし、具体的かつ合理的なものであることを確認している」とあったが、これは「原子力災害対策指針等」には適合しているが、それ以上ではない、つまり避難計画に有効性があるかどうかは問わない、とも読み取れるものだった。
これを受け、「みやぎアクション」などが7月8日には記者会見、そして7月15日には宮城県へ「安全性検討会に係る要望書」「住民説明会に係る質問書」を提出と、連続的な行動を行い、県や国がごまかしたままで見切り発車的に再稼働プロセスを進めようとすることに、あくまで抗議と是正の訴えを行っている。

●「却下決定」は、「過酷事故」のみならず、現実の再稼働プロセスを無視している

 こうした中での7月6日の仙台地裁の却下の決定は、地元住民の仮処分にかけた思いに全く応えないばかりでなく、現実の再稼働プロセスを無視した空論になっている。この決定の問題点については、『鳴り砂』今号にある原団長の思いのこもった文章を読んで頂きたいが、ここで一つ指摘したいのは、この決定の中にある次の箇所だ。「…本件了解等(=知事の同意)は、いずれも、原子炉の再稼働の要件として法定されている手続ではなく、(中略)これ自体によって、東北電力又は政府に対して本件2号機の再稼働を積極的に求める性質のものとは解されない。…本件了解等自体をもって、本件2号機の再稼働をさせ、これに伴って放射性物質放出事故を発生させる具体的危険性がある行為と評価することはできない。」(決定文26ページより抜粋 下線引用者)
 いうまでもなく、安全協定(に基づく知事の同意)は、国の原子力規制委員会の審査とは全く異なる視点、すなわち地方自治・民主主義の観点から再稼働の是非を判断するためにある。したがって、「本件了解等」がされたら、この決定の文章とは全く逆に、「東北電力又は政府に対して本件2号機の再稼働を積極的に求める」ことになるのは誰が見ても明らかではないか。また、「放射性物質放出事故」の可能性があるから「避難計画」を策定する義務があるのであり、その「具体的危険性」を示さなければ却下というのでは、まるで福島事故以前の考え方ではないか。債権者(原告)は、この空疎な決定にめげず、即時抗告して、今後も一歩も引かず争う覚悟だ。わたしたちも全力で支援していこう。

●住民説明会は延期すべきだ

 6月22日、安倍首相が議長を務めた国の原子力防災会議が開かれ、女川地域原子力防災協議会が取りまとめた避難計画が了承された。「感染症対策が初めて盛り込まれた」との触れ込みで「避難にあたっては密集を避け、極力分散を図るなど、被ばく防護措置と感染防止対策の両立も図っていきます」といつものように中身はないのに表向きには自信たっぷりの安倍首相だったが、実際には「両立」は不可能だ。なぜなら、放射能対策は基本的に「密封」しなければならず、また「密集」を避けるためにはこれまでの計画を大きく上回る数の避難所が必要になるからだ。
 しかし、この了承に「我が意を得た」村井知事は、「防災対策については一定のところまで達したとみていいと思う。大きな節目を迎えた」として、すぐさま行動に移った。それが住民説明会の開催決定である。
 だが、ちょっと待ってほしい。住民説明会には、規制委員会や内閣府の担当者が東京から参加し、住民との質疑応答に直接応答することが必須だ。決してリモートで済ませることができる軽いものではない。だが、いまや東京は「第2波」ともいえるような感染状況にある。女川の住民からも「多くの住民が集まる場に東京から参加となれば、コロナが町に持込まれ蔓延するのではないかと不安がある」との声が聞こえる。実際、石巻では女性2人が首都圏に行ったあと感染した例があり(経路は不明だが)、これまで感染者ゼロの女川町民にとっては怖くて住民説明会への参加をためらうことも大いに考えられる。
 東北電力は女川2号機の安全対策工事の完了を2022年度まで延期している。そうであるならば、無理にこの8月にどうしても住民説明会を行わなければならない理由は全くない。唯一考えられるのは、9月(遅くても12月)の県議会で同意案件を「片付けて」しまおうと目論む『村井知事の算段』だけだ。「決めるときは決める」といって、これまで数多くの反対意見を事実上無視してきた村井知事が‘このタイミングで’と「決めた」のが、この夏になったというに過ぎない。
 従って、住民説明会は少なくともコロナの状況が全国的に収まるまで延期すべきである。また、コロナ感染を理由に同意手続きを簡略化すべきではないことは言うまでもない。
 さらにいえば、今回発表された住民説明会の開催要綱には問題が多い。なぜ説明者に県が入っていないのか。県は避難計画の「阻害要因調査」結果を内閣府(地域防災協議会)へ報告していないが、「事故発生時に最終避難所までたどり着けるのか?」は住民の最大の不安事である。これに答えない説明会に意味があるのか? また、なぜ登米や美里などUPZで説明会が行われない市町があるのか? なぜ事前申込した上、さらに運転免許証など本人確認が要るのか? なぜ録音できないのか? など問題だらけである。
 ただ、以上のような問題点を県にぶつけつつも、万が一開催強行となれば、この説明会で私たちの主張と疑問を大いに訴えることは最低限必要である。
 福島原発事故を経験した私たちは、ひとたび過酷事故が起きれば、女川や石巻だけでなく、場合によっては仙台を含め、宮城県内全域が避難せざるをえない可能性があることを知った。しかしながら、事故前と変わらず、女川や石巻だけが「地元」だというような姿勢を一貫として取り続けている旧態依然とした県の対応は不当であり、県民すべてが当事者であるこの同意案件は、誰でも参加、意見を述べることができ、合意形成がなされる機会が保障されなければならない。決して一部の住民だけで決められることがあってはならないし、また、その参加住民たちが事故後の責任を負えるものでもないことは、フクシマを見るまでもなく明らかだ。

●9月決戦に向け陣形をつくっていこう!
 
 このように村井知事がこの秋にも「同意」する可能性が高まるなか、私たちも早急に陣形をつくる必要がある。まずは、現在展開されている請願署名をさらに広げていこう! また、9月6日に延期して開催されようとしている「神田香織さん講演会」を成功させよう! そして9月末に計画されている「さようなら原発みやぎ県民大集会」を数千人の結集でかちとろう!
 村井知事のみならず、県議会議員や市町村長・議会にも、私たちの「原発ノー 再稼働は許されない」という決意を見せつけよう!
  (事務局 舘脇)