「能登半島地震が突き付けた原子力災害対策上の問題を直視して、女川原発2号機再稼働の中止を求める申入れ」「女川原発の再稼働で電気代が安くなるという発言に関わる質問書」(2月9日付)への回答の場

東北電力に対する「能登半島地震が突き付けた原子力災害対策上の問題を直視して、女川原発2号機再稼働の中止を求める申入れ」「女川原発の再稼働で電気代が安くなるという発言に関わる質問書」(2月9日付)への回答の場

2月9日に東北電力に提出した上記の申入れ・質問書に対して、3月4日回答の場が設定されました。以下、その回答と質疑です。

女川原発の再稼働で電気代が安くなるという発言に関わる質問書に対する東北電力の回答2024.3.4
能登半島地震が突きつけた原子力安全、原子力災害対策上の課題を直視して、女川原発2号機再稼働の中止を求める申入書2024.3.4

女川原発の再稼働で電気代が安くなるという発言に関わる質問書に対する東北電力の回答

【質問1】
貴社は「⼩売規制料⾦の認可の概要について」において、原価算定期間の3年間について、他社の原子力発電所からの受電は「織込んでおりません」と説明しています。
しかし、受電量がゼロであるにもかかわらず、原発からの購入電力料として他社に支払うために265億円もの経費を計上しています。経費を支払う対象は、東京電⼒HD(株)の柏崎刈羽発電所1号機と、日本原⼦⼒発電(株)の東海第二発電所です。
柏崎刈羽原発1号機は、再稼働の申請をしておらず、再稼働せず廃炉になると見込まれている号機です。日本原電の東海第二原発は、地元合意が得られないために再稼働のメドがたたない原発です。このような原発に対して、受電量がゼロなのに巨額の支払いをすることは、需要者にとってはきわめて不可解です。
そこで、その理由について、貴社と東京電力HD(株)および日本原電との間でどのような契約が交わされているのかを含めて、ご説明ください。
また、女川原発2号機と3号機に関わって、他社との間で類似の契約があるかどうか、また契約があればその内容も、説明してください。

<回答>
昨年の6月に提示しています電気料金値上げに至った際の、まず、見積り内訳としましては、日本原電の東海第二、それ以外の原子力事業者との契約に関する内容というものでございます。
回答としましては、こちらについては株主総会等でも回答させていただいておりますけれども、他の事業者との受給契約に関する内容に関することにつきましては、現在、全面自由化という状況でもございますので、競争上の観点ですとか、もしくは守秘義務等もありますので、そういった観点から回答は差し控えさせていただきたいと考えております。

Q、契約の内容については、競争上の観点とか、守秘義務があるという理由で答えられないということですが、契約があるかないかは答えられますよね。あるんですよね。
というのは、政府に出した資料の中に、東電に対するもの、日本原電に対するものが、明確に書かれている。株主総会でも、日本原電に対する支払いがあったことは、過年度について報告されております。契約があるということは、確認してよろしいですよね。中味については、コメントしなくてもよろしいですが。

<回答>
 料金の支払いがあるということですから、当然、なにがしかの契約にもとづいて、支払いが行われているということです。

Q、日本原電は理解しやすいです。いまは止まっているけれども、基本料金のような支払いがあることは、イメージできます。
ただ、東電については、理解しにくい。政府に提出した資料には、支払いの先が柏崎刈羽原発の1号機と書いてある。ずっと休止しているし、再稼働の申請も出ていないから、将来にわたって発電はゼロだと思われる。そうすると、何のメリットもないのに、維持費だけ出しているということになる。株主総会で、過年度に、柏崎刈羽原発について、言及されたことはなかったのではないでしょうか? 契約の内容に立ち入らないにしても、どういう事情で柏崎刈羽原発1号機について支払いをしなければならないのか、不可解なので、ご説明いただければいいのですが。

<回答>
 柏崎刈羽原発につきましては、以前から、一部の電気について受電をしているということにもとづいて、お支払いをしているということでございますので。そちらの内容に従っております。また、原子力につきましては、最終的に廃止するというところまで、しっかりと設備を安全に保持しなければいけないというところは、みなさまにもご理解いただけると思います。そちらについて、維持の費用をお支払いさせていただいているということでございます。

Q、柏崎刈羽原発への支払いについて、株主総会で説明されたことはなかったのではないでしょうか。もし、いまの説明のとおりであれば、廃炉になるまで支払いが続くのでしょうか。

<回答>
 そちらにつきましては契約内容になりますので、続けるかどうかにつきましては、私の方から説明することはできません。

Q、過去に受電した時に料金を支払うというのはわかるけれども、それ以降、ずっと止まるっていて、受電もしていない、守秘義務だから、いつまで払うのかは言えない、明らかにできないというのは、それはない話じゃないんですかねえ。

<回答>
 会社としても、東京電力との交渉という観点もありますので。当社が、今の段階で、どうということは、会社の方の利益にもならないかなと、考えております。

Q、志賀原発のことが能登半島地震で話題になっていますが、北陸電力が負っていた、売電に相当する支払いの負担について、関西電力に対して、止めたんですよね。御社としても、交渉をしていただけないか。
 女川原発に関わる契約について、中味に立ち入らないにしても、逆の関係の契約はあるんですか。東電に売る契約があって、東電からお金をもらっているのでしょうか。

<回答>
料金審査の専門会合の中で、すでに東京電力様の方が、公開している情報ですが、東通原子力発電所1号機は共同開発ということで、内容については申し上げられませんが、そのような契約はあると。

Q、女川については、ないんですか?

<回答>
 女川については3号機が対象です。

Q,東京電力から、毎年、もらっているということですか?

<回答>
 それは、契約の内容になるので……答えられません。

Q、もらっていたら、毎年、会計上、計上しなければならない。

<回答>
 支払いがあった場合は、他社販売ということで、計上しています。

Q、毎年もらっているんでしょう?

<回答>
経費は毎年かかりますが、毎年もらうかどうかは契約の内容に関わることになりますので。

Q、受電というよりも、毎年、維持管理料を支払っているということですか。

<回答>
かかっている費用の、一部をいただいているということです。

【質問2】
大島堅一氏は、「原発の電気を調達する経費」を年1617億円と試算しています。
これは、貴社が公表している「特定小売供給約款変更認可申請補正書」(2023年5月16日に経済産業省の審議会である「電力・ガス取引監視等委員会 料金制度専門会合」に提出)の第230ページに、原子力発電費(固有)を3年で4054億6584万円余と記載しているので、その年平均を1352億円とし、これに柏崎刈羽原発と東海原発からの電力購入費である年265億円を加えたものと思われます。
この試算に不正確な点や誤りがあれば、具体的に指摘して教えていただきますよう、お願いいたします。

<回答>
大島先生の記載されている内容について、不正確な点、もしくは誤りがあれば指摘してほしいという話ですが、こちらにつきましては、1月28日の「河北新報」朝刊3面だったと思いますが、掲載された記事の各数値につきましては、当社の電気料金変更認可申請および国の料金制度専門会合に提出いたしました資料から引用されているものでございまして、不正確、もしくは誤りといった数値はございません。

【質問3】
貴社は、女川原発2号機による発電電⼒量は。料金算定期間の平均で年38.67億kWhとしています。「原発の電気を調達する経費」を年1617億円とすると、原発からの電気の調達原価は41.82円/kWhと試算されます。
JEPX(日本卸電力取引所)から電気を調達する場合の単価について、貴社は20.97円/kWhとしています。原発からの電気の調達原価は、その約2倍にもなります。
女川原発2号機を再稼働させ、加えて他社の原発からも電気を買って原発依存を続けるよりも、JEPX(日本卸電力取引所)から電気を調達した方が、はるかに安いのではないでしょうか。原発が電気代を高止まりさせていることは明確だと思われますが、この点についての貴社のお考えをご説明ください。
また、この試算に不正確な点や誤りがあれば、具体的に指摘して教えていただきますよう、お願いいたします。

<回答>
 女川原子力2号再稼働に加えてそれ以外からも電力を受けているについて、日本卸売市場から調達した方が遥かに安いのではないか。
こちらのご指摘に関しまして、ご指摘の根拠になっている原発の電気を調達する経費につきましては、すでに廃炉を決定しております女川原子力発電所1号機を含め、女川原子力発電所2号機以外の費用も含まれていると考えています。これらの費用につきましては、女川原発2号機のみの発電電力量より市場価格と比較することは、当社としては、適切ではないと考えております。
 また、原子力発電所の再稼働にあたりましては、中長期的な経済性や、安定供給の確保などを総合的に勘案し判断すべきと考えております。
 電源の調達を、日本卸売市場のみに依存することは、国際情勢の緊迫化などによりまして、多大なリスクを負うものと考えており、短期的な市場価格のみで判断すべきではないと考えております。

Q、2号機以外の経費も含まれているので、2号機の経費として考えるのは適切でないということだったと思いますが、現実には3号機は未申請で、1号機は廃炉になっているので、売電があるとすれば2号機です。原子力部分の経費を考えた場合、今は高くつくものになっているのではないかというのが私どもの問題意識で、そこを聞いているんです。
発電にかかった経費(は大きい)、(しかし)今は2号機しか売電はできない。単純に計算すると、42円近くの単価になってしまう。こういう状態にある、これ自体は、間違っていないと思うんですけど、よろしいんでしょうか。

<回答>
そういう計算をするということは、我々は否定するものではありません。
 われわれとしては、そういう評価にもとづいて、再稼働するものではありませんということです。

【質問4】
 貴社は、「⼩売規制料⾦の認可の概要について」において、送配電関連費を含む総原価は年1兆9743億円、年間販売電力量は687億kWhとしています。
大島堅一氏は、女川原発の再稼働による372億円の原価軽減効果を年間販売電力量(687億kWh)で割った単価は0.54円/kWhなので、使用電力量が月260kWhの標準家庭では、料金の引き下げ効果は計算上、月額140円になると試算しています。
一方で、「原発の電気を調達する経費」は年1617億円におよび、年間販売電力量で割った単価は2.35円/kWhになるので、標準家庭は原発の費用として月611円を支払っている計算になるとしています。
そして、その結論として「月140円安くなるために、611円を支払うことが不合理なのは明らかだ」と指摘しています。
大島堅一氏の指摘について、貴社のお考えをご説明ください。
また、大島堅一氏の試算について、不正確な点や誤りがあれば、具体的に指摘して教えていただきますよう、お願いいたします。

<回答>
 新聞に掲載されました大島先生のご指摘に対して、当社の考え方ということでございます。当社のコメントにも記載しておりますけれども、大島氏の指摘・評価に関しましては、女川原子力2号機の再稼働による効果と、当社の原子力に係るすべての費用を比較するように、原価低減効果の見方ですとか、原子力発電費用の対照範囲とか、前提条件の置き方によりまして、結論が変わってくるものと考えております。
当社といたしましては、女川原子力発電所2号機の再稼働にあたりまして、同2号機にかかる費用や、効果を勘案したうえで判断しておりまして、大島氏との評価の仕方が異なっているものと、認識しております。
なお、ご指摘にあります、女川原子力発電所2号機の再稼働による原価低減効果、マイナス372億円程度としておりますが、こちらは電源調達費用の減少である811億円分の減少から、再稼働に要する費用の増加分であるプラス439億円を差し引いた金額となっております。
ただ、この、費用の増加分につきましては、ご指摘にある原子力発電費1617億円にすでに含まれている費用でございます。そういった意味で、費用が二重に評価されているのではないかと、考えているところでもございます。

Q、今は再稼働を準備している状態で、(原発の)維持管理費がかかっている状態ですよね。
再稼働すれば、維持管理費はかかる、それに核燃料の代金などがかかり増しすることになる。しかし、火力の燃料費が811億円下がるので、その分で変化が起こるんです。という(説明は)分かるんです。
 だけど、原発をやめれば、維持管理費はこれまでのように多額の経費はかけなくて済むだろうし、核燃料代もかからない。(原発をやめれば)原子力発電費で、減るものがあるでしょうから、一般のユーザーは、端的に言って(再稼働させた場合と、原発をやめた場合とで)どっちが安いのかを知りたいんですよ。
 「比較の前提が違う」というのは、当たり前の話です。
大島先生は、独自の考え方で、(原発を)やめた方が安いんではないかと言っているんですが、そういう問いかけをしたら、どういう答えになるでしょうか。

<回答>
 今回、料金申請で示させていただいたとおり、(火力の)燃料費が下がるのが811億円、
再稼働するのにかかる経費が439億円、差し引きすれば(経費は)372億円のマイナスになる。その分を料金に反映させている、我々としては、料金は下がっているというふうに考えております。

Q、2号機を再稼働させることによる経費のプラスとマイナスを考えると、一般家庭で月140円のマイナスになる。しかし、原発があることにより、(もともと)これだけ経費がかかっている、大島先生は、もともと月611円の負担が発生しているんだと。
一般消費者は、再稼働で月140円下がるかもしれないが、もともと月611円の経費が発生しているじゃないか。(大島先生は)これをどう判断するのかと言っているんだと思うのです。

<回答>
 今回の料金は、2023年度から2025年度まで、3年間の料金です。その間に再稼働できるのは、女川2号機のみということになりまして、女川の3号と東通1号は再稼働できないという状態になっているのは確かです。その間も、維持管理費がかかるのは、事業運営上、安全管理も含めてコストをかけていく必要がある。そちらの方も経費も盛り込んでいく。
 ただ、将来にわたってコストが高いままなのかというと、当然、再稼働させれば女川2号機と同じようにメリットを得られる可能性があると考えておりますし、維持の費用は、当然、必要なものとして認められているものでございますので、折り込ませていただいているところでございます。この3年間だけをもって、高くなっている、安くなっているということではないんではないか。

Q、繰り返しになりますが、(東北電力から)再稼働させれば月140円の引き下げになりますよという計算が出されました。これに対して、大島さんは、もともと月611円かかっている、これを明らかにすることがフェアなやり方じゃないのかということを言っていると、思うんですよ。

<回答>
 繰り返しになるかもしれませんが、我々は今回、3年間の期間をとって算定しているものでありまして、女川の1号機にしても、3号機にしても、東通1号機にしても、過去に稼働している。その時のコストとメリットも、当然、その時の料金には含まれていた、というようなものでございますので、いま急に、この3年間だけ、それがないというような前提には、我々は置かないということでございますし、それを今はずすかというと、事業運営上の必要なコストとして申請をし、その審査に臨んで、ある程度認められた費用を、今回計上させていただいているというところでございますので、そこのところは前提の置き方が違っているというのであれば、大島さんと我々の認識の違いは、そこにあるのではないかなと思っておりまして。

Q、大島さんは、その3年間を前提にして、質問4の、後半の方の数字を出してしているんですよね。2号機を再稼働させても、これだけマイナスになるということを、言っているんだと思うんです。

<回答>
その3年間で、女川の2号しか、再稼働に含まれていないので、そういうところもあるかもしれませんけど、原子力発電の経済性というのは、もっと長く見るべきだと、我々としては考えているところです。

Q、しかし、3年間、3年間で、同じことになるのでは

<回答>
 コメントにあるように、前提が違います。大島先生と、我々の方では、前提が違っておりますので。平行線になってくるかなと。

Q、繰り返しになりますが。標準家庭が、そもそも原発があるということを前提にして、最終的に電気料金がどうなるかを問題にすると思うのです。前提というのは、同じなわけですよ。2号機を再稼働させることで家計にどういう影響が出るのか、そもそも原発があることによって、電気料金がどうなっていたのか、同じ問題意識で出発しているわけです。前提は同じだと、考えてもいいわけです。

<回答>
 女川原発2号機を再稼働させるということと、女川2号機以外も含めた原発の経費すべてをまとめて比較することと、比較対照として適切なのかどうか。これが我々の問題意識でございまして。申し訳ありません、いまやり取りさせていただいても、我々のスタンスとしては、女川2号機なら女川2号機の費用というものを、我々は見比べながら経営判断をしているというところですので、他の費用も含めてどうかというところは、我々としては評価の仕方が違うと考えています。
 女川3号とか動いていないところも、動いていた時期も含めて全体的に評価しないと、長い目で見ないと、コストに含まれているところのメリットというのも評価できないのではないか。

Q、大島さんは、3年間というところで、いずれの数字も出しているんですよね。

<回答>
今回の3年間ですよね。原子力発電所があることによるコストというふうにおっしゃられると、我々としては、原子力発電所はたった3年間あるということではないので。

Q、3年間というのは、東北電力さんが公表している数字で計算したら、3年間でこれだけのものになりますよと言っている。

<回答>
3年間の数字をとられているのは、我々としても、正しい数字だと。ただ、その数字を使って、どう評価するかは、それぞれの考え方ですとか、前提の置き方次第で、変わってくるんではないでしょうかというのが、1月30日に出させていただいたコメントの趣旨です。考え方の違い。

Q、長いスパンで考えろということだけれども、再処理をどうするかとか、使用済燃料をどうするかとか、今度は乾式貯蔵庫を建設して維持管理していくという、そんな経費もいろいろかかってくる。けっして、原子力発電が安価であるとは言えないと思うんですよね。

【質問5】
貴社は、本年1月30日の「お知らせ」で、女川原発の再稼働による原価低減効果について、約8カ月前の年372億円程度という数字をそのまま再掲しました。その翌日に貴社は、今期の利益が大きく増えることを公表し、その要因の一つに火力発電の燃料価格が想定よりも低位で推移していることを挙げました。
火力発電の燃料価格が低位で推移しているのであれば、再稼働による原価削減効果も想定より小さくなっているのではないでしょうか。ご説明をお願いいたします。

<回答>
 当社が1月30日に当社のホームページに「お知らせ」というところで載せたコメントしたものに対してのご質問ということでございます。いま現時点で市場価格が下がっている評価を、なぜ前の評価でしているのか、という趣旨のご質問と理解しておりますが。
ご指摘の点につきましては、「河北新報社の報道に関するものでございまして、その内容に沿ってコメントしたという形になっております。今回の報道、および大島氏の指摘におきましては、一昨年の11月から昨年の5月にかけて行われました、料金値上げに関する国の審査、申請の内容をもとに作成しているというところでございまして、その料金の算定の前提に合わせて、当社としましては、コメントしたというところでございます。
また、昨年の料金値上げの主な要因であります、ロシアによるウクライナ侵攻等による燃料価格、市場価格の高騰にありました。当社としては、女川原子力発電所2号機の再稼働を前提に原価を算定することで、電源調達費用の抑制が図られたものと考えております。
基準となる燃料価格、市場価格の算定にあたりましては、料金制度専門会合での指摘・指示にもとづき採録をし、原価低減効果についても、同専門会合での確認を受けたうえで、料金の認可をいただいております。
 なお、規制料金の申請に関わらず、当社といたしましては、原子力の再稼働にあたりまして、燃料価格・市場価格については、一定の前提を置いたうえで、評価・判断を行っております。

024年2月9日
東北電力株式会社
取締役社長 樋口康二郎 殿

能登半島地震が突きつけた原子力安全、原子力災害対策上の
課題を直視して、女川原発2号機再稼働の中止を求める申入書

女川原発の再稼働を許さない!みやぎアクション
原発問題住民運動宮城県連絡センター

1月1日に発生した能登半島地震は、マグニチュード7.6、最大震度7、志賀町では観測史上最大の地震加速度2828ガルが記録されました。加えて、志賀原発では、旧・原子力安全・保安院の時代に設定された基準地震動を超える地震加速度が記録されました。
国と地方自治体は、防災対策の全面的な再検討を余儀なくされており、とくに北陸電力志賀原発で発生した事象もふまえた、原子力安全と原子力災害対策の見直しが緊急に求められています。
そのさなか、貴社は1月10日に、女川原発2号機の安全対策工事完了と再稼働が、ともに「数カ月程度遅れる」と発表しました。完了延期は実に7回目ですが、今回は新たな工事完了時期をその場で示すことさえできませんでした。貴社の技術力・工程管理能力に対して、深刻な不信を抱かざるを得ません。
これらの事態は、女川原発2号機再稼働に係る、これまでの審査や行政手続きの前提をくつがえすものです。

 第一に、女川原発の耐震安全性に関して、抜本的な再検討・再評価が必要です。
能登半島地震で動いた断層は約150km(地震調査委員会)とされていますが、北陸電力は志賀原発の審査の中でこれを96kmと過小評価していました。北陸電力は海底探査の結果、地層の変形が見られなかったことを主な根拠としていましたが、今回の能登半島地震は、海底探査の限界や不十分さ、活断層の連動可能性を評価することの困難さを、事実をもって突き付けたと言えます。
今回の能登半島地震の知見を踏まえて、全国の原発の沿岸海域で、断層の再調査、連動可能性(その規模や長さ)の再評価、それに基づく基準地震動の再策定が必要になっています。さらには「震源を特定せず策定する地震動」の設定値の妥当性も問われます。
女川原発の沿岸海域にもいくつもの活断層があることがわかっていますが、海域断層調査の範囲はわずか30kmであり、まったく不十分です。活断層の見落としはないのか、陸域を含めて連動可能性が過小評価されていないか、非常に懸念されます。女川原発沿岸海域の断層の再調査・再評価、プレート間地震・海洋プレート内地震を含めた地震動の再評価、それらに基づく基準地震動の再策定が不可欠となっています。
さらに今回の能登半島地震では延長100km近くにわたって最大4m隆起するという、驚くべき地殻変動がありました。地震時地殻変動(隆起、沈降等)に対する原発施設の安全性についても、能登半島地震から得られる知見を踏まえた再検証が必要です。

第二に、女川原発の原子力災害対策(広域避難・屋内退避等)の抜本的な見直しが必要です。
能登半島地震では、地震動と地盤の液状化によって、多数の住家が倒壊・損傷しました。また土砂崩れなどで道路が寸断され、通信環境も悪化し、半島部の全域に「陸の孤島」と化した孤立集落が多発しました。
志賀原発周辺9市町の住宅被害は2万件を超え、志賀原発重大事故時の避難ルート11路線のうち7路線が通行止めになったと報じられています。
もし志賀原発が稼働中で、放射能が大量に漏れる事故が起こっていたら、どうなったでしょう。住民は屋内退避も広域避難も出来ず、放射線量が上がる屋外(に近い環境)で被ばくを強いられたであろうことは、想像に難くありません。
能登半島地震は、地震・津波と原発事故の複合災害時に被ばくを防ぐ対策の困難さ、とくに半島部にある原発の地理的リスクを、現実のものとして突きつけました。このことは、牡鹿半島の付け根に位置する女川原発にもそのまま当てはまります。
さらに原発の重大事故時には、モニタリングポスト等の放射線量率の測定値をもとにして住民避難を指示することになっていますが、能登半島地震では装置の損壊や停電による欠測が多数発生し、適切な避難指示が出来ない状況でした。
総じて、原子力災害対策指針とそれに基づいて策定された住民避難計画が、地震によって起こる原発事故にはまったく対応しない「机上の空論」であることが露呈しました。能登半島地震から最大限の教訓を引き出し、それを踏まえた原子力災害対策(屋内退避、広域避難等)の抜本的な見直しを行うことが不可欠となっています。

以上を踏まえた上で、次の2項目を申し入れます。
1,能登半島地震が突き付けた課題を直視して、女川原発の原子力安全(原発の耐震安全性)、原子力災害対策(屋内退避、広域避難等)を抜本的に見直す取り組みを早急に開始すること。
2,「今年5月頃から数カ月後」に予定されている女川原発2号機の再稼働を中止すること。1の取り組みを完遂すること無しに、女川原発2号機を再稼働しないこと。

<質問>
 第一に、女川原発の耐震安全性に関して、抜本的な再検討・再評価が必要です。
【回答】
一つ目につきましては、2月14日、原子力規制委員会において、屋内退避の在り方など検討を開始するとの議論が打ち出されたことは承知しております。
能登半島地震を踏まえた耐震安全性につきましては、メンバーの方もいらしゃいますが、2月22日の面談でも一部お話がありましたので、私の方から回答はさせていただいております。重複になるかもしれませんがご承知おきください。
能登半島地震を踏まえた電力でなんかやっているのかと申しますと、基本的には私の方は電気事業連合会に所属しておりまして、当社はじめ他の電力会社あとはプラントメーカー、と共に、能登半島地震を踏まえた原子力発電所の安全構築に向けた業界の取り組みという検討をすでに始めております。
どんな検討を始めているのかと、4つございまして、1つめは地震や津波の検証をやりますというのが一つです。2つめが発電所設備への影響はどういう影響があるのか、3つめが核防護施設への影響の検証、最後4つめが現場状況の確認や情報発信の検証。それについて、すでに検証を始めていますので、検証作業において得られたものについて、必要と判断するものについては、発電所の運営・管理に活かしていく。
質問の中にさらに細かいことがありましたので、若干補足説明させて頂きますと、今回は能登半島地震について、みなさんご承知のように断層が動いた地震です。例えば女川でどうなんだというところを回答させて頂きます。
まず、女川は皆さんご承知のとおり、2号については1000ガルという評価に基づいて対応しております。評価のメインとなった地震はですね、プレート間地震などの評価についてしっかり評価した結果、1000ガルになっております。また、断層に関してもしっかり、もう海底内にある断層もボーリング調査等してございます。これについては、影響がないということを確認してございまして、原子力規制委員会の中で説明済ということでございます。ただ先程來言っておりますとおり、何か新たな知見があれば検討していくという視点に変わりはありません。
じゃあどの位の断層の規模で検討していたのかというと、すこし専門的になりますけれど、発電所から大体5㌔から20㌔圏内にある過去に動いた断層、また仙台湾にある断層、こういうものをしっかり評価して、影響があるということで国のほうに報告しているというのが、具体的な内容になります。

<市民>海底の活断層について、F-2、F-4ありますよね、30㌔圏内、100㌔ぐらいまで音波調査をやったのか。

【電力】30㌔圏の海の中にあります。仙台湾の断層の評価を行って、影響がないということを原子力規制委員会に説明している。

<市民>志賀原発ででてきているのが、海底活断層の調査のなかで、150㌔ぐらい動いたと指摘されていて、北陸電力のほうでは志賀原発で評価してなかった。そういう事例があったのだから、東北電力でも不確実なものがあれば再調査すべきでは。

【電力】事業者間でメーカーもふまえて、検証を行いますので、そこで出てきたものについて、女川でも評価が必要だということになれば、しっかり評価するというのが私どもの考え。なにもしないということではなくて、検証を始めている。

<市民>前回も回答があったが、能登半島地震で起きたことを踏まえた検証を電事連を中心に始めますと。そこからなにか出てくれば、女川の対策に反映させる。検証作業は、女川原発の再稼働が9月と発表されているが、それより前に終わって、再稼働前に反映されるのか。

【電力】終わる時期はまだ未定です。項目に応じて対応するので、地震・津波というのはそれだけ必要な知見が必要でございますので、事業者のみならず、大学の専門家の方々、いろいろな方々にお話を聞いたうえで評価が必要になりますので、現在、何時終わるか言えない。ただ、しっかり検討はするのは間違いなくやりますので、知見などをしっかり確認して評価する。

<市民>どう考えても、地震や津波、断層の連動、北陸電力は見てなかったのだから、その点の再検証・再評価が必要と考える。今から半年そこらで終わると思いません、1年、2年かかる。女川2号機の再稼働をその前にやると言っているが、能登半島地震の知見が反映されないまま動かすということを、認めるということですか。

【電力】先ほども回答しましたけれど、私どもはあくまで1000ガルというのは断層ではなく、プレート間地震の評価を行ったうえで1000ガルという数値を出して、耐震評価しているのがまず事実です。それに基づいて国の審査に合格している。それに基づいた対応をして、安全対策工事をしている。それは紛れもない事実でございますので、当社としては先をみて進めさせて頂きます。ただ、先ほど言った能登半島地震についても、まったく無視する話をしておりません。いま検討しておりますので、検討の結果を踏まえて、必要なことは改善するというのが当社の回答です。評価がでれば対応します。評価が出なければ、現状のまま対応していく。

<市民>能登半島地震の知見を反映させずに、2号機の再稼働をするのは非常に問題があるともう一度指摘しておきます。

【電力】承っておきます。

<市民>どれをとっても当然のことと受け止めているとおもいます。これまでのスケジュールに固執するということは、これだけのことが起きたわけですから、大きな問題だと思います。責任もてますか。

【電力】貴重なご意見として伺っておきます。国の審査を経てこういう状況にありますので、国が改めて見直しがあれば対応する。現状は調査を行っているところですので、現時点で回答できるのは、公表した9月再稼働に向けてしっかり取り組んでいく。

<市民>しっかり取り組んでいくというのは、能登半島地震の教訓を活かそうという取り組みをやってからでなくて、国からこれまで審査の過程の中で評価をだして、合格を待つんだからいいんだという話ではない、違うんではないか。

【電力】そこは多分、地震・津波の話が一番大きい。それ以外については、どういう設備被害があって、どういう状況であったのか、全て電事連で確認して、当社設備に同じような影響があるのか確認している。そういったものはしっかりやって行く。3.11、4.7と大きな地震があって、特に影響がなかった。設備の仕様も違う。しっかり確認した上で、異常があれば対応しますけれど、現時点では追加対策はいらない。今のところ問題ない。

<市民>志賀原発は停止していたので、被害が拡大するいろいろな問題が起こるのを防げた。そういったことを含めて評価すべきで、対策を考えるべき。

【電力】志賀原発の現状を把握したうえで確認しています。志賀で全て電源が潰れた事例ではない。部分的に地震で送電線が使えない、変圧器から油漏れがあったが、それ以外の外部電源が使える状況にあったという事実がございますので、しっかり確認した上で、女川では、今回志賀で確認されたものが、どういう影響があるのか確認し、いまのところ対策が必要ない。ただ、電事連等で調査が始まっていますので、必要なものが出てくれば、しっかり評価して対応しますというのが、回答になります。

<質問>
第二に、女川原発の原子力災害対策(広域避難・屋内退避等)の抜本的な見直しが必要です。

【回答】さっき言ったとおりで、屋内退避については、1月13日の自治体と原子力規制委員会の意見交換の場で出た話です。UPZのある市長さんがUPZの屋内退避のガイドについてしっかり明記されていないと、これはおかしいと。そういうことを踏まえて原子力規制委員会の中で、2月14日、しっかり検討してきますと、お話をいただいていますので、その検討の中で事業者が関わるものがあれば、その点についてもしっかり対応しますというのが、回答になります。

<市民>原子力規制委員会が被ばくを前提にした対策に変えると、東京でやった市民との場で言っている。あきらかに方針が変わっている。被ばくを前提にする、津波と地震による被害対策を優先させて、避難は二の次だと、規制委員会の方針がそうなっている。

【電力】規制委員会ですから、事業者からそれにコメントできません。ただ、事業者として、原子力災害にともなう避難計画に協力できるものがあれば、当社としても最大限対応していく。

<市民>規制委員会委員長が、自然災害は我々の関知外ですと言っている。責任はありませんと言っている。地震や津波の被害は、原子力規制委員会の原子力災害対策には入っていないというのを認めていて、いわばどんな地震が来ても、津波が来ても、道路の寸断もなければ、家屋の倒壊もない、そういう前提で原子力災害対策、避難計画ができてる。事実上、原子力災害対策は破綻したと自ら認めた。

【電力】私の個人的考えですが、そこは国どおしの対応の決め方だと思っています。原子力災害の避難計画の窓口は内閣府になりますので、原子力規制委員会ではない。連携のなかで対応していく、国のなかで進んでいくのかと個人的に思っている。