会報「鳴り砂」2024年3月20日号が発行されました

会報「鳴り砂」2-129号(通巻308号)2024.3.20.
会報「鳴り砂」2-129号(通巻308号)別冊2024.3.20

一面論文です

3.23全国集会を成功させ、その力で9月再稼働を止めよう!

 2月19日、東北電力は女川原発2号機の再稼働時期を今年9月ごろと発表した。1月10日に、追加の火災防護対策のため数ヶ月延長と発表していたが、今回、6月安全対策工事完了、7月原子炉へ核燃料装荷、9月原子炉起動というスケジュールを示し「われわれの検査や国の確認もあり、再稼働時期には不確定要素もある」としつつも、「これ以上遅れることはない」と強調している。
 さらに2月27日、東北電力は女川原発2号機における使用済燃料乾式貯蔵施設の設置について、宮城県、女川町、石巻市に対し事前協議の申し入れを行った。これは使用済燃料を乾式貯蔵建屋で空気の自然対流により冷却する施設だが、東北電力によれば、「使用済燃料プールが再稼働から4年程度で貯蔵容量の上限に達することから、発電所の敷地内で一時的に貯蔵する施設とし」「1棟目は2028年3月、2棟目は2032年6月の運用開始を予定している」としている。青森県六ケ所村での再処理開始にめどが立たないための措置だが、安全性を考えれば2号機ではなく廃炉措置が行われている1号機の使用済燃料をこそまずは移すべきではないか。安全面より再稼働を優先し、新たに核のゴミを生み出すための燃料移動をそのまま認めることはできない。
 さらにこれを受け、女川町と石巻市は、貯蔵施設で保管する使用済核燃料に独自の核燃料税を導入する検討に入ったと報道された。これは課税することで早期の搬出を促すのが狙いだとしているが、長期化すれば新たな「原発マネー」として、原発への依存体質がさらに加速する恐れもある。
 さらに避難のための道路建設も進められているなど、9月再稼働のアナウンスとともにそれに向けた動きが加速されようとしているなかで、私たちは福島原発事故の原点に戻り、二度と放射能におびえることのない社会をつくるため、あくまで女川原発2号機の再稼働を止める様々な動きを作り出して行かなければならない。3.23「STOP!女川原発再稼働さようなら原発全国集会in宮城」の成功を皮切りに、この半年間さらに県内外で巨大なうねりを作りだしていこう!

●女川原発でも新たな検証の必要性を実感~「風の会つどい」での上澤さん講演

 3月3日、仙台市戦災復興記念館で「風の会2024会員のつどい」が開かれ、「能登半島地震と志賀原発の現状~女川原発の再稼働を問う」と題した上澤千尋さん(原子力資料情報室)の記念講演が行われ、Zoom合わせて約60人の方が参加した。(講演の資料と動画は風の会のHPにアップしています)
 周知のように、1月1日に発生した能登半島地震は、これまでの原発の地震に対する対策を一変させる重大な問題を提起した。しかし、そのメカニズムはまだ十分に解明されてはおらず、また原子力規制委員会などでの検討もこれからだ。そうした中での最新の情報を、豊富な資料を基にお話頂いた。具体的には①2024年能登半島地震 ②志賀原発の状況と影響 ③女川原発の再稼働を問う、の3点だが、以下印象に残った点を報告したい。

 ①能登半島地震の特徴は、地震領域の長さが150kmにも及ぶのではないかということ、震源から遠い志賀町でも震度7(2828ガル)を観測したこと、さらに地盤が4m以上隆起した(一方で沈降したところもある)ことである。
 特に、動いたと言われる150kmの断層から20km離れた富来川(とぎがわ)南岸断層で50cm隆起し、しかもそれが海まで伸びているのではないかという指摘は、重要だと感じた。

②志賀原発の状況と影響について、まず起きたこととしては以下である。
・1号炉の原子炉建屋地下2階で最大加速度399.3Gal
・1号炉・2号炉とも0.5秒付近の周期でバックチェック時の基準地震動Ssを超過
・1号炉の使用済み燃料プール浄化系ポンプが一時停止
・1号炉・ 2号炉の使用済み燃料プールでスロッシングによる水あふれ
・1号炉の起動変圧器で配管破損による絶縁油漏えい(3600リットル)
・2号炉の主変圧器で配管破損による絶縁油漏えい(回収油量は19800リットル)
・(外部電源の)赤住線66kV,志賀中能登線500kVで碍子などの損傷確認
・津波により,海面水位が3m上昇,1m降下
・敷地内の各所で地面・基礎に変形

 北陸電力は「志賀原発は、外部電源や必要な監視設備、非常用電源、冷却設備等については機能を確保しており、発電所に設置しているモニタリングポストの数値に変化はなく、外部への放射能の影響はありません」としているが、上澤さん指摘のように、外部電源も、またそれを受ける変圧器も両方損傷しており、しかも非常用発電機1台が一時自動停止するという事態も起こっており、決して電源確保が盤石な状態ではない。
 また、今回私自身が初めて知ったのが、海に突き出た「物揚場」の中央部全体が35cm沈下して使えなくなったことや、構造物の基礎の損傷や道路の変形など各所で地震の影響が発生していることだ。
 興味深かったのは、これらの影響を受けた地点を地図にプロットすると、かつて規制委員会の有識者会合が「活断層と解釈するのが合理的」と認めていた「敷地内活断層」に沿っていたという点だ。北陸電は追加データを示して否定し、2023年3月に活断層でないことが規制委員会で認められた。新規制基準では、重要施設の直下に活断層がないことを求めており、これが活断層だとすれば志賀原発の運転は認められない。しかし、今回これが動いたとなると、やはり活断層と認めざるを得ないのではないか、その思いを強くする重要な指摘だ。断層の挙動について知るために、舗装を取り除いてトレンチを掘るなどして厳正に調査することが最低限必要である。
 さらに問題なのは、志賀原発では地震の想定をマグニチュード8.1としていたのに対し、今回の地震はマグニチュード7.6とそれよりは規模の小さな地震だったにもかかわらず、一部で基準地震動Ssを超えたことだ。これは、応答スペクトルを用いた想定が甘いことを示しており、他の原発の審査内容にも影響を与えるものではないかと思われる。

 その上で③女川原発の再稼働を問う、というものだが、まず一つ目は活断層の検討だ。東北電力は女川原発周辺でのいくつかの地震について検討し、内陸地殻内地震(内陸活断層、仙台湾の断層群~北上低地西縁断層帯192km)は、海洋プレート内地震などに包絡される(それより影響が小さい)ということになっている(上澤さんは192kmを検討すべきとしていましたが、一応東北電力は検討していたようです)。ただ、先にも述べたように、この応答スペクトルでの評価が果たして妥当なのか、またその活断層が動くことに伴い誘発される断層がないのか、検討が必要だ。
 また、これは全ての原発に言えることだが、地震による地殻変動が審査において検討されていない、ということだ。もし女川原発で地盤が隆起し、取水施設から取水できなくなれば原子炉の冷却ができなくなる恐れもある。
 そして想定するマグニチュードに対する地震動の算定が過小になっていないか、つまり女川原発でいえば基準地震動1000ガル以上の揺れがこないか、あるいは1000ガルで本当に大丈夫なのか、という問題がある。
 規制委員会での審査でも、耐震評価にあたっては、基準地震動Ssから設定した入力地震動を基に、地震応答解析モデルを使って耐震評価をするのだが、その過程がブラックボックスで第3者が外部から評価することができない仕組みになっている。
 さらに、その耐震評価でも一部想定発生値が許容値ギリギリだったり、あるいはせっかく試験をして実測値を計測しているのに、実測値ではなく解析値でごまかしていることが資料から散見されるという(風の会HP掲載資料のp58~64参照)。特に燃料プール冷却浄化系配管サポートという重要設備に関して、評価基準値205MPaに対し2011.4.7地震をもとに解析したところ算出値が204MPaとギリギリの値だった。1000ガルの基準地震動で本当に耐えることができるのか、これでは全く安心できない。
 そしてこの講演では時間がなくお話し頂けなかったが、地震による原発事故災害時(複合災害時)の住民避難の困難さはいうまでもない。
 以上から上澤さんは「女川原発は再稼働してはいけない」ときっぱりと言い切った。その後質疑応答に入り、時間をオーバーする活発な討論が交わされた。
 能登半島地震も、また志賀原発の影響もまだ解明途上であり、今後さらに明らかになってくることがでてくると思われるが、それらの解明とそれをうけた対策なくして、女川原発も、また他の全ての原発も、動かしてはならないことを、上澤さんのお話を受け参加者は改めて確信した。
 講演のあと、風の会のつどいを行い、昨年の総括と今年の方針を確認した。参加者全員が思いを語って、今年の闘いへの決意を深める機会となった。
(舘脇)