会報「鳴り砂」2020年9月20日号が発行されました

会報「鳴り砂」2-108号(通巻287号)2020.9.20
会報「鳴り砂」2-108号(通巻287号)別冊 2020.9.20.
女川原発2号機の再稼働(設置変更)の事前了解に関する緊急要望書(2020.9.10)
仙台市長あて 女川原発2号機の再稼働に係る要望書(2020.8.19)
大崎市長あて 女川原発二号機の再稼働に反対の意見表明を求める要請書(2020.7.27)

(1面論文です)
村井県知事は同意するな! 再稼働に反対する請願を提出します!
県議会と街頭で、女川原発再稼働阻止の圧倒的な声を!

いよいよ地元同意をめぐる闘いは決戦の時を迎えている。7月29日に「安全性検討会」が形だけの「報告」をだして終了し、「なぜ今?」の声を無視して強行された「住民説明会」をへて、女川2号機の再稼働への流れが加速している。
 9月7日には女川町議会本会議で、再稼働を求める陳情を8対3で採択し、反対の請願を不採択して、立地自治体議会として初めて再稼働に正式合意した。さらに石巻市議会でも9月中に再稼働を求める陳情と反対の請願について議決する動きになっている。
世論調査では 再稼働反対が依然6割を超えるなど、私たちは決して再稼働に同意などしていない。9月23日に開会し、10月22日に閉会する9月宮城県議会では、この女川原発再稼働問題が最大の焦点になる。9月26日には、仙台市の錦町公園で「女川原発の再稼働を止めよう!宮城県民大集会」とアピール行進が準備されている。
 ぜひ多くの人に、議会への傍聴・議員への働きかけ・署名への協力、そして集会・デモへの参加を呼びかけ、「再稼働は許されない!」との声で村井知事を包囲しよう!

●宮城県は住民自治・民主主義に反している
 
9月6日の講演で、講談師の神田香織さんは「福島で原発事故が起きて、再稼働するママ馬鹿がどこにいますか! 冗談じゃないでしょみなさん、福島原発で困っている日本が、また再稼働する、こんなのは人の道に外れています!」と声を大にして語ったが、まさに参加者の思いを代弁したものだった(講演会の報告は別稿木村さん原稿参照)。
 この間の宮城県の動きは、まさに「人の道に外れている」といってもいいものだ。4月に東北電力が女川原発の安全対策工事を2022年まで延期することを発表し、しかもこの難工事がその期間で収まるかどうか分からない中、本当に再稼働が必要なものかどうか、安心安全なものかどうかをじっくり検討するのが、本来の住民自治のあり方だ。さらに、30km圏内の自治体に避難計画策定を強いるということは、そこまで放射能の影響を想定していることが前提であるから、その自治体も再稼働の「同意権」を持つのは当然だ。
すでに原子力規制委員会の「合格」が出ている他のBWR(沸騰水型)を持つ立地県をみると、新潟県は前者(ゆっくり検討)、茨城県は後者(同意権の拡大)が当てはまる。すなわち、新潟県では「合格」が出た後も、2003年に発足した「新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会」が福島事故の原因の追及や柏崎刈羽原発の安全対策について議論を重ねている。また、「新潟県原子力災害時の避難方法に関する検証委員会」が2017年に発足し、原発の避難のあり方について議論している。そして、それぞれの委員会に原発に批判的な委員も参加している。こうした慎重に議論を積み重ねている姿勢が、知事が自民党系に変わっても拙速に「地元同意」にまで至らない根拠になっている。
 また、茨城県では、東海第2原発の再稼働に関して、2018年3月、日本原電が東海村に加えて水戸、那珂(なか)、ひたちなか、日立、常陸太田の周辺5市にも事前了解の権限を認める新しい安全協定を結び、6市村は再稼働や施設の新増設について事前に説明を受けて意見を述べることができ、「実質的に事前了解を得る」としている。反対する自治体があった場合も「打ち切ることはなく協議する」として、再稼働を強行しない考えを示している。
 女川原発が「BWRで初めての再稼働」の可能性が指摘される根拠は、決して女川原発が他の原発より安全だとか、住民の理解を得ているから、ということではなく、住民自治・地方自治のあり方の差、端的には知事の姿勢の差だと考える。そうした知事の姿勢を変えるにはどうすればいいのか? そう考え、この間私たちは繰り返し県への申入れを行うとともに、住民説明会で地元住民とともに意見を述べてきた。
 7月15日に、「住民説明会」への質問書と「安全性検討会」について要望書を提出したのに続き、住民説明会終了後の9月10日にも、26団体の連名で以下の3項目にわたって県へ「緊急要望書」(風の会HP参照)を提出した(9月25日回答予定)。
【1】説明会をUPZ(30km圏)の登米市、涌谷町、美里町、及び県都・仙台市、仙南、県北、塩釜の各圏域で追加開催すること。【2】原子力規制庁、内閣府、資源エネルギー庁、東北電力が、説明会の場でキチンと回答しなかった質問については、県から文書回答を求めてそれを公表し、説明会の主催者として責任を果たすこと。【3】説明会の会場で知事が約束したことを守り、避難訓練に参加して避難計画を含む緊急時対応が十分かどうかを判断した上で事前了解への回答を行うこと。

●住民説明会は住民の意見を聞く場ではない!?

なぜこのような要望書を出さざるを得なかったのか? それは、あまりにも住民説明会(での回答)がヒドすぎたからだ。本号別稿の日野さん報告をぜひ読んでほしいが、改めて今回の住民説明会の問題点を挙げる。
①  参加者が少ない~県が定員とした計2000人に対し、実際に集まったのは757人、うち30km圏内は329人で、避難対象者19.9万人に対して約0.17%の低さ。しかもそのうち半分近くが、市町議員など招待者なので、自発的に参加した住民は本当にわずかだ。
②  開催会場の少なさ~今回は女川町・石巻市・東松島市・南三陸町の7カ所だが、「どうして他のUPZでやらないのか?」「県南の我が町でもやってほしい」との声が相次いだ。放射能が30kmで止まるわけもなく、また避難先の住民へも説明することは県の責任ではないのか?
③  運営の問題~原則質問は1人1回、再質問は受け付けない、しかものちほど回答するわけでもなく、アンケートをとるわけでもない。
 以上のことは、「今回の説明会は国の説明を聞く機会を設けるためにやったもの。経産大臣からの再稼働への理解(同意)については、市町村長や議会の意見を尊重して判断する」との県原子力安全対策課課長の回答に端的に表れている。県としては、「住民の意見を聞いて再稼働の是非に反映させる」つもりはさらさらないのだ。しかし、住民はそうは考えない。住民の意見を聞くために説明会を開いたはずだと思うし、それが本来の姿だと思うが、まさに「ガス抜き」でしかないのが宮城県の現実である。
 その上で、「避難計画」の実効性のなさに多くの疑問・不安が噴出したことに、さすがの国・県も対応せざるを得なかった。9月8日、2020年度の国の原子力総合防災訓練の対象が女川原発に決まったことが発表された。原子力災害対策本部のトップである首相や関係閣僚が参加する‘実践的な’訓練になる見通しで、宮城県が例年実施してきた訓練は、20年度は国との合同となるとのことだ。
 一方、東松島市での説明会に参加した村井県知事は、「国、知事、石巻市長、女川町長も住民といっしょに避難訓練を体験してみるよう要望する。いろんな問題点を解決してから再稼働を考えるべし」との住民の質問に対し、「避難訓練に対する不安は納得した。1、2度はかならずどこかで視察することを約束する」と回答せざるを得なかった。避難訓練は11月に行われると想定されるので、少なくともそれに参加してからでなければ、再稼働の「同意」はできないはずだ。
 9月中には、避難計画に実効性がないとして石巻市民が地元同意の差し止めを求めた仮処分の即時抗告審の結論も出される可能性があり、まさに「避難計画の解決」が焦眉の課題となっている。しかし、実際のところ、物理的に無理なものを「訓練」を重ねることによって解決などできないのだ。

●再稼働反対の「多数派」の姿を見せつけよう!

 9月12日に行われた「脱原発首長会議」のオンラインフォーラムで、元南相馬市長の桜井勝延さんは、「避難計画なんて実際には機能しないことは、福島事故の最大の教訓だ。そもそも避難計画をつくらなければならないような発電方法が間違っている」と発言していたが、まさに多くの住民がそう感じていると思う。ならば、今私たちが行うべきは、ストレートに「再稼働はするな!」という思いを知事にぶつけることだ。この9月県議会では、「再稼働に反対する請願」を提出、それを受けて「脱原発をめざす宮城県議の会」が総力で再稼働阻止に立つ決意を固めている。市民と議員が堅くタッグを組んで、村井知事の「同意」へ向けた動きを止めていこう。
 また、9月26日の県民大集会・アピール行進では、コロナ対策の上で、圧倒的な県民の声を仙台の市街地に轟かせよう! 久々の方、初めての人もどしどし参加して、「多数派」である脱原発の姿を見せつけよう!(9.18記 事務局 舘脇)