会報「鳴り砂」2023年11月20日号が発行されました

会報「鳴り砂」2-127号(2023.11.20)
会報「鳴り砂」2-127号別冊(2023.11.20)

(1面論文です)
「ストップ!女川原発再稼働」意見広告(紙面デモ)運動が大成功!
この勢いで、5月再稼働阻止のためにこれまでにない闘いを!

 10月1日、河北新報紙上で、2500を超える名前をバックにした「止めよう!女川原発再稼働」と力強く大書された赤い字を多くの方が目にしたことと思う。6月20日のキックオフ集会以降進めてきた意見広告=紙面デモ運動が、この日ついに結実した。以下、「『ストップ!女川原発再稼働』意見広告の会」の報告アピールから抜粋する。

-わたしたちが取組んで参りました「ストップ!女川原発再稼働」意見広告運動(紙面デモ)は、2023年10月1日の『河北新報』への全面広告掲載として結実いたしました。全国から個人2,285名、団体277ものご賛同をいただき、目標額の400万円をはるかに超え、総計7,047,259円に達しました(10月1日現在)。
 「意見広告」の紙面では、女川原発が、「3.11」の被災原発であるばかりでなく、何度か基準地震動を超える揺れに襲われてきたこと、さまざまなトラブルに見舞われていること、そして仮に再稼働されれば東日本の被災地において「3.11」後最初の、かつ福島原発と同型(BWR)という点でも「3.11」後初めてであること等を訴えました。
 その上で、女川原発が立地している場所が、かつて「鳴浜」(ならはま)というSinging SandないしMusical Sandと呼ばれた詩情豊かで素晴らしい浜だったことを伝え、かなうものなら廃炉により、他にはない静謐で美しい浜を再現したいという想いを込めました。紙面イラストの二人の幼童の心にきざすものは何かをご想像いただけたら、と思います。
 東北電力は掲載日の3日前の9月28日、唐突に再稼働時期を2024年5月頃に延期すると発表しました。わたしたちの最終ゴールは、いうまでもなく延期ではなく中止=廃炉です。今回の「意見広告」は、一つの通過点にすぎません。みなさまとともに最終ゴールに向かって突き進んで参ります- (意見広告運動のサイトは https://stop-onagawa-nuke.jp

 前号「鳴り砂」では、8.11スパート集会、およびクラウドファンディングでの目標達成(167万円)まで報告したが、9月に入ってもさらに賛同は途切れることなく、最終的に700万円の大台を超えた。さらに掲載後も賛同が続いており、この意見広告がいかにインパクトをもって受け止められたのかが示されている。
 今回の意見広告の意義は、なによりも広範な再稼働反対の声を目に見える形で示したことだ。村井宮城県知事は地元合意にあたり「県民の総意」とうそぶいたが、多くの県民があくまで再稼働に異議ありという思いがありつつ、なかなか集会やデモへの参加が難しいという方も少なからずいた。今回の企画はそうした方にも参加できる「紙面デモ」としてアピールできたことにある。さらに、紙面だけでは分らないが、東北はもちろん、北は北海道、南は沖縄まで、文字通り全国から女川原発反対への思いを寄せて頂いたことも大きい。先の報告アピールにもあったように、女川原発はひとり宮城だけの問題ではなく全国的な問題として訴えてきたが、それが予想以上に届いた形となった。これはクラウドファンディングの力は勿論だが、加えて全国の運動のネットワークによるものであり、ご協力頂いた皆様に感謝したい。
 そして、この紙面を見た方からも大きな反響もあった。一例としては河北新報の「声」欄の石巻の方の投稿だ。「『止めよう!女川原発再稼働』。10月1日の本紙に掲載された意見広告に目が留まりました。私はいつも心の中でこんな思いを抱いていたからです。…諸事情はあるでしょうが、もう一度原点に立ち返って、皆で知恵を絞ってみてはいかがでしょうか…」。他にも電話などで「よく掲載してくれた」などの感想も多数寄せられ、さらには「これから入金するので方法を教えてくれ」という方もいた。やはり地元紙の1面カラー広告は多くの方の目に留まる有効なアピールとなった。今回の成功を、実際に再稼働を止めるための力として実現することが私たちには問われている。

●火災防護対策の問題性-10.11東北電力交渉をうけて

 9月28日、突如東北電力樋口社長が記者会見で女川原発再稼働の3ヶ月延長の発表を行った。その理由は、追加で実施している「電線管の火災防護対策工事」の為だとしている。前号『鳴り砂』で報告したように、この工事は7月末に社長が発表したものだが、その詳細についてはほとんど資料が出されていないことに私たちは訝り、「このまま何の説明もなく進めさせることはできない」と、9月11日に「女川原発の再稼働を許さない!みやぎアクション」と「原発問題住民運動宮城県連絡センター」の連名で東北電力に公開質問状を出した。ところが、その回答を1ヶ月もたった10月11日に指定してきたのだが、その理由が上記の「3ヶ月延長」の検討の時間の為だったわけだ。ともあれ、10月11日の東北電力の回答のポイントは以下の通り(抜粋しています)。

Q1 現状は規制基準「不適合」だと思われるが、貴社はどのように評価しているか?
A1 今後この火災防護対策工事が新規制基準に適合していることを、当社の使用前事業者検査、国の使用前確認で確認されることになる。
Q2 規制基準の理解・解釈において、規制庁との間で食い違いは?
A2 女川2号機における電線管の火災防護対策については、これまで電線管は金属材料で覆われており、火災が発生しても、内部のケーブルは直接火の影響は受けない、電線管内のケーブルは難燃ケーブルを使用しており、ケーブルが発火しても自己消火する、同じ部屋のポンプや電源盤から火災が発生しても、感知、消火設備により、火災感知及び消火が可能である、この様な考えから、電線管を耐火材でラッピングする工事などは行っていなかった。以上から、これまでの新規制基準適合性審査会合における理解・解釈について、当社として相違はなかったものと認識。一方、他電力の原発において原子力規制委員会から電線管の火災防護対策に関する指摘があり、昨年10月に女川2号機においても水平展開の必要性を確認し、同年12月に追加で電線管の火災防護対策工事を実施することを決定した。
Q3 追加工事の日程表は? 
A3 電線管の耐火材ラッピングは8月から、耐震強化を踏まえたサポート部材の設置工事は9月から実施している。
Q5 工事箇所と長さは?
A5 工事箇所は主に原子炉建屋。追加工事の対象となる電線管の長さ、総延長は、約300メートル、耐火材ラッピングを行う工事箇所は、42箇所。また、耐火材ラッピングを行う電線菅の本数は52本、耐震補強を行うサポート部材の設置箇所は約150箇所。
Q9 圧力抑制室の溶接で耐震補強工事は?
A9 圧力抑制室の耐震補強工事は、補強工事がほぼ終了し、今後、圧力抑制室内の水張り作業を予定。また、当社の使用前事業者検査として構造検査を行っている。
【確認事項への回答】・国の使用前確認(チーム検査)はいつから? →2022年7月から実施。・使用前事業者検査はいつから? →2022年5月から実施。

 これに対し、翌10月12日、宮城県議会選挙公示日の前日という慌ただしい中、東北電力回答の問題性について記者会見で指摘した。そのポイントは以下の通り(追加の指摘は文責筆者)。
① 東京電力が規制基準「不適合」を認めているのに、東北電力が「不適合」を認めることを避けているのは、県民の納得を得られない。
→東北電力は、東電が「使用前事業者検査」を行った後だから「基準不適合」で、自分たちは「使用前事業者検査前」だから「不適合ではない」としているが、実際に工事が行われていなかったことは同じであり、問題を矮小化している。
② 電線ケーブル(電線管)の安全対策の問題を通じて、原発の安全対策が有名無実になりつつあることが浮かび上がっている。
→重要な火災対策であるにもかかわらず、規制委員会は直接東北電力には「指導」せず、ある意味東北電力が「自主的」に対策をとる形になっている。対策工事に3ヶ月延長するとはいえ、これでは十分な規制とはいえないのではないか。
③ 女川原発の「安全性検討会」(仮称)の設置が重要であることを、改めて訴える。
→岸田政権の「原発回帰」政策の流れのなかで、今回のように原子力規制委員会の審査に疑問と不安が強まっているなか、実際に被害にあうかもしれない当該県において、少なくとも再稼働前に再度専門家による安全性の再検討が必要であることが改めて明らかになった。東北電力は2022年5月から使用前事業者検査を行い、その後追いで国の使用前確認が2022年7月から行われているとしているが、その中身については全く明らかではない。少なくとも、設工認で変更があった重要な工事については、第三者の目が必要ではないか。
 意見広告に示されたように、多くの県民・国民は女川原発の再稼働に大きな不安と疑問をもっている。東北電力はそれに真摯に応える必要がある。

 10月2日に控訴審が開始された女川原発再稼働差し止め訴訟と両輪で、この冬から来春にかけて、私たちは来年5月再稼働阻止に向け、これまでにないうねりを作りだして行かなければならない。紙面デモから地上デモに! 3月23日3000人集会の実現へ、ともに闘おう!(事務局 舘脇)