「第166回女川原子力発電所環境調査測定技術会」傍聴記 —総合的な安全性問題が議論できない技術会の限界 —

「第166回女川原子力発電所環境調査測定技術会」傍聴記—総合的な安全性問題が議論できない技術会の限界 —

2023年11月7日に「第166回女川原子力発電所環境調査測定技術会」を傍聴してきました。簡単に気になった所だけを報告します。
傍聴は、私含め2名+電力関係2名で、マスコミは2名でした。
委員は24名中19名の出席でした(たぶん)。学識経験者は、橋本さん以外6名出席でした。

○千葉章会長(宮城県復興・危機管理部長)が議長で、いつもの通り「放射能調査結果」と「温排水調査結果」が報告され、評価し了承された。
・当日の資料は、後日宮城県のHPへ掲載されるはず。
協議会・技術会・監視検討会 会議資料・議事録 – 宮城県公式ウェブサイト (pref.miyagi.jp)

●(参考資料-2) モニタリングステーション荻浜と江島局における指標線量率設定値の超過について
20231107_MS荻浜江島線量率設定値超過
 荻浜は2023年9月6日、江島は、9月27日に、指標線量率が上昇した。荻浜については、「過去27日ほとんど線量率が上昇しないデータから算出した偏回帰係数を用いて計算した為」でした。(理由は、難しくて理解不能でした。)江島については、大陸由来の天然核種を多く含む気団が到来した際、降雨により「面線源状態」となった為との事。これに関して、有働委員から、大陸由来の理由がよく理解できない旨の質問があり、県の方が説明していたが、いまいち納得していない様子だった。(私も、説明不足のように感じた。)

●(参考資料-3) モニタリングステーション前網局におけるダストサンプラー流量計異常について
20231107_参考資料3_MS前網流量計異常
 2023年9月5日に流量指示誤差が基準値を逸脱した。2023年7月から9月まで逸脱したので、参考値扱いとしたい。原因は、経年劣化とのこと。岩崎(智)委員からの、どういう壊れ方をしたのか、との質問に、東北電力の方は、うまく返答していないようだった。岩崎委員は、一年で壊れるのは困る、と苦言を呈していた。

●(参考資料-4) 令和5年度第1四半期のモニタリングポスト測定結果における「過去の測定値範囲」の誤りについて
20231107_参考資料4_MP過去の測定範囲誤り
 MP-5「令和3年4月~令和5年3月までの測定値の範囲」を、過去2年度とすべき所を1年度としたため、誤った。チェックシート項目を増やして対応するとのこと。(又、初歩的なチェックミスでした。)

●(資料-4)「女川原子力発電所の状況について」報告あり。
20231107_資料4_女川原発の状況(別紙1.2.3含む)
20231107_別紙1_廃止措置工程
  P2(3) 女川原発2号機における安全対策工事完了時期の見直しについて
20231107_別紙2_安全対策工事時期直し
  前回の技術会で無視された「電線管の火災防護対策工事」の内容が報告され(P5)、耐火材ラッピング工事の写真も報告された。それに伴い、工事完了が2024年2月となり、2号機再稼働は2024年5月頃となった。(p6)(このように、再稼働延期にもなるような事象について、この「技術会」では質問・意見はなかった。「電線管の火災防護対策」について、どこにどんな問題があり、どう対処したのか、についての技術的な問題意識は、委員にないのだろうか? 安全対策を総合的に考える別組織がやはり必要ですね。)
  P3 (4)女川原発2号機における特定重大事故等対処施設の設置に係る原子炉設置変更許可について
 いわゆるテロ対策施設であるが、2023年10月4日に許可を受けた。(別紙3)
20231107_別紙3_重大事故対処施設概要
主な機能は、①減圧操作 ②冷却 ③原子炉格納容器加圧破損防止であるが、問題の性質上、詳しい内容は公表できないとのこと。岩崎(智)委員も質問に苦慮していたが、フィルタベントを新たに設置し、排気筒は使わない、という回答を得ていたようだ。(議事録で早く正確に確認したい。)住民が、フィルタベントを使用したかどうかが分かるかどうかは、なかなか難しそうである。

◎今回も、放射能や温排水調査については議論していたが、こと原発の“総合的な安全性問題”になると、途端に議論がなくなる。この“会議の限界”がはっきりしてきたと思いました。
○次回は、2024年2月5日(月)午後 仙台で開催とのこと。
(2023.11.8.記) 兵藤則雄