会報「鳴り砂」2023年9月20日号が発行されました

会報「鳴り砂」2023.9.20号
会報「鳴り砂」別冊2023.9.20号

(一面論文です)
紙面デモを成功させ、女川再稼働ストップのうねりを!
汚染水の海洋投棄に抗議! これ以上の放射能の拡散をやめろ!

8月24日、ALPS処理汚染水の海洋放出が開始された。私たちは「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」との約束を破るこの放射能海洋投棄に抗議する。タンクには780兆ベクレルのトリチウムが含まれており、これを30年にわたり放出する予定だ。現在、タンクに貯められている水の約7割については、トリチウム以外の放射性物質も基準を超えて残留している。海洋放出以外にも、「大型タンク貯蔵案」や「モルタル固化案」など代替案があるにもかかわらず、十分に検討されたとは言えない。これ以上の放射能の拡散を今すぐ止めよう。

 新聞に意見広告を掲載しよう(紙面デモ)と発表したのが今年3月の集会で、それから半年、いよいよ大詰めだ。9月末~10月はじめに予定されている掲載日まであとわずかだ。県内はもとより全国からこの運動への参加の多くの声が届いており、目標の400万円を大きく突破している。
 10月には、2日に女川原発差し止め裁判控訴審第1回口頭弁論、4日に大崎住民訴訟仙台地裁判決、そして宮城県議選が13日告示・22日投票と重要日程を控え、そして11月には女川原発2号機の安全対策工事の完了が予定されている。そうした動きにインパクトを与えるような意見広告を実現し、それを活用して広く世論に訴えていこう。
 また、安全対策工事では新たに「電線管(ケーブル)の火災防護対策」が浮上している。他にも様々な安全対策上の問題があり、11月工事完了が見通せなくなっている。この問題を曖昧にしたまま、なし崩し的に再稼働させることがないよう、東北電力、および宮城県に対して追及していかなければならない。
 
○意見広告運動を文字通り「加速」させた8.11スパート集会
 8月11日、エルパーク仙台・セミナーホールにて、「スパート集会」が意見広告運動の会の主催で開催され、zoom合わせて約230人が参加した。
 集会ではまず主催者あいさつとして、半田正樹さんが発言した。「400(万円)と1400(億円)という2つの数字に注目したい」と切り出した半田さん。前者はわれわれの目標金額だが、後者は、東北電力が発表した2024年3月期最終予想損益の黒字額とのことで、「東北電力と違って、丁寧に説明してまわった結果の、多くの人の思いのこもった、濃密な400という数字と確信しています」と語る。
「その一方で、ヒロシマ・ナガサキが核兵器の恐怖を訴えてきたように、フクシマがこの12年、原発の残酷さ、冷酷さを暴いてきた。今日の集会で、原発の非人間性・反自然性など原発がもっている問題を、女川原発という実物をもって明らかにしていこう」と結んだ。

 続いて、メイン講師の小出裕章さんの講演だ。タイトルは「女川原発再稼働の根拠は全くない!」。タイトルだけでも圧倒されるが、その中身も“小出節”満載で、参加者は聞き逃すことがないようにとじっくり耳を傾けた。
 「なんとしても女川原発を止めたいとの一心で来ました」と切り出した小出さん。「原発に夢をかける」として東北大学に進んだが、原発の抱える様々な矛盾を知るようになり、180℃転換して原発を止めることを選んだという。まず、先日判決が下された女川原発差止訴訟について、「事故の発生について具体的な立証を住民に求めるなんて、どういう頭をしていれば言えるのか?」と喝破。そして避難計画の作成を国が自治体に押しつける矛盾を指摘しつつも、しかし「避難計画はふるさと喪失計画」であり、それは福島の事故で実際に起こった。長く生きていたその場所をまるごと失うことになった、と指摘する。
 また、「女川原発は被災原発であり、多くの傷を負っている」としつつ、「そもそも全ての原発は本質的に膨大な危険を抱えています。広島原爆で燃えたウランから生成した核分裂生成物が800gに対し、原発が1年運転して発生する核分裂生成物はなんと1トンと桁が違う」「ウラン資源は実は貧弱で、化石燃料に比べて数10分の1しかない。そこでプルトニウムが必要になるのだが、『もんじゅ』は破綻し1兆円をドブに捨てた。また六ヶ所再処理工場は1997年に開始の予定だったのに、25年たってもこれから動くかどうかも分らない。ここにはすでに2兆円投入し、今後10兆円かかるとされている。原子力は意味のあるエネルギー源にならない。さらに死の灰を生み出し続け、原子力はその根本で破綻している」と、原発の本質的な危険性・問題性を改めて指摘。
さらに小出さんは、福島原発事故について、「フクシマ事故の一番の犯罪者は国であり、改めて、原発は事故があれば破局的な被害が出るので、一刻も早く全廃すべきだという教訓を私たちは得た」が、国などは「どんなに悲惨な被害が出ても、誰も責任を取らずに済むし、会社も倒産しない」という全く違う教訓を得た、という。「マスコミと教育を支配し、フクシマ事故をなかったことにしようとする。そして誰も責任をとらない」、このような原発を巡る現状は、戦争と似ているのではないか。「原子力ムラ」ではなく、大変な犯罪者集団「原子力マフィア」あるいは「原子力ギャング」と呼ぶ方がふさわしい。
そして最後に、女川について。かつてきれいな「鳴る浜」を抱えた町は、100億円で漁業放棄して原発と共存してきたが、その後発展していないにもかかわらず、原発マネーから抜け出すことは困難だ。「何をすべきかと言えば、ふるさとを失う危険と引き換えによるカネに頼ることなく、豊かな海とともに復興するような町、それを私は女川という町で作ってほしいと思います。そのためには、女川原発の再稼働なんてものは、許してはいけないことだと思っています」と結んだ。
質疑応答では、「トリチウムの除去方法はあるのでしょうか?」との問いに、「トリチウム水も普通の水も、化学的には同じ水だけれども、水素とトリチウムは重さが3倍違うので、原理的には可能です。しかし、福島原発のタンクに溜まる汚染水130万トンの中に、トリチウム水はわずか15gしかない。それでも国の基準を超える放射能になるのですが、130万トンから15gを取り出そうとすれば膨大なエネルギーが必要となり、実際にはできない」と明解に回答した。

 そのあと多々良さんから、改めて意見広告運動の意義と、現在の到達点と課題について、発言があった。「8月9日現在で385万円が集まっていますが、特にクラウドファンデング、および全体の人数をもっと増やしていきたい。そのために、武藤類子さん、樋口英明さん、さらに上岡直見さんのビデオメッセージを配信します。意見広告のデザインは、みやぎの子どもたちの未来を食い潰すことなく、豊かな自然を残していくというメッセージを込めたものにしたい」。
 この集会のあと、とくにクラウドファンデングの伸びが目覚ましく、40日で50万円しか集まっていなかったのが、残り20日で100万円集まり、目標の150万円を上回る167万円を達成した。郵便振替や現金など、その他からもさらに集まり、まさにこの8.11の集会の目的が大いに達成された。
(小出さんの講演、および資料は下記で見ることができます。)
https://youtu.be/svk3GSuVQ44 
https://miyagi-kazenokai.com/wp-content/uploads/2023/08/230811koidesiryou.pdf

○女川原発2号機に新たな問題~ケーブル火災防護対策~やはり安全性検討会の設置を!

 7月31日、東北電力社長は記者会見で「…他電力の原子力発電所で、国の指摘を受け実施することとなった『電線管の火災防護対策』を踏まえ、女川2号機でも…追加の火災防護対策工事の工程について、改めて精査している状況にあります。…安全対策工事については、…11月の工事完了に向けて取り組んでまいります」と突然発表し、記者の質問に対し「工程としては厳しい状況にある。(完了時期が)遅れるかどうかは申し上げられない」と答えた。
 11月の工事完了が危ぶまれるという大きな工事にもかかわらず、東北電力はその後も何の資料も出さなかったが、8月31日の第165回女川原発環境保全監視協議会での資料などで、初めて2ページの簡単な資料を公表。しかし、ここでも内容は判然としない。
 この電線管(ケーブル)の火災対策が最近問題になったのは、2021年に関西電力美浜3号機で、認可された工事計画の通りに施行していないことが発覚したことだ。その後、関電と九州電力の合計11基に、認可を受けた工事計画と整合していない箇所があることが判明した。
そして「その情報が関西電力から提供があり、2022年12月に追加工事を実施することを決定したが、追加工事については原子力規制庁からの直接の要請はなかった」と、共産党県議団などの質問に東北電力が回答している。
 適合性審査に「合格」し、宮城県安全性検討会での議論が終了し、宮城県知事が「地元合意」を出したあとも、今回のケーブルの火災防護対策工事や、先のサプレッションチェンバの耐震工事、さらには水素爆発対策の変更(ベント使用)など、様々な工事や対策の追加があるにもかかわらず、地元宮城県としては、専門家による検証の場が全くできていない。果たしてこのまま2号機の再稼働に突っ走っていいのか、安全性に問題がないのかについて、協議会などでの「おまけ」の議論ではなく、それをメインテーマにした、専門家による議論・検討が求められている。
 そもそも「被災原発」である女川原発を「再稼働させる根拠は全くない」(小出さん)。意見広告の成功を突破口に、県内はもとより、全国の仲間と手を結び、勝負の秋・冬の運動に進んでいこう。
(事務局 舘脇)