9月15日宮城県内38団体が共同で、原子力規制委員会に申入れ

9月15日、「みやぎアクション」など宮城県内38団体が共同で、原子力規制委員会へ申し入れをしました。
以下、申入れ全文と、添付資料です。
東北電力女川原発2号機の原子炉施設設置変更許可の適合性審査のやり直しを求めます
< 添付資料 : 女川原発1・2「硫化水素問題」>
                             2021年9月15日
原子力規制委員会委員長  更田豊志 殿

東北電力女川原発2号機の原子炉施設設置変更許可の適合性審査のやり直しを求めます

    共同申入38団体は末尾に列記

7月12日、東北電力女川原子力発電所2号機の制御建屋内において、硫化水素を吸い込んだことにより、協力企業作業員に7名の体調不良者が発生するという重大事故が起きました。
「…本事象は、1号機廃棄物処理建屋において、洗濯廃液を貯留するタンク内の硫化水素の発生を抑制するため、空気注入による攪拌作業を行っていたところ、硫化水素がタンクに接続される配管を通じて2号機の制御建屋内に流れ込み、当該作業員が吸い込んだことによるものと推定しておりますが、詳細については現在調査中です。なお、本事象は発電所の安全性に影響を与えるものではありません。今後、原因を究明のうえ、再発防止に努めてまいります」(7.13東北電力プレスリリースより)。
その後、8月末現在に至るまで、東北電力からこの事故の原因と再発防止策は発表されていません。
原子炉設置変更許可が出され再稼働へ向けて作業中の2号機と、廃止措置計画認可が出され廃炉作業中の1号機が繋がっていることによると見られる今回の人身事故に、地元住民の中には、規制委の審査そのものへの信頼が揺らぐとの声も上がっています。
私たちは、この事故に表れた問題は、基準への適合性に関わる重大な問題であり、審査をやり直すべきと考えます。以下、その理由を述べます。

1、1・2号機間の「ランドリドレン処理系を共用」しているという構造的欠陥が事故の根本原因であること
今回の事故は、新規制基準による適合性審査で合格とされた2号機の最重要施設の一つである「制御建屋」が、廃炉が決まった1号機の「廃棄物処理建屋」と直接「配管」により結ばれていて、いわば号機をまたいだ『毒ガス通気経路』の存在が明らかになったというもので、原子炉施設の安全上も、さらにはテロ対策上も、重大な問題です。
2号機増設に係る『女川原子力発電所原子炉設置変更許可申請書』には、1・2号機間で「ランドリドレン処理系関連設備」を共用する旨の記載があります(本文:「ト(ロ)(1)c、(ハ)(1)a」、第21図、第22図、添付書類8:「10.3.4(3)、10.4.4(1)」、第10.3-1表、第10.4-1表、第10.3-1図、第10.4-1図、等)。すなわち、2号機制御建屋からのランドリドレン「排水配管」が、1号機廃棄物処理建屋「地下1階」の洗濯廃液貯留タンクに自然流下するよう2号機建設時に敷設されたため、7月12日の事故では、同タンク内の硫化水素発生(=嫌気状態を好む硫酸還元菌の働き)を抑えるため「空気注入による攪拌作業」を行なった際、同タンク上部の気相部に蓄積・液相部に溶け込んでいた硫化水素が、液相部に注入された大量の空気により押し出され、排水配管を逆流し、2号機制御建屋の排水口から流出したと推察されています(8.12東北電力プレスリリースの添付図参照)。つまり、この「共用」こそが今回の労災事故の根本原因で、1号機廃棄物処理建屋から2号機制御建屋に通じる『毒ガス経路』が放置されていることが明らかになったのです。
このことは、設置許可基準規則12条7項「重要安全施設以外の安全施設について、二以上の発電用原子炉施設において共用し、又は相互に接続する場合には、発電用原子炉施設の安全性が損なわれないものであること」に適合しない状態にあることは明らかで、そのための適合性審査が改めて必要だと考えます。
なお、東北電力は、この労災事故の対策として、労基署からの指摘等に藉口して、空気注入時の作業手順の問題(マニュアルの改訂や漠然とした「組織風土」)などでお茶を濁そうとする可能性がありますが、「ランドリドレン処理系」共用の廃止と、それに伴う2号機ランドリドレン処理系の新設(廃棄物処理系全体の設計・諸設備の配置見直し)以外にないことは明らかです。

2、『有毒ガス防護に係る影響評価ガイド』の硫化水素欠落と、同ガイドを無視した適合性審査は問題
貴委員会の女川原発2号機の審査書(2020.2.26)における全13の参照ガイドリスト<p.2-3>には、「原子炉制御室及び緊急時制御室の運転員については、対象発生源の有無に関わらず、有毒ガスに対する防護を求める」ことを定めた『有毒ガス防護に係る影響評価ガイド』(H29.4制定)が含まれておらず、このことは審査における重大な欠陥です。また、東北電力も、同ガイド制定後の敷地内外の貯蔵・輸送化学物質についての調査で、硫化水素は取り上げていません(2018.5.10「女川2・有毒ガス防護について」p.6-8,10-12)。これは、同ガイドが、そもそも生物学的に施設内で発生することが十分に予想される「硫化水素」を対象としていない(欠落している)ためと思われます。
今回、実際に硫化水素により7名もの作業員が被害をうける(濃度が高かったら、死亡もあり得た)という重大事故が起きたことに鑑みれば、同ガイド自体の内容の見直しが必要です。

以上の理由により、貴委員会が、設置許可基準規則12条7項および(見直し後の)同ガイドに基づき、東北電力女川原発2号機の適合性審査をやり直すことを求めます。

以上

共同提出団体(38団体)

・女川原発の再稼働を許さない!みやぎアクション(代表 鈴木宏一)
・女川原発の避難計画を考える会(代表・原伸雄)
・原発の危険から住民の生命と財産を守る会(事務局長 髙野博)
・女川原発の再稼動に反対する会(涌谷)(代表 櫻井伸孝)
・さようなら原発いしのまき実行委員会(実行委員長 佐藤清吾)
・止めようプルサーマル!止めよう核燃料サイクル!女川原発地元連絡会(代表 近藤武文)
・放射能汚染廃棄物の焼却処分に反対する石巻地域の会(事務局長 日野正美)
・電通労組宮城支部(執行委員長 畑山学)
・女川原発UPZ住民の会(代表 勝又治子)
・女川原発再稼働ストップの会・美里(代表 勝又治子)
・女川から未来を考える会(代表 阿部美紀子)
・原発いらない十三浜の会(代表 佐藤清吾)
・宮城全労協(議長 大内忠雄)
・全国一般全国協議会宮城合同労働組合(執行委員長 星野憲太郎)
・放射能から子どもたちを守る栗原ネットワーク (代表 鈴木健三)
・こどもの健康を考える会・いしのまき(共同代表:橋本和良、齋藤みや子)
・子どもたちを放射能汚染から守り、原発から自然エネルギーへの転換をめざす女性ネットワークみやぎ(共同代表 小澤かつ 児玉芳江 佐藤郁子 山田いずみ)
・女川原発の再稼働に反対する東松島市民の会 (事務局長 石垣好春)
・大崎耕土を放射能汚染させない連絡会(会長 若井勉)
・船形山のブナを守る会(代表世話人 小関俊夫)
・放射能から岩沼を守る会 (代表 小川栄造)
・脱原発仙台市民会議(共同代表 篠原弘典 水戸部秀利)
・みやぎ金曜デモの会(代表 西 新太郎)
・みやぎ脱原発・風の会(事務局長 舘脇章宏)
・生活協同組合あいコープみやぎ(理事長 高橋 千佳)
・女川原発の再稼働を許さない石巻地域の会(代表 松浦健太郎)
・新日本婦人の会宮城県本部(会長 佐々木ゆきえ)
・新日本婦人の会石巻支部(支部長 今野ツヤ子)
・原発いらない・宮城ツユクサの会(代表 松原くに子)
・カトリック正義と平和仙台協議会(代表 木元範子)
・シニア・ワーカーズコープ仙台(代表 森田眞理)
・放射能から子どもを守る ふるかわ連絡会(会長 鎌内あつ子)
・宮城県護憲平和センター(理事長 砂金直美)
・石巻9条の会(事務局長 高橋昭義)
・全日本年金者組合石巻支部(事務局長 佐々木哲男)
・石巻民主商工会(会長 菅原正明)
・石巻地方労連(議長 色川健一)
・宮城県母親大会連絡会(会長 佐藤郁子)